第九話「招待状」
新しい展開に持っていこうと思います。これは自分が昔からこういうのがあったらいいなと思っていたものです。
里美に騙された次の日から里美の俺に対する視線が異常に痛く感じた。里美はあれから俺に何も言って来なかったがそれが余計に俺を不安にさせた。
「あんなにいい子だったのにな」
俺は若干の人間不信に陥っていた。
俺は必死にあの出来事は無かったこととして脳内で処理することに躍起になっていた。
脳内処理が完了しつつあったある日のこと、俺はいつものようにメールをチェックしているとこんなお知らせが届いていた。
ファンタジークエストユーザーの皆様。ファンタジわ。運営の近藤です。
来る○月○日にチーム対抗戦を実施します。優勝のチームには豪華特典を考えております。
参加希望の方はチーム対抗戦応募ページより参加表明してください。
○ルール
1チーム2PTまで(1pt7人なので14人まで参加できます)
参加表明されたチームはランダムでリーグ戦になります
1、2位だけが勝ち抜けとなり、トーナメントに移行します。
チーム戦の試合日時と日程は運営側で指定させていただきます。
19時から23時ごろの中で指定させていただくと思います。
優勝チームには賞金と特典を考えております。
参加のみでも参加特典を付けたいと思っております。
詳しい詳細は後ほど。たくさんの皆様のご参加をお待ちしております。奮ってご参加ください。
運営 近藤勇
どうやら兼ねてより噂のチーム対抗トーナメントが開催されるようだった。
「参加するだけでも何かもらえるのか。これは参加するしかないな」
俺はこのことを誰かに伝えるために誰かインしてないか探してみたのだがなぜだか今日に限って誰もいなかった。仕方ないのでこれから誰か来るだろうと思って露天巡りをしながら待った。
「えくすかりぱー」を見つけて特殊能力を確かめていたら意外な人物から秘密会話でメッセージが来た。
限りなく青い空様から よお。お前まだこのゲームやっていたんだな。
この「限りなく青い空」というのは俺のネットゲームをしてから初めてできた友達で一緒にギルドを組んでいたこともある仲のやつだ。音楽性の違いから俺は抜けてブルーウィングを結成したのだがそれ以来「限りなく青い空」とは疎遠になっていた。ちなみに俺が抜けてからのチームはどんどん強くなっていて今ではファンタジークエストで5本の指に入るほどのチームになっていた。いつもインしていても声も掛け合わないのに今日に限ってなぜか声を掛けてきた。俺は少々嫌だったが声を掛けられたら返事を返さない訳には行かなかったのでしぶしぶ返事を返した。
限りなく青い空様へ なんだ。何か用かよ。青空。
限りなく青い空様から 久しぶりに聞いたな。その呼び方は。今じゃそんな呼び方すんのはお前くらいだぜ。
限りなく青い空様へ お前はそんなこと言うために俺に声を掛けたのか? 俺は忙しいんだ! お前の相手なんてしてられねえぞ。
限りなく青い空様から いきなりそれかよ。相変わらずだな。お前は。わかったじゃあ用件だけ言おう。お前チーム対抗トーナメントは出るのか?
限りなく青い空様へ 俺が出ようが出まいがお前には関係ないことだろうが。なんでそんなことを聞くんだ。
限りなく青い空様から まあ。落ち着いて聞けよ。俺は出るのか出ないのか聞いてるんだ。どうなんだよ? 出るのか?
限りなく青い空様へ ああ。出るよ。悪いか!
限りなく青い空様から そうか。出るのか。なるほど。それは楽しみだな。組み合わせ次第では俺の所と当たるかもしれないんだな。
限りなく青い空様へ なんだって! お前、何が言いたいんだ。
限りなく青い空様から それだけだ。悪かったな。じゃあな。
それだけ会話文を残していくとさっさと青空はさっさとログアウトして行った。
「なんなんだ。あいつは胸糞悪い!」
俺は思わずキーボードを叩いていた。俺はなぜかイライラしていた。
その日の夜、集会所で俺たちは雑談していた。話題の中心は今日発表された。チーム対抗トーナメントの話題だった。俺の中では参加が決まっていたがチームのメンバーにも参加したいか聞いてみることにした。
ケミカルアイカ もちろん私達もチーム対抗トーナメントに参加するんすよね?
ケミカルパンク おおよ! 俺たちも参加するぞ。参加するだけで何かもらえるらしいしな。
ロマンチストジャニー おおsっやあああ。さすがあああ。マスタああああ。腕がなりますねええええ。
惨劇のクマさん ただ戦力的に厳しいかもしれませんね。大分ねこねこさんにメンバーを持っていかれましたからね。
ケミカルパンク 気にするな。参加することに意義があるんだ! とりあえず参加っていうことでいいんだな?
加重300% ノ
ケミカルパンク よし。いい返事だ。
猫猫子猫 対抗トーナメントは2パーティーなのよ。1パーティーで出るつもりなの? 馬鹿じゃないの?
ケミカルパンク わかってるわ。そんなことは。それよりお前なんでここにいるんだ。自分のチームに行けよ。
猫猫子猫 私がどこに居ようが私の勝手でしょうが。
ケミカルパンク ああ。わかった。わかった。勝手にしろ!
ケミカルパンク じゃあ参加表明しておくからな。みんな気合入れろよ!
惨劇のクマさん おう!
ケミカルアイカ 了解っす!
ロマンチストジャニー おおけえええいですううう
加重300% ノノノ
猫猫子猫 ……。
その日はそれで解散となった。俺はまだ締め切りまで時間があるのでぎりぎりまで待ってから参加表明することにした。それまでに俺はできるだけメンバーを集めることにした。
次の日、俺は惨劇のクマさんと狩りをしながらチーム対抗トーナメントについて相談していた。そこになぜか「限りなく青い空」がやってきた。
ケミカルパンク お前何しに来やがった。
限りなく青い空 昔の友達に会いに来て悪いか。よお。クマも久しぶりだな。
惨劇のクマさん う…うん。久しぶり。
限りなく青い空 なんだ。旧友との久しぶりの会話だって言うのにひでえな。おい!
ケミカルパンク お前どっか行けって邪魔だからさ。
限りなく青い空 まあ。聞けよ。聞いたんだけどよ。お前のブルーウィングよ。ねこねこに乗っ取られたんだって?
ケミカルパンク お前には関係ないだろうが。
限りなく青い空 あんだけ啖呵切ってねこねことクマと出て行ったのによ。今じゃ仲間割れかよ。俺のチーム倒すとかなんとか言ってたのによ。しょぼいな。お前は。相変わらず。
ケミカルパンク なんだと。
惨劇のクマさん マスタ落ち着いて。
限りなく青い空 しょぼいって言ってんだよ。お前のことだから今回のトーナメントもどうせ記念参加のつもりなんだろ? 相変わらずだな。だからお前にはクマとねこねこしか付いて来なかったんだよ!
ケミカルパンク 昔の話は関係ないだろ! 今さら蒸し返すな!
限りなく青い空 何熱くなってんだよ。悔しいなら俺のチームを倒してみろや! 俺にお前が正しかったって証明して見せろよ!
ケミカルパンク ああ。分かったよ! お前のしょぼいチームなんて俺が倒してやるよ! 精々連打の練習でもしてるんだな。
限りなく青い空 ああ。楽しみにしてるからな。お前のチームと対戦するの。じゃあな。クマもこの馬鹿のサポート頑張れよ。
ケミカルパンク うるせえ! 早く消えろ!
限りなく青い空はどうやらテレポートでどこかに行ってしまったようだった。その場には俺と惨劇のクマさんだけが残された。
惨劇のクマさん 行っちゃったよ。マスタあんなこと言って良かったの?
ケミカルパンク あいつが挑発してくるから思わず言ってしまったんだよ。腹立つわ。アイツよー。
惨劇のクマさん 分かってると思うけど青空のチームはこのゲームのトップクラスのチームだから半端じゃなく強いよ。
ケミカルパンク ああ。分かってる。今考えてるんだ。どうするか。
惨劇のクマさん どうするかって。どうするんですか。せめてもう1パーティー欲しいのに。
ケミカルパンク ああ。そうだな。それなりに強くて今からでも協力してくれそうなやつか。うむう。
惨劇のクマさん それなりに強くて。……。あ! でもなあ。
ケミカルパンク なんだ? 思いついたなら。言ってみろ。
惨劇のクマさん ええと。これはたぶんマスタが嫌がると思いますので。
ケミカルパンク この際贅沢は言ってられない。いいから言って見ろよ。
惨劇のクマさん うん。じゃあ言うよ。レッドウィングと協力して出てみたらどうかなと思って。
ケミカルパンク ……
惨劇のクマさん だめかな?
ケミカルパンク ああ! 俺がねこねこに頭下げろって言うのかよ!
惨劇のクマさん 今贅沢は言ってられないって言ってたじゃないですか。それなりに強くて今から頼んでもおkしてくれそうなチームって言ったらレッドウィングしかないですよ。
ケミカルパンク まあ。そうだが。しかし。
惨劇のクマさん 僕も一緒に頼みに行くよ。なんならアイカさんも連れてでもいいからだめもとで頼んで見ようよ。向こうも戦力は欲しいと思うよ。
ケミカルパンク 非常に気が乗らんのだが……。
惨劇のクマさん 青空にしょぼいって言われてもいいなら僕は別に構わないですけど。
ケミカルパンク それは確かに嫌だが。うーん。
惨劇のクマさん それに確かに最近の僕らは当初の目的を見失ってるよ。青空の勝ちだけを優先するやり方が気に食わなくてこのチームを作ったのに。今じゃ。ゆるゆるチームですよ。今回はいい機会なのかもしれませんよ。
ケミカルパンク うーむ。
惨劇のクマさん マスタ。覚悟を決めましょう。
ケミカルパンク そうだな。ひじょーーーに不本意だが。ねこねこに頭を下げることにするか。仕方がねええ!
惨劇のクマさん うん。そうするしかないですね。
俺は「限りなく青い空」。略して「青空」のチームを倒すために「ねこねここねこ」のレッドウィングと組むことを決意した。それはいいのだが果たしてあの「ねこねこ」がまともに返事をしてくれるのだろうか。俺は嫌な予感しかしなかったが、とにかく話をしてみようと思った。俺にはそれしか手は残っていなかった。
ご拝読ありがとうございました。
次回更新は4月12日を予定しております。第10話「約束」です。時間が無くて大変なのですが限られた時間の中でできることをやっていこうと思っております。次もご拝読いただけるとうれしいです。