第五十七話「地下迷宮探索(前編)」
7月17日階数修正
西園寺の雑用をやった翌日の放課後、サバイバル一回戦「地下迷宮探索」が開始されることになった。西園寺の馬鹿のせいでメンバーを組んでいる暇が無かったので適当に阿弥陀くじで7人を組んでしまうことにした。俺のチームのメンバーは俺、タリア(支援魔法使い)、リラックライマックス(牧師)、ねこねここねこ、ケミカルアイカ、スパークリング(ロボット)、じじいエキスポ(薬師)になった。
地下迷宮はファンタジークエストの一番北のマップスノータウンの一角にあるダンジョンでこのダンジョンは未完成でバグがいっぱいある。それがより一層迷宮度を高めている。何度かアップデートを繰り返して修正を繰り返したが最後はうまくいかなかったようでそのまま放置されている。
『地下迷宮で何が起ころうとも運営は保証できませんがよろしいですか?』
このダンジョンに入るときはブーブーと嫌な警告音が鳴り、確認が三回取られる。それがより一層不安を掻き立てる。自分で提案して置いて何だが早速止めたくなってきた。
ケミカルパンク よし! じゃあ一番最下層でSSを取って来い。それを評価ポイントとする。
惨劇のクマさん マスター。止めませんか? 何か嫌な予感がします。
ケミカルパンク アホか。やるといったらやるんだ。いいからさっさと行け……俺だって止めたいよ……。
ケミカルアイカ あー。何かぼそっと言ったっすよ。
ケミカルパンク 何にも言ってねえよ。いいからはい! スタート張り切って行きましょう。
警告文に対して三回オーケーボタンを押して地下迷宮へと侵入した。ダンジョン内部は風来のなんとかのような単純な作りのダンジョンでそこにゾンビが何体か配置されているくらいでさくさくと下へ下へと進めた。アイテムも設置されていたが殆どゴミで使い物にならなかった。
2時間程潜り、B49階まで来た。さすがに疲れてきたのでちょっと休憩することにした。
ねこねここねこ 意外と簡単ね。楽勝。楽勝。
じじいエキスポ ねこねこさん。侮りなさんな。このダンジョンは50階を超えてからが鬼門なんじゃ。
ケミカルパンク 何だ。それは?
じじいエキスポ 噂では運営がB50階までは真面目に作ったのじゃがB50階以降は飽きて適当に作ったという話じゃ。
タリア その話は本当なのか?
じじいエキスポ 噂かも知れんのじゃがこのゲームの運営ならあり得る話じゃとは思わんか?
ケミカルパンク まあ……確かにな。このゲーム未だによく続いていると思うよ。
タリア おじいさん。B50階からは何がある?
じじいエキスポ これ以上は……ゴホゴホ。わしの口からは言えん。すまぬ。
ねこねここねこ 知らないん……じゃないっすか。
タリア 行ってみれば分かるさ。行くぞ!
なぜかタリアが先に立って何があるのか分からないB50階へと進んだ。俺はすごく不安なのですが。
ケミカルパンク うわ!
ねこねここねこ 何も見えないんだけど。
じじいエキスポ そう来たのじゃな。なるほどな。
ケミカルアイカ 感心している場合じゃないっすよ。これじゃあ前に進めないっす。
B50階は何と真っ暗闇のステージだった。メンバーの周りだけぼんやりと光っているだけで後は殆ど何も見えなかった。くそ。たいまつを買って置くんだった。
じじいエキスポ よし。わしが先に行くから着いて来るんじゃ。
ケミカルパンク じいさん……いいのか?
じじいエキスポ どうせ老い先短いこの身じゃ。構わんよ。
ケミカルパンク よし。分かった。お願いするぞ。じいさん。骨は拾ってやる。
俺達はじいさんの後に続いて進んだ。見えないところからゾンビが攻撃してくるのでかなり混乱したが何とか階段を見つけてB51階へと潜った。
ケミカルアイカ またっすか。
タリア そうみたいだな。
リラックライマックス もうだりいっすよ。帰っていいっすか。
ケミカルパンク 帰るな!
リラクライマックス 嫌だってよーおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
ケミカルパンク おい。どうした?
ねこねここねこ リラクライマックスのゲージが真っ赤よ。
タリア まさか死んだ?
じじいエキスポ これが噂の即死トラップじゃったとはなわしがいながらすまぬ。
ケミカルパンク じいさん知ってたなら言えよ。しかし、本当に帰っていまうとわな。
じじいエキスポ 分かった。仕方ない。話そう。恐らくこのステージは各所に落とし穴トラップがあるはずじゃ。噂では運営が暗くして落とし穴作ったら面白いんじゃねと言いながらノリで作ったらしいのじゃ。
ねこねここねこ 何だか本当なのか。嘘なのか分からない話ね。
ケミカルパンク じいさんを信用するしか無いだろ。みんな気をつけながら行くぞ。じいさん先頭を頼む。
じじいエキスポ 任せるのじゃ。これでも夜目は利くほうじゃ。
俺達はじいさんを囮にして先を進んだ。ゆっくりとじわりじわりと進むじいさん。思わず早く行けよとゲームではなかったら後ろから押してやりたいほどに遅かった。
B58階に到達。そろそろ暗闇にもなれてきて何とかなりそうだなと思った所で叫びのログが流れてきた。
スパークリング あああ。まだ一言も喋ってないのにー!!!!
ケミカルパンク スパークリングううううう!!!!
B58階でなぜか一番後ろにいたスパークリングが落とし穴トラップに引っかかった。本当にどこにトラップがあるか分からない。まさかここで終わるんじゃないか。さすがにそれは無い。いくらなんでも落とし穴で全滅などになりたくは無い。
何とかB60階まで潜るとやっといつもの明かりのあるステージに戻ってきた。ただB60階は小さな部屋の一室だった。真ん中辺りに怪しげなスイッチがある。
ケミカルパンク じいさん。あれは何だ?
じじいエキスポ ゴホゴホ。すまぬ。わしにはこれ以上分からん。
ケミカルパンク 本当かよ。じいさんよ。
タリア どうする? あの怪しげなボタンは誰が押す?
ケミカルアイカ 私が押しまっすよ。ポチっと。
ケミカルパンク 馬鹿! ああ。押しちまったか……。
アイカは何も警戒せず蛍光灯のスイッチを押すようなノリでスイッチを押してしまった。
『ボタンを押した人に質問です。人には言えない秘密を告白しなさい。制限時間は2分です。スタート』
ケミカルアイカ 何これ?
ケミカルパンク 何これって? 早くしろ! 時間が無いぞ。
警告音と画面上が赤で点滅してアイカに回答を迫る。しかし、何だろうな。これは。ファンタジークエストと関係あるのだろうか。
タリア 早くしないとまずいぞ。
ケミカルアイカ そんなこと言ってもっすね。えーと。えーと。
ねこねここねこ あれだよ。この前のあれを言って。
ケミカルアイカ あれって。そんなこと言えないっすよー。
『時間切れです。GOOD BYE! SEE YOU AGAIN』
ケミカルアイカ きゃあああああああああ!
タリア アイカああああ。ああ。アイカが……。
ケミカルパンク もう何が何だか俺にはわからねえ……。
アイカの足元に落とし穴ができてアイカは落ちていった。残り4人だけになった。さすがにまずい。
『次のプレイヤー様。どうぞ』
ケミカルパンク どうする? 誰が行く?
ねこねここねこ 私が行くわ。任せて私には恥ずかしさなど微塵もないわ。
タリア それもどうかと思うぞ。
ねこねここねこがボタンを押して先程と同じ出題が提示された。
『ボタンを押した人に質問です。人には言えない秘密を告白しなさい。制限時間は2分です。スタート』
ねこねここねこ 私はいつもパンクの冷蔵庫から飲むキャラメルを2、3本くすねていました。ごめんなさい。
ケミカルパンク おい! それはどういうことだ。
『ナイス回答です。パーフェクトクリアです。先へどうぞ』
画面上に確変のような光と音の派手な演出が行われたかと思うとボタンの上の方に隠し階段が現れた。どうやら質問に正解すると階段が現れるらしい。
ねこねここねこ やった。行きましょう。
ケミカルパンク それよりもさっきのはどういうことだ。
ねこねここねこ ぐずぐずしていられないわ。行きましょう。
タリア 急ごう。みんなの犠牲は無駄にできない。
じじいエキスポ このじじいよりも先に逝ってしまうとは何て罰当たりな。待っておれ。わしもすぐ行くのじゃ。
ケミカルパンク だから俺の話を聞けえええ!!
B60階にしてすでにパーティーは4人にまで減ってしまった。Mobだけかと思ったらクイズのようなものも出てきた。この先何が待ち受けているのだろうか。予想できない。それにしても俺の飲むキャラメルがくすねられていたとは……口惜しい。
ご拝読ありがとうございます。
一話に収めようと思ったのですが意外と長くなったので2話で分けることにしました。よろしくお願いします。