第七話 アイカ
チーム戦で負けた俺はどうしても即戦力が欲しかったそこでケミカルアイカがブルーウィングに入るからリアルで会って欲しいと言う提案を俺にしてくる。
チャット形式会話での注
惨劇のクマ様へ これは惨劇のクマさんへの秘密会話です。(他の人にはわかりません)
惨劇のクマ様から これは惨劇のクマさんからきた秘密会話です(他の人にはわかりません)
○○様へ、○○様から以外の会話はその場所にいる人には全員に分かる会話です。
後半に一部理解するために必要になりますので一応補足として付け足して置きます。
「ファンタジークエスト」の世界でロボット実装により町がロボットでいっぱいになっていたその頃、俺は携帯の画面を見て悩んでいた。
最近チームのメンバーのケミカルアイカからのメールが多いのだ。前のねこねここねこ率いるレッドウィングとの対戦で元メンバーのケミカルアイカに助っ人として参加してもらったのだが、その代わりに俺の携帯のメールアドレスを教えるという条件でケミカルアイカにメールのアドレスを教えたのだったが、一日一メールの約束だったのだが、最近はやたらとどうでもいいメールをしてくるようになったのだ。最初、俺は律儀に返してやっていたのだが、あまりのメールの多さに参っていた。さすがに俺はメールを送るなと言わないが少しは自粛してくれと頼んだ。そうするとケミカルアイカの方はそれなら一回リアル(ネットを介さない現実の世界)で会って欲しいなどと言い出してきた。俺はそういうのはあまり好きではないので頑なに断っていたのだが、ケミカルアイカは会ってくれるなら自分のマスタをしているチームを休止してブルーウィングに正式に戻ってくれるということを言い出してきたのだ。俺はブルーウィングが先ほどの戦いで戦力が大幅にダウンしていたので、喉から手が出るほど即戦力のメンバーが欲しいところだったので、この取引はとても魅力的だった。しかし、直接会うということに関して、俺は躊躇していた。先ほどからずっと携帯のアイカからのメールを見ながら悩んでいた。惨劇のクマさんに相談すると「ケミカルアイカは今まで付き合って見たけど悪い子じゃないみたいだから会ってみてもいいじゃない」というようなことを言っていた。俺はその日ずっと携帯の画面を見ながら考えていた。
次の日、結局俺はアイカがチームに戻ってくるという誘惑に勝てず、アイカと会うことにした。場所は俺の高校の近くの公園だ。この公園はとても広くて木や遊戯がたくさんあり地元の人間なら誰でも知っている公園だ。俺はアイカに放課後にこの公園にいるから見つけられるものなら見つけて見やがれとメールした。アイカは「兄さんのオーラを感じて必ず見つけまっす」とか言っていた。俺は自分のオーラが零れすぎないように注意しないといけないなと思っていた。
その日の俺はずっとそわそわしていた。今日アイカに会うのだがもしかしたらこれは詐欺で行ったら怖そうなお兄さんとかがいたらどうしようかと考えたりしたりして授業に手がつかなかった。普段からも手についていないが今日はよっぽどだった。おかげで先生に当てられているのに気付かず怒られてしまった。罰で俺は魚の漢字の書き取りを宿題にさせられた。鱈とか鮪とか烏賊とか帆立とかだ。里美を見ると今日もあいつは昼寝をしていた。あいつは何しに学校に来ているんだろうか。
放課後、内藤君にエアホッケーの新台が入荷したからやりに行こうと誘われた(新台ってパチンコじゃないんだから)。俺はアイカとの約束があったので断ることにした。
「今度の新台はすごいんですよ! プレー中に障害物が出てきて当たり所によっては自分の所にまで戻ってきて自爆するんだよ!」
内藤君はやたらと興奮気味にエアホッケーの新台のことをアピールしていた。俺は内藤君の自爆しているところは見たかったのだが、それよりもアイカとの約束の方が重要だったので「また今度な」と言って別れた。
約束の公園は東京ドーム10分の1個分くらいの広い自然公園のような所だ。木々が多くあって、ブランコなどの簡単な遊具もあったり、池もあったりするなどまったりするにはとてもいい場所だ。俺は公園の全体が見回せる小高い丘の休憩所の櫓のような所でアイカのことを待ち構えることにした。
「変なやつだったら逃げることにしよう」
そう心に決めてアイカのことを待ち構えていた。しばらく待って何か飲み物でも持ってくればよかったかなと思っていた時、木の影から制服姿の挙動不審な女の子が見えた。その女の子は木と木の間を素早い動きで移動しながらやたらと周りをキョロキョロしていた。
「まさか。あいつか……」
アイカって女だったのかと疑問に思ったりもしたが、とりあえず俺はその女の背後に回りこんで確かめて見ることにした。
俺は丘からぐるっと回って女の子の背後まで回りこんだ。幸い彼女は気付いていないようだった。キョロキョロと辺りは見回していたが背後はお留守のようだった。俺はアイカなら必ず引っかかる方法で彼女がアイカかどうか確かめることにした。
「あ! こんな所に300億ゴールド落ちてるぞ!」
その女の子は振り向いたかと思うと、地面に這いつくばって探し出した。
「どこ! どこ! そのお金は私のドロップなんだよ。誰も拾わないでね」
「引っかかったな! アイカああああ!」
そう言うと俺はアイカを羽交い絞めにした。
「痛たたああ。誰! まさか私ついにゲームオーバーなの?」
アイカ(仮)は慌てだして泣きそうになっていた。俺は可哀想だったので正体を明かしてやることにした。
「泣くな。俺だ。ケミカルパンクだ」
俺はアイカ(仮)を羽交い絞めにしながら正体を明かした。
「え。えええ! ケミカル兄さんなんですか? 嘘おー。って。ちょっと顔が見えないんですけど。放してえー」
アイカ(仮)は俺の顔を見ようと俺の腕から逃れようともがいていた。俺はなんとかそれを阻止した。
「いいから。そのまま聞け。今日はお前の約束は守ってやった。死にたくなかったらこのまま振り向かずに歩いて行くんだ。いいな!」
顔が割れたくなかった俺はなんとか約束は果たしたことにしてアイカ(仮)を帰そうとした。
「嫌だ。嫌だ。このまま兄さんの顔見ないで帰ることなんてできないよー」
アイカ(仮)はますます暴れだした。俺はそろそろ捕まえて置くのが限界に来ていた。俺はなんとか踏ん張っていたが、あろうことかアイカが後ろ蹴りを食らわして来たので思わず手を放してしまった。
「クフッ」
「兄さんー」
アイカ(仮)は俺からの呪縛から逃れるとこちらを向いて抱きついてきた。
「って兄さんずるい」
俺は念のために某キャラのフレンドマスクを被っていたのでなんとか今の所、顔を見られることはなかった。
「にいさーん。往生際が悪いですよ。さ。っさとそれを脱いでください」
そう言うとアイカ(仮)は俺のマスクを剥がしに掛かってきた。
「痛。痛たたた。止めろ。そのマスクは顔の皮膚と癒着してるから取れないんだ。だから止めろ!」
「そんな訳あるわけないじゃないですか。さては見せられないくらいひどい顔をしてるんですね。そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか。兄さんがどんな顔でも私は構いませんから。ほら早く見せてください」
アイカ(仮)は俺のマスクを取ってしまった。
ガバッ
「眩しい。目が! 目があ!」
「そんな訳ないじゃないですか。さて兄さんのお顔を拝見―。 ハッ!」
アイカ(仮)は俺の顔を見て絶句していた。そんなに俺の顔はひどいのかな。ちょっとショックなんですけど。
「兄さん! 兄さん! 超かっこいいじゃないですか。なんでそんなかっこいいんですか。はえー」
アイカ(仮)を俺の顔を見て、かっこいいなどとぬかしていた。そんな訳あるわけねえじゃねえかよ。
「アホか。お前は。そんな訳ねえだよ。それよりもお前は……」
アイカ(仮)を見ると彼女は栗毛のショートカットの小柄の女の子で思わず頭をなでてやりたくなるような愛らしさがあった。そして、キラキラしたつぶらな瞳で俺のことを見ていた。俺はおもわず目をそらした。そんなつぶらな瞳で俺の姿を映さないでくれ。俺は本気の美少女はどうしても見ることをはばかってしまうのだ。
「兄さん! 私はどうですか? 変では無いと思うんですけど。ってなんで目を逸らすんですか! ちゃんと見てくださいよ」
アイカ(仮)は俺の目を逸らした先に回りこんで来た。
「頼む。頼むから勘弁してくれえー」
俺はそう言うと膝を抱えてしゃがみこんだ。
「はあ。兄さんいい加減にしないと怒りますよ」
そう言うと無理やり俺を立ちあがらさせた。俺は覚悟してアイカ(仮)と向き合うことにした。
「わかった。じゃあ確認するけど。お前はケミカルアイカなのか」
「そうでーす。私、ケミカルアイカです。本名は桐原愛華です。兄さんと同じ高校の一年生ですよ」
「ん? お前俺と同じ高校なのか?」
「そうですよ。今頃気付いたんですか? 制服見れば分かるじゃないですか」
アイカを見ると確かに俺の高校の制服を着ていた。
「それと桐原愛華だって? きりはらあいか? キリハラアイカ?」
俺はどこかで聞いたことがあった気がした。桐原愛華か。考えていると一人心あたりがあった。確か一年でテニスの有望選手で桐原とかいうやつがいたような気がした。将来を有望だったが怪我をして休養していたのだが復帰せずになんでか原因不明で退部したらしいという噂は聞いたことがあった。俺は聞いてみることにした。
「お前ってさあ。テニスとかやったことある?」
「テニスですか? 前にやってましたよ。今はやってませんけどね」
そう言うとアイカ、愛華か。はニッコリと笑った。たしか俺がアイカとネトゲで知り合ったのとアイカが怪我で休養していた時期って被っていたような気がした。アイツに初めてあった俺はいいカモを発見したと喜んでいろんなアイテムやお金をあげたり、レベル上げを手伝ったりしてこの世界にどっぷりと漬からせてやっていた。
「まさか退部の原因って俺じゃねえよな……」
「え? 何ですか?」
首を傾げながら愛華は聞いてきた。というかこいつリアルだとキャラ違うんだな。俺はこれ以上考えるのはやめることにした。
「それよりも兄さんのことを教えてくださいよ。本名とか。クラスとか。どこに住んでるんですか?」
「お前! まさか家まで付いてくる気じゃねえだろうな! 絶対教えないからな」
俺は身の危険を感じて一歩下がった。
「いいじゃないですか。兄さーん。何も銀行の口座番号を教えろって言ってる訳じゃないんですから」
「当たり前だ! そんなもん教えるか!」
俺はとりあえず中村俊介という偽名を教えてやった。これでアイツの中では俺は俊介さんになった。そのあと俺たちは近くのネットカフェに行って別々にインして狩りを少しして別れた。
「次はおうち教えてくださいね? 俊介さん」
そう言って愛華はいなくなった。
自分のアパートに帰ったら里美がいつものように定位置でゲームをしていた。
「帰ったぞ」
「うん……」
一応挨拶したが素気なかった。俺たちとの対戦が終わってから里美はなんとなく元気が無いように見えた。ちょっと気になったがあまり干渉しすぎるのもどうかと思ったので俺は放って置くことにした。
俺は「ファンタジークエスト」にインして集会所で雑談をしていた。集会所には惨劇のクマさん、ケミカルアイカ、ロマンチストジャニー、君は夢を見る、過重300%と珍しくねこねここねこのサブキャラの猫猫子猫もいた。そこでケミカルアイカが今日俺と会った話を話し始めた。
ケミカルアイカ みんな聞いてくださいっす。今日リアルでケミカル兄さんに会ったんっすよ。
ロマンチストジャニー おおお! マジっすかあああああ。どんな感じでしたかあああ。
惨劇のクマさん 今日断られたと思ったらそんなことしてたんですか
加重300% ノ
猫猫子猫 ……
君は夢を見る アイカ→パンクに会う
ケミカルパンク いちいち言わんでもいいだろう……
ケミカルアイカ まあまあいいじゃないっすか。それで兄さんって超かっこいいんっすよ。
ロマンチストジャニー 来たああああ! マスタあああああ。かっこいいんすかあああああああ。
ケミカルパンク うるっせええ!
加重300% ノ
猫猫子猫 …………
君は夢を見る 40代、リストラ寸前、ガセネタ
ケミカルパンク 夢見、そんなの嘘だからな信じるなよ。
猫猫子猫 ……
惨劇のクマさん ハハハハ。その方が面白いのにね。
ロマンチストジャニー マスタああああ。リストラで行きましょうよおおおおよおおお!
ケミカルパンク だからうるせえって! 黙ってろ。
ケミカルアイカ それでね。どんな感じかと言うと亀無と木邑を足して枝頭で割ったような感じっすねえ。とにかくかっこいいんっすよお。
惨劇のクマさん うーん。そんなだったかなあ。どうもよくわからないですね。
ロマンチストジャニー なんだかあああ! よく分からないですけどおお。とにかくかっこいいいんですねえええ。
猫猫子猫 ……
君は夢を見る 亀無+木邑÷枝頭=かっこいいケミカルパンク?
ケミカルパンク 真剣に考えるんじゃねえよ。普通だってふ・つ・う
ケミカルアイカ えー。かっこいいと思いまっすよ。
ケミカルパンク じゃあお前のことも晒してやるぞ!
惨劇のクマさん それ。聞きたいかもです。
ケミカルアイカ様から 兄さん私が女だと言うことは喋らないでくださいよ。私にもイメージというものがありますし、事務所も黙っちゃいませんし。
ロマンチストジャニー アイカさあああんはあああ。どんな人でしょおおかあああ。マスタあああ。教えてくださああい
ケミカルアイカ様へ なんだよ? 俺だけリアル公開なんてひでえんじゃねえの?
ケミカルアイカ様から 頼みます! 兄さん。もういっぱいメールとか送りませんから。
猫猫子猫 ……
ケミカルアイカ様から お願いします。お願いします。
ロマンチストジャニー マスタあああ。早くうううう。
ケミカルアイカ様へ あああ! 分かった。分かった。じゃあぼかしてしゃべるからな。それくらならいいだろ。
ケミカルアイカ様から はい。お願いします。
ケミカルパンク よし! じゃあケミカルアイカの素顔を大公開スペシャル。ケミカルパンクは見た24時。
猫猫子猫 ……
惨劇のクマさん 早くしてくださいよ。ぶー。ぶー。
加重300% ノノノノノ
ケミカルパンク まあそう焦るな。なんとアイカはな。筋骨隆々の男で朝はご飯にプロテインをふりかけにして食べてるようなやつなんだ。
惨劇のクマさん ぶっ。まさかあ。そんな人いないって。
ロマンチストジャニー 筋肉きたああああ。アイカさんてええ。筋肉の人だったんですねえええ。
君は夢を見る ケミカルアイカ=筋肉ダルマ
ケミカルアイカ ……。兄さん。それは
ケミカルパンク いやいや。ホントだって。俺思わず聞いちゃったわ。マウス何個壊しましたかって。チーム戦をやるごとに壊すから分からないって言われた時にはさすがに引いたけどさあ。
カミカルアイカ様から ……。兄さん。後で話しがあります。
ロマンチストジャニー アイカさああああん。筋肉無駄にしてるんじゃないんですかあああ。マウスじゃなくてダンベルの方がいいんじゃないんですかああ。
ケミカルアイカ様へ もう後には引けん。もう諦めろ。
惨劇のクマさん へえー。アイカさんは体格いいんですね。羨ましいですよ。僕は虚弱体質ですので。
ケミカルアイカ ははは。まあ……ねえー。
ケミカルアイカ様から 兄さんひどいっす。シクシク。
それから俺たちはアイカの筋肉ネタで夜遅くまで盛り上がった。後で俺の携帯がアイカからのメールで炎上してしまった。それと終始俺は里美の冷たい視線を感じていた。
次の日の学校に登校する俺は校門の前で見たことのあるような人を見つけた。栗毛のショートカットの女の子。愛華であった。俺は軽く挨拶をして通り抜けることにした。
「チィス」
「あ。兄さん。う。チィ……ス」
俺はそのまま通り抜けようとしたのですが、愛華に制服を掴まれて確保されてしまった。
「に。にいさ〜ん。ちょっとひどくないすか。そのままスルーしようとしようなんて」
「おい。アイカ。キャラ変ってるぞ」
「あ。ゴホン。俊介さん。軽く通り過ぎようとなさるなんてひどいんじゃありませんか?」
なんかこれも愛華のキャラじゃないような気がしたが長くなりそうなので突っ込むのはよすことにした。それとここはとても目立ちすぎる。さっきから通りかかる人の視線が痛くて困っていた。
「おい。とりあえず教室に向かうぞ。遅れてしまう」
「あ。はい。そうですね」
愛華はなんだかにこにこしながら付いてきた。そこで俺はなぜか寒気を感じた。後ろから強烈な視線を感じたからだ。思わず振り向くと里美がいた。なんで今日に限ってアイツは早く登校してくるんだ。
「……」
里美は俺に射抜くような視線を送っていたが目が合うと不適な笑みを零して携帯をいじりだした。
「どうしたんですか? 兄さん。じゃなくて俊介さん?」
「いやなんでもない。気にするな」
ピロリロリーン
俺は携帯の着信があったようなので見てみると里美からのメールのようだった。
From 前田里美
Sub ケミカルの犯罪現場を発見!
本文
ロリ大好きなケミカルさん。
それが噂のアイカさんね。
ほどほどにしないと通報されるわよ。
俺は恐ろしくなって素早く携帯を閉じた。振り返ると里美は見えなくなっていた。俺が携帯を見ている間に先に教室に行ったのかもしれない。
「本当にどうしたんですか? そんな青い顔をして」
愛華はつぶらな瞳で聞いてきた。
「いやあ。なんでもないよ。ちょっと昨日ゲームしすぎたかなあ。悪い。先に行く!」
「ちょっと! 兄さん?」
俺は愛華を置いて教室に行った。教室に入ると里美はいなかった。俺は仕方なく席に座ってため息をついた。すると内藤がこちらにやってきた。なんだか元気が無いようだった。
「悠一くんは、2次元しか愛さない同士だと思っていたのに残念です」
内藤は謎の言葉を残して去っていった。朝のホームルームが終わるぎりぎりの所で里美が教室に入ってきた。里美はこちらを見ずに席についた。
昼の授業中なんだか後ろから視線を感じるので振り向くと里美が今日は珍しく起きて授業を受けていた。腕組みをして、気のせいかもしれないが冷ややかな視線を俺に送っているのだ。俺は耐えられなくなって無理やり授業に集中することにした。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず。ただ、春の夜の夢のごとし。たけき者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
古典の授業の朗読がまるで俺に対する賛美歌のように聞こえた。それが再び起こる悪夢の始まりの合図だった。
読んでいただけた方ご拝読ありがとうございます。アイカを入れることで少しはこの話に幅が出てくればなと思っております。あとは今大きな構想を考えているのですが自分にこれがまとめ切れるか分からないので迷っています。次回は3月29日更新を予定しています。第八話チャーム(仮)です。よろしくお願いいたします。