第五十二話「新たな戦いの始まり」
第4部開幕です。
俺は最初で最後のトーナメント戦がBSRにぼろ負け終わり、里見が転校してもう本気で戦うことは無いと思っていた。たまにインして適当にチャットして狩りをして適当に過ごしていた。手伝いで他のチームに顔を出すこともあるが前ほど本気にはなれなかった。
タリア 頼む。私に力を貸して。
この言葉が再び俺を決戦のフィールドへと向かわせることになった。
ケミカルパンク どういうことだ。意味がわからない順序を追って発言してくれ。
あのタリアが俺に頼みごとをしてきた。珍しいこともある。
タリア あのね……。
タリアはゆっくりと俺にチャットしてきた。
里見が転校して早いものでもう4月になった。里美が転校しても当たり前だが里美がいないのが当たり前のように新学期が始まり、俺は進級して三年になった。クラスも変わり、今までと代わり映えのないメンバーや新しい顔ぶれがクラスメイトとなった。いつもなら期待に胸を膨らませている俺だったが今はなぜだかどうでも良かった。俺は適当な大学に決め、適当にやっていこうと思っていた。
「進路どうするんですか?」
俺に声をかけてきた長髪の男。昔からの腐れ縁の内藤君だ。今日は長い髪をポニーテールにしてYシャツの下に黒いTシャツを着て今日も決まっている。彼はなぜか今回も同じクラスになった。まあ内藤君はゲームのことしか頭に無いが悪いやつじゃないし、色々と利用できる男なので俺としては大歓迎だった。ここだけの話だが俺は内藤くんの名前を知らなかった。最初に聞いたような気がするがいつの間にか、内藤くんという愛称で定着してしまって俺は内藤くんの名前を忘れていた。
「まあ大丈夫だろ。いざとなったら俺はプロのネットゲーマーになればいいんだし」
「そんなめちゃくちゃな」
「岡崎。君はそんなにも無計画なのか。しょうが無いやつだな」
内藤くんが溜息を吐いている所に制服姿に黒いニット帽を深々と被った男が割って入ってきた。
「西園寺。お前には関係ないだろうが」
「関係無くは無い。君は僕のクラスの一員だ。それに僕は君も知っている通り生徒会長だ。僕には君たちを管理する責任がある。そんな無計画では学校の進学率にも影響する。そういう考えは止めてくれ」
四月のクラス替えである程度クラスメンバーがシャッフルされたのだがその中に妙な奴がいた。生徒会長兼、学級委員兼掃除係。西園寺秀夫だ。
彼は何かにつけて仕切りたがり、○○長が付くものならなんでもやりたがった。本来ならば生徒会長は学級委員などできないのだが彼は「僕の他にこのクラスに学級委員に相応しい人物がいますか。僕以外には居ませんよ。仕方が無いので僕が学級委員をやって差し上げます」などと言って誰も頼んでいないのに学級委員になった。クラスメイトも誰もやりたがらない学級委員を率先させてやってくれると言うので適当に西園寺を乗せていい気分にさせてやることにクラス全員が一致団結した。
彼はなぜか俺に妙に絡んでくるので俺にはかなりうっとおしい存在だった。俺はそのうち彼を殴ってしまわないかそれだけが心配だった。
「お前には関係無い。どこかへ行け。そして塵となれ」
「何だ。その態度は……。まあいい。それよりも君は聞くところによるとゲームが得意らしいな……実は僕も……っていないし! 内藤! 岡崎はどこに行った!」
俺は面倒くさいので内藤君を生贄にして教室から逃げることにした。すまんな。内藤君後でチョコチップスをおごってやるから許してくれ。
「さ。さあ。僕は分かりませんよ」
「そんなはずは無い。さあ僕に教えるんだ!」
西園寺は内藤君の襟を両手で持って壁に押し付けた。壁に内藤君が押し付けられる音に驚いてクラスメイトは見たが西園寺の姿を認めると「またやつか」と思い、クラスメイトは無関心を装った。
「く。苦しいよ。知らないってば」
「ふ。使えないやつめ。まあいい。僕を怒らすとどんな目に遭うか。覚えておくんだな」
西園寺は内藤君を放り投げると岡崎を探しに邪悪に微笑んで教室から去っていった。クラスメイトはもう帰ってこないで欲しいなと心の中で祈った。
俺は西園寺から逃れて屋上まで来ていた。まだ四月なので肌寒いがおかげで殆ど誰も来ないので考え事をするには丁度良かったので最近はここに来ることが多い。俺はいったいどうしてしまったのだろうか。やはり里美がいなくなって少しさみしいのだろうか。何というか必要なパズルのピースが無くなったようなうまく表現しにくい喪失感がある。里美とはネットでは会うが直接は転校してから会っていない。 話はするが向こうの学校での様子を里美はまったく教えてくれなかった。ただ大丈夫とだけいつも言ってw(笑)ってごまかしていた。
「岡崎先輩。ここに……居たのですか。勝手にどこかに行かれると困ります」
黒髪の黒縁眼鏡の女の子が俺を睨んでいた。タリアの中の人真板良子だ。ケミカルアイカのリア友で少し前から交流が始まり、ちょっと前まで微妙に関係になったが今ではある程度仲が良かった。あまり話すのが得意では無いようで無口な方だが悪いやつじゃない……と思う。
「昨日の話か。まだ考えが纏まっていないんだ。もうちょっと待ってくれ」
「早く……して欲しい」
真板良子ことタリアとは前回のトーナメントの敗戦で少し微妙な関係になっていたが最近仲が少し改善し、キャラもチームに置いてくれるようになった。俺がぼーとしているうちにここ三ヶ月くらいでタリアはめきめきと名をあげていた。元々有名だったがこの前のミニの大会だったがBSRは不参加だったが優勝したのだ。俺もサブでゲスト参加した。それに加え、最近発足したファンタジークエストの実力者だけが集まる会議、通称FQ会議にも名を連ねていた。ちなみに俺は呼ばれなかったなぜだろうか。
FQ会議とはファンタジークエストの運営側の暴挙に歯止めをかけるために代表者が集まって意見交換などをして運営に通報しようということで最近始まった会議だ。しかし、名目は立派だったが実際は月に一回くらいに集まって適当に雑談して解散するということが多かったのだがBSRの限りなく青い空が代表になってからは目立つキャラには制裁を加えるなどろくでもない会議へと成長していた。聞いた話だとこの前は支配下のキャラを使ってIDを乗っ取るなどということをしていたという話を聞いている。まあ俺からすれば勝手にやってくれという感じだ。呼ばれて無いしさ……。
昨日の話とはタリアが珍しく俺にペア狩りを頼んできたことから始まる。俺たちは最近のマイブームになっているホロインの沼のスパイダー狩りをしていた。ホロインの沼のスパイダーは良質な回復アイテムを高確率でドロップできるので俺は小銭稼ぎに重宝していた。俺が剣士でスパイダーを狩り、タリアが支援魔法使いで俺の狩りを支援してくれていた。
そこでタリアはこんな話を始めた。
ご拝読ありがとうございます。
最後に投稿したのが4月くらいですから2ヶ月くらいぶりの投稿になります。第4部です。一応伏線っぽいのもありましたので回収しながら進めて行こうと思います。よろしくお願いします。