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リンベルくんの神官修行

「(神官見習いが暴力的だなんて発覚すれば、せっかく与えられた加護が弱まりますから、あの状況は実に危険ですね。まぁ、彼らには久しぶりにPKとして楽しませて頂きましたが)」


 正当性が認められる場合には加護が弱まることもないらしいが、そもそもモンスターの討伐が推奨されていることの影響か、宗教的にも殺生が完全には禁止されていない。そのため、実際に加護が弱まるかどうかも怪しいところだ。


「(まぁそれでも発覚すればそれなりの処罰を受けることになるとは思いますが……。いずれリスポーンするとはいえ殺したらしばらくは死体が残っちゃいますからねぇ)」


 要は、殺す瞬間の現場とその死体として残る間だけ目撃されなければいいのだ。先程はそれが難しかったので、プレイヤー達を殺さずに無力化した訳だが。


「あぁ、はい。神官見習いのリンベルです。いつもご苦労さまです」


 鎧を着た神官騎士と呼ばれる人達が教会の警備を担当していて、中に入るには教会の者としての証明証を提示しなければならない。


 それを提出し、許可を得て教会の中に入る。


「まずはお布施でもしておきますかね」


 10万ものGを投入し、かなりグレードの高い神の加護を得ることができた。


「近接戦闘の威力上昇と筋力値の上昇は嬉しいですね。回復量増加もありがたいです」


 神にお礼を告げて、次は併設されている孤児院へと向かいます。


「こんにちは、シスター。子供たちの様子はいかがですか?」


 孤児院を担当しているシスターに声をかける。ここにいる人達はリンベルにとってベータテスト時代からの顔見知りだが、未だに名前の分からない人もいる。


「あら、お噂はかねがねお聞きしておりました。貴方がリンベルさんですね?」


「初対面でしたか、申し訳ありません。えぇ、そうです」


「子供たちが会いたいと懇願しておりました。どうぞ、こちらへ」


 その言葉を聞いてリンベルは嬉しく思いながら、子供たちと触れ合うことにした。


 ***


『神は世界を創りたもうた』


『世には悪魔が蔓延っていた』


『天使は最強の兵器である。安寧を守るべく、神が創りたもうた』


『原初の悪魔から生まれし悪魔の王子は、己の運命に抗うべく悪魔を散らした』


『悪魔に与える慈悲はない。天使は悪魔を散らした』


『ダンタリオンは、今も孤独と己の運命に苦しんでいる』


 リンベルは聖典を童話チックにして話そうと思っていたのだが、なにせ子供向けでもなければ、矛盾点が少ないように大雑把に記された内容なので、もう少しリメイクしてからにしようと決めた。


 リンベルは子供たちと遊びながら、聖典をどうリメイクしようか考えてみる。


「(悪魔を倒すために天使が創り出されたって流れまでは、大丈夫そうですね。ただ、ダンタリオンって誰なんですかね?流れ的に悪魔王子でしょうか……。じゃあ原初の悪魔とは一体……?)」


 うんうんと唸りながら、お話を考えるリンベルであった。

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