第五十話番外編ニートの華麗なる日常3「ファンタジー倶楽部 VS ITR(前編)」
宮藤のIDを盗んだ奴とのチームと対戦当日。俺は全ての準備を整え終え、決戦ステージで待機していた。今日のチーム戦は氷に覆われた南極ステージ。遮蔽物が少ないので守りにくいが攻撃はし易いステージである。
一番の懸案事項だった人数が揃うかという問題も今俺がお世話になっている『レッドウィング』マスターねこねここねこさんの協力により何とか形にすることができた。ちょっと失うものも(金銭的なことで)多い。しかし、宮藤のIDを取り戻すということが一番の目的ではあるがIDを盗もうとする輩をそのまま野放しにしておくことはこれからのファンタジークエストの運営にも関わるのでこれは見逃すことができない。くれぐれも言っておくが俺は運営ではない。ただ楽しくゲームをするためには最低限のルールは守るべきだ。ゲームだから何でもありだとかそんなことはない。ゲームだろうがリアルだろうが最低限のルールは守るべきだと俺は思う。
開始時間近くになり、パラパラと参加メンバーが集まってきた。ねこねこさんも来てくれてどうやら何とか全員無事に参加ができそうだ。心配だったリラックライマックスもぎりぎり開始に間に合った。しつこいくらいにメールを送っておいたのが功を奏したようだ。
ニートは人間国宝 ゲストのねこねこさんです。俺の今お世話になっている――。
ねこねここねこ 私の紹介はいいから約束覚えてるわよね。
ニートは人間国宝 も。もちろん覚えています。
ねこねここねこ それならよろしい。久しぶりに腕がなるわねー。
その言葉を聞いて俺はぞっとした。いったいいくらせしめるつもりだろうか。今日も「トランスD(注1)」と「トリカフト(注2)」と「切り裂きジャクソンの磨ぎ石(注3)」と「リーさんのキムチ(注4)」と「確率変動のサイコロ(注5)」を用意しろと言われて俺は何とかお金を工面して用意した。それに加えてじじいの調合漢方薬「真武湯(注6)」「朝陽丸(注7)」「独参湯(注8)」をじじいから購入した。あのじじいの奴ちゃっかりと身内の俺からも相場金額で販売してきたので非常に出費がかさんだ。
注1 攻撃力アップアイテム
注2 三秒の間ダメージを食らわないアイテム
注3 攻撃力アップアイテム
注4 スピードアップアイテム
注5 クリフィティカルの確率を変動させるアイテム
注6 薬師の調合漢方薬 興奮作用によりダメージを軽減させる
注7 薬師の調合漢方薬 幻覚作用により一時的に攻撃力アップさせる
注8 薬師の調合漢方薬 幻覚作用により一時的に防御力をアップさせる
じじいエキスポ そういえば今気づいたんじゃがちょっとよろしいかな。
ニートは人間国宝 どうぞ。何ですか?
じじいエキスポ 火力が少ない気がするんじゃがな? そこのねこねこさんは弓師で火力じゃが他に純粋な火力は格闘家の膃肭臍くらいじゃと思うのだが……。
ニートは人間国宝 まあ。確かにそうですね……。
宮藤使い 兄貴。俺に任せてくださいよ。俺の土壁男ならちぎっては投げちぎっては投げで死体の山を築いてみせますから。
ニートは人間国宝 そうだな。よし! だんご兄妹。今日は妹の方で頼む。少しでも火力が欲しい。
宮藤使い 俺は無視ですか!?
みたらしだんご ニートさん了解です。今日は私が担当しますね。お兄ちゃんごめんね。
みたらしだんご ああ。良かった。僕が出たら絶対死んでいたよ。絶対にそうだ。そのように決まっている。だから今回もメンバーからはずされるんだ。ああ。僕は何て駄目なやつなんだ。
みたらしだんご また始まった。お兄ちゃんの悪い癖が。
みたらしだんごの兄貴の方は何かのトラウマなのか知らないが性格弱気すぎて常にネガティブに考えてしまう。ちょっとめんどうな所があるがうまく妹の方にフォローしてもらっているので助かっている。
ニートは人間国宝 わ。悪いが……よろしく頼む。
魑魅魍魎膃肭臍 それで相手の情報はあるのか?
ニートは人間国宝 じじい頼む。
じじいエキスポ わしが調べた限りじゃと相手はITR。いちろうたかぎレボリューションの略らしいのじゃが前衛職特化型チームらしいの。特にナイトが多いとのことじゃ。じゃから今回もナイトが多いのじゃと思う。
魑魅魍魎膃肭臍 ナイトか厄介だな。
ニートは人間国宝 ラグ死に気を付けろよ。噂だと全キャラ中ナイトがラグ死する確率が高いらしいからな。
みたらしだんご あれまだ修正されてなかったんですね。
じじいエキスポ 何度かメンテで修正されたんじゃが結局、効果的な修正は施されておらんのじゃよ。
魑魅魍魎膃肭臍 どうせ根本的な所が悪いだろ。
じじいエキスポ そうじゃな。全面的に修正せんと治らないじゃろうな。
ねこねここねこ 私が倒しまくるからそんなに心配しなくてもいいわ。今回は気合の入り具合が違うし。さて何回倒せるかしら。ふふ。
ニートは人間国宝 ね。ねこねこさん。お手柔らかに……。
リラックライマックス 早く始まってくれ。でないと寝てしまう。ああ。眠ぃし。だるいわ。
ニートは人間国宝 もう少しで始まるから我慢してくれ。
『試合が開始されました』
試合の開始が宣言され、俺はメンバーに「スピード」の支援をかけて、牧師のリラックライマックスに「ストロング」と「スタミナ」の支援をかけてもらった。リラックライマックスももうちょっとゴネるかと思ったが結構素早い動きで支援をかけていった。さすが熟練の動きだ。大体支援のかけ方でどのくらいのプレイヤースキルを持っているか分かるがリラックライマックスは結構やる。わざわざ無理をして来てもらった甲斐があったというものだ。
試合がかけおわると俺たちは少しずつ相手の方向に向けて、進軍を開始した。今回は純粋な前衛職がいないので格闘家の膃肭臍とMob使いの宮藤使いの土壁男に前衛をやってもらい、その後に残りの我々が続いた。
ご拝読ありがとうございます。
ついに五十話目です。番外編も次回で終了となりますがよろしくお願いします。