古代第六文明『超天意』:超成者
遥かな昔。
聖霊の遣わした聖威が焼き払い、荒れ果てた大地がどこまでも続いていた時代。
北東に在る大陸に『環』と言う国が興った。
環はやがて、この巨大な星のほぼ全ての国をその手に収め、唯一の巨大な帝国を築くに至った。
人類はまたその栄華を取り戻した。
途切れることの無い平和と、遺された古代の知識、そして新たに生み出された技術。
地には数多の街が連なり、海には無数の船が往き来し、空には眩い人の灯火が闇を照らしていた。
時は重なり、環帝国第四百六代皇帝【譜岨】の世に、ある秘術が生み出された。
煉丹術より成された不老長寿、更には不死へと手を伸ばす中で灯った野心の火種。
―― 聖霊を弑し、人こそが世の支配者たらん。
それは繰り返されてきた人の愚行、そして大罪。
歴史は記し、聖典は戒め、奇跡は預言する。
だが、火種は燃え上がり、炎の嵐は猛り狂った。
聖霊から隠れ、異界まで赴き進められた研究は、凡そ百年の時を懸けて結実した。
人類はまた、罪を手に入れた。
聖寿を超えた不老不死の身体。
人の領域を超えた知能と莫大なる魔力。
被造物たる器を超えて宿した異界の権能。
その存在は『超成者』と名付けられた。
皇帝、皇族、そして力有る市民は挙って超成者へと成った。
万を超え、億を超えた超成者達が大地に満ちた。
病は消え、老いも死も無くなった。
身体は星を出て、宙を翔ける事さえ簡単になった。
戯れに振るった拳は、小さな星さえ砕くことができた。
―― 時は成った。
―― 人は天意を超えた。
―― ならば今こそ。
無数の金属の瞳が天を見上げ、そこに坐す聖霊達へと目を凝らした。
そしてまた、人は大罪を犯したのだった。




