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はじめてのクエスト①

お待たせしました。この後も何話か更新する予定です。

「クエストを受注しました。リフライン草原にて、タウロス五体の討伐、薬草の採取、魔石の獲得が達成条件です。健闘をお祈りします」


 チュートリアルも兼ねているこのクエストを完了しなければ他の依頼を受けることができないので、今日はこれをクリアする所から始める。


 まずはリフライン草原に向かう。冒険者ギルドとは反対側なので、噴水広場の方向に向かって一直線に進めばいい。


 冒険者ギルドに入った時を説明すると、冒険者としての登録をして、ギルドカードや初心者用のポーションなどを受け取ってからクエストを受注する、という流れだった。


 あったのはクエストに対する説明くらいで、武器の使い方なんかは自分で調べろとのこと。


 NPCにゲームの操作方法を喋らせることができないから、そのようなスタンスになったのかもしれない。


 ともかく、目的地のリフライン草原についたので、まずは薬草を採取しようと草むらに近寄る。


「……なんだ、NPCか」


「あ、どうも。貴方も薬草採取に?」


 プレイヤーらしきボロ服の人がこちらを見てなにか呟いていたので、話しかけてみる。


「あー、そうだ。こう言って伝わるかは分かんねぇけど、チュートリアルってやつだ」


「そうなんですね〜。僕も同じくです」


「……プレイヤーだったのか。装備がやべぇから、てっきりNPCだと思ってた」


 そう言われて思い出したが、そういえば装備がとんでもない事になっているんだった。今度からプレイヤーが集まるところではボロ服に着替えておこうかな……。


「あー、えっと、これは道中で発生したクエストの報酬で貰ったやつですね。女性向け装備の性能を確かめたいから〜って言われて、言われるがままでした……」


「なるほど、そういうクエストもあるんだな……。このゲームは性別偽れねぇから、結果的に男が多いはず。ってことは少ない女性プレイヤーへの配慮ってやつか……?」


「ん? あ、いや、すみません。あの、ぼく男です……」


 すっごく言いづらいけど。言いづらいけども。これは最初に言わなかった僕のせいでもあるので、相手が悪いわけではない。


「……あっ、マジ? え、えぇ!? が、ガチかよ……」


「ガチです……。僕もなんでこんなことになってんのかよく分かんないんですけどね。これギルドカードです……」


 ギルドカードには性別などの情報が載っているので、証明としてそれを見せる。


「すげぇな。スキャンバグか? いや、あれがバグるのはそうありえないから、元々の顔と、かかった補正と、髪型とかでそう見えちまうんだろうな……。あと体格や骨格もあるか。まぁ、強く生きろよ」


「がんばります……」


 かなり恥ずかしいので俯きながら薬草を黙々と採取する。


「いやー、てっきりボクっ娘なのかと思ったんだがな。声にも違和感ねぇしよ。


 まぁ、あれだ。男の娘プレイヤーとして活動すれば、いくらかはゲームもやりやすくなるかもな。ほら、このゲームはアレがあるだろ」


「あー、あのブログみたいなやつ」


 この人の指すアレとは、このゲーム内のSNSのようなもののことだ。サービス名はちょっと覚えてないけど、まぁなんかゲームをプレイしている光景を載っけたりして、他のプレイヤー達や、まだプレイしていない人達に見てもらう、ってのが趣旨だったと思う。


 きっと、今みたいに知らず知らずのうちに誤解を生んでいたりだとか、例えば女だと勘違いされてナンパされたりだとか、そういうのを防げるからと提案してくれているのだと思う。女性の少ないゲーム世界でのナンパ被害は、近年ではよく聞く話だった。


「まぁ、あまりにも生き辛いことになったら……。考えておきます」


「おう。その時は言ってくれ、他の奴らよりかは詳しい自信があるから。シンラだ、よろしくな」


「あ、ユキです。よろしくお願いします」


 今みたいにお互いに名乗って挨拶すると、フレンドに登録される。自動承認にしたり、受け付けない設定にしたりと色々と変更できるはずなので、後で手動許可式に変えておこうと思う。


「薬草採取ってことは討伐もか? 実は俺もなんだが、この場だけでもパーティー組まねぇか? その方が楽だと思うんだ」


「あ、良いんですか? とは言っても僕サモナーなので、あまりお役に立てないかもしれないですけど」


「おー。ならスキル構成を聞いてもいいか? あ、すまん。人に聞く時は先に自分から言うのがマナーだったな。俺は鍛冶師で、武器は両手剣。ステータスが筋力値多め、戦闘関連のスキルはそんなに充実してねぇが、前衛としてはそこそこ役に立てるはずだ」


 スキル、構成……?


「あっ……」


 ゲーム開始したらクエストよりも前にしなければならない、ステータスやスキルへのポイントの割り振りをすっかり忘れていた。


「……どうした? まさかおまっ、割り振ってねぇのか!」


「……お察しの通りですっ。すみません、今ちょっと割り振ってきますね……! その、装備クエストのインパクトが強すぎてすっかり失念してました……」


「そりゃまぁ、開始早々にそんな特殊なクエスト踏んだらうっかりもするよなぁ。


 分かった、近づいてきたモンスターはある程度は俺が相手するから、今必要なのだけ割り振っといてくれ。あー、先にパーティーだけ開いてもいいか?」


「あ、はい……! わざわざすみませんっ」


 シンラさんから届いたパーティーの申請を許可し、ステータスを開く。


 本当にうっかりしていた。それだけ装備の出来事が大きかったというか……。


 というかナビゲート妖精のルフィーナをさっきから全然見かけないんだけど? ナビゲーターならクエストを受ける前に指摘してくれても良かったのに……。


 いや、これは忘れていた自分が悪いので、ルフィーナを責めるのは違うな。よし、気を取り直してステータスを割り振ろう。

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