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はいてる&はいてない

「おおおおっ、パンツが! 見えそうで見えなかったああ! もっと! もっとジャンプの回数を増やしてくだされ!」

「動体視力検査の時間だああああああああああああああああああああああああああ!」

「アンコール! アンコール!」


「なっ!?」


 観客からの反応に気づいて、俺は慌ててスカートを手で抑えた。

 なんも考えずにジャンプしたけど、スカートってこんなことをいちいち考えねばならんのか!   ちょっと、女の子の苦労がわかった気がする!


「ふん、やはり男の娘戦士とやらは、破廉恥極まりないな!」


 そして、乙女からも蔑みの視線を浴びせられてしまう。

 せっかく加勢に来てやったのに!


「も、もうっ! しょうがないでしょ!?」


 なんでこんなスカートを採用したんだ、この団体は!

 男のときはトランクを見られても恥ずかしい気持ちなんてないが(そもそも公衆の面前にそんなものを晒す機会などないというか、そんなことしたら逮捕される可能性すらある)、この姿だとすごく恥ずかしく感じてしまう。体温が上がって、顔が赤くなるのがわかる。


「それに比べて、私の剣道着型パワードスーツは完璧だ。スカートなんぞより、袴は合理的だからな!」


 なぜか誇らしげな乙女。

 というか、こいつはただの剣道着フェチなだけだと思うが。


「えっ、でも、袴をつけるときって、下着をはかないんじゃなかったっけ……?」


 小学生低学年の頃、乙女から話された内容を思い出す。

 「はかまのしたには、ぱんつをはかないんだぞっ!」と、なぜか自信満々で言ってたじゃないか。


「は、は、はっ……はいておるわっ!」


 今度は、乙女が顔を赤くしながら、激昂する。


 その否定の仕方は怪しい。長年の幼馴染経験はダテじゃない。

 たぶん……こいつ……、今でも、ぱんつをはいてない……。


「グガアアアアッ!」

「ギシャアアアッ!」


 無視されていることがお気にめさないのか、幻獣どもが咆哮する。

 まったく、寂しがり屋さんどもめ!


「ともかく……今は幻獣、片づけよ?」

「貴様が変なことを言うから、調子が狂ったではないか!」


 俺と乙女はそれぞれ武器を手に、幻獣に対する。


 俺がトリケラトプス型、乙女がティラノザウルス型だ。ティラノ系なら、乙女の武器でもなんとかなることが、昨日で実証されているからな。


 でも……ジャンプして、また観客にパンツ見られるのは嫌だなぁ……。

 ああ、悩ましい。つい、内股になってしまう。


「「「アンコール! アンコール! アンコール!」」」


 そんな俺の苦労も知らずに、観客どもは騒いでいる。


 ってか、もっとお前ら危機感持てよ! 街に幻獣が出て暴れてる非常事態なんだぞ!?

 ちょっとは生命の危機とか感じろよ! 


 そうキレたいところだったが、素の俺を出すわけにはいかない。

 美少女ヒロイン(?)というのも辛いものだ。


「ギャォオオオオオオッ!」


 その間にも、トリケラトプス型が突進してくる。それを、俺はスカートを抑えながら、横によける。ええい、戦いにくいったら、ありゃしない!


 一方で、なぜか乙女も袴を押さえるような素振りを見せながら、ティラノザウルス型の攻撃をよけていた。

 ……ああ、これは乙女さん、はいてませんわ……間違いないですわ……。



 こうして、自業自得な面もあるが、俺たちは防戦一方になってしまった。

 意識すればするほど、パンツが気になってしまう。

 はいてない乙女のことも、ついつい気になってしまう。


 しかし……これでは、埒が空かない。


 ……こうなったら、もう見えるとか見えないとか見られちゃうとか関係ない。

 そうだっ! そんなに見たいってんなら、見せてやるぜっ! 


 俺は開き直ると男の娘ソードを手に、再びジャンプして幻獣に剣を振るう。


「おおおおおおっ!」

「白! やっぱり白だ!」

「目の保養の時間だあああああああああああああああああああああああああああ!」


 もう、無視だ無視! いちいち気にしてられるか!


「くっ、貴様なんぞに遅れをとっていられるか!」


 乙女も剣を手に跳躍して、ティラノザウルス型に斬りかかるべく、跳躍する――

 しかし、そこで新たな歓声が上がった。


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