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猛牛トレイン

本日2話目です。キリがいいので従来より短め

 コツミール湿原はリフライン草原の更に奥に位置している。リフライン草原には例のウシが彷徨いているので、全速力で駆け抜けよう。


「シンラさん待ってぇ……」


「……俺もそんなに敏速値に振ってるわけじゃないんだが、にしたって遅くないか? タウロスにやられるぞ」


「やっぱり敏速値に振るから、シンラさんちょっとの間お願い! 〈ホーリー ライトニング〉ッ!」


「分かった! つーかなんだその魔法!」


 ホーリーライトニングとは、直訳すると聖なる稲妻。聖属性と雷属性の性質を併せ持つ、光魔法の一つだ。消費MPが高い分、威力も範囲も広いのが特徴の魔法である。


 呼吸を整えながら、敏速値に振っていく。


「シンラさんの敏速値、どれくらい、なの……!」


「10はある! あと俺、元々陸上やってた!」


 なるほど。確かに現実のステータスが一切影響していないとは限らない。装備で低下している数値も考慮して、20は振っておこう。パラメータを確定し、素早く戦闘に戻る。


「〈ライト アロー〉ッ」


 シンラさん1人でウシ三体はあまりにも厳しい。そんな状況に合わせてしまったのは自分なので、出し惜しみせず、的確にウシを倒していく。


「助かった! さ、コイツらがリポップする前にはやく行くぞ!」


「ほんとにすみません! 追ってくるウシは任せてください!」


 やはり敏速値に大きく振った甲斐あってか、シンラさんと同じペースで走ることができた。


 シンラさんはよく疲れずに走れるな……。流石は元陸上部。


「ユキ、焦ってないか? 大丈夫だぞ、これはゲームだから。落ち着いて、ゲームを楽しむことに集中すればいい。あと敬語に戻ってるぞ」


「あう……」


 確かに焦っていたし、負い目も感じていた。そんな言葉をくれるシンラさんは、とても優しい。


 後ろを追ってくるウシたちは魔法で倒しながら、コツミール湿原を目指して走っていく。


「これ、今思ったけどトレインってやつだな!」


「せっかく素材預けたのになぁ。〈アクア バースト〉」


「役に立てなくてすまんな、こればっかりは剣じゃどうにもできねぇ」


 今の状況も、コツミール湿原に目的がある故に、結果的にトレインになってしまっているのであって、倒さなければ無数のウシによる突進攻撃であっという間に死んでしまう。なのでシンラさんが負い目を感じる必要はないのだが。


「もうちょっと、かな……」


「あぁ、もうすぐだ。頑張れ」


 コツミール湿原への入口が、見えてきた。

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