第四十五話「俺が彼女にできること」
「何で……今気づくの……いかれてる」
「うーん。信じられない」
タリア隊戦の次の日朝、学校の近くで愛華と良子ちゃんに会ったので昨日のチーム戦について話をしながら学校に行っていた所である事実を知った。なんと次の対戦相手はBSR戦らしい。確かに結構勝ち進んだのでそろそろ当たってもおかしくはないなあと思っていたがまさか次の試合で当たるとは思わなかった。良子ちゃんに言われて気が付いたが俺がそれを知らなかったということで良子ちゃんはかなりお冠のようだった。良子ちゃんは次がBSR戦だからはだからどうしても俺たちに勝ちたかったらしい。うーん。やっぱり情報は入れて置いた方がいいんだろうなあ。
「こんな……人に負けるなんて……不覚」
「そんなに落ち込むことなのかよ!」
良子ちゃんは愛華に体を預けて思いっきり落ち込んでいた。俺が今まで見てきた中で一番落ち込んでいたので俺は思わず大げさに突っ込んでしまった。周囲の視線が刺さったが俺は「俺じゃないよモード」を作動させて知らん振りした。
「何で知らなかったのですか?」
「それどころじゃなかったんだよ」
俺はとっさに出任せを言った。愛華は露骨に疑わしい目を使ってきた。そんなに俺が忙しいのがおかしいのだろうか。それに忙しい振りは何て使い勝手がいいんだ。これ仕事をするようになると使えるので覚えておいた方がいいよ。
「何で知らなかったのですか?(廃人のくせに忙しいんですか?)」
愛華が目で会話して来た。これが俳句で言うところの余韻とかいうやつなのか。違うか。
「俺だってな。色々と忙しいんだよ。(廃人の何が悪い)」
「何が忙しいのか具体的に言ってくださいよ。(どうせ狩PTで俺が抜けると全滅してしまうとかそういう忙しいでしょ)」
「色々は色々だよ。お前もやけに突っかかってくるな。最初はこんな娘じゃなかったのに(んなことねーよ。最近ブログに力を入れているから忙しいんだよ)」
「変に忙しぶる岡崎先輩が悪いんですよ(大差無いじゃないですか。それにこのさい言っちゃいますけどあんなブログ誰も見ませんよ)
「誰が忙しぶってるって(お前なあ。最近はカウンターが2桁行くようになったんだぞ)」
「忙しぶってるじゃないですか? 暇なくせにそれならちゃんと情報も入れて置いてくださいよ。(2桁ってどうせ内藤先輩と自分で回しているんでしょ。私も義理で訪問させてもらってますんで感謝してくださいね)」
「お前なあー。(お前なあー)」
「あの……どうでもいいけど……心の中でも喧嘩するのは……ふう」
良子ちゃんに突っ込まれて余韻ゴッコは終了した。良子ちゃんは「やれやれ」といった感じで呆れていた。何で分かったのだろうか。さすが……(てんてん)マスターだ。余韻ならお手の物なのだろう。
「まあ冗談はさて置いてだな」
「随分長い振りでしたね」
「まあ、たまにはいいだろ。それでだな。ごにょごにょ」
俺は愛華の耳に手を当てて直接耳うちで要件を伝えた。
「まじですか」
「ああ。まじだ」
「あの……私にも……教えて」
「大変じゃないですか」
「ああ。大変だ。どうしたらいいかな?」
「そうですね……」
「ああ……」
「……」
「あの……私にも」
「すいません。ごにょごにょじゃ分かりません」
「だな。もうこういうのは止めるか」
「……(怒)」
最近俺たちの中ではやっているノリノリタイムをそろそろ終わりにしていい加減に本題に入ることにした。良子ちゃんも呆れを通り越して怒りが入ってきているしそろそろこのくらい頃合だろう。まあ簡単に説明すると里美のやつが転校してしまうということで忙しかったという一言で終わってしまうことだ。それを2人に伝えると「短か!」というつっこみを2人から頂いた。
「それ結構重大なことじゃないですか? で?」
「で? とは?」
「で? ですよ? ねえ。良子ちゃん」
「うん……で?」
「で? じゃ分かんねえだろうが! 何だよ。で?って。いくらなんでも端折りすぎだろ!」
「仕方ないですね。あのですね……」
要するに愛華が言うには転校するのに俺が何かしないのかということだ。あいつはそういうのは嫌いだと思うから何もやらないと言った。愛華と良子ちゃんは信じられないという顔をして岡崎先輩が何もやらないなら私たちでやりましょうということになぜかなった。
「何か無いかなあ」
「別にそんなこといらねえだろ。俺なら迷惑だし」
「そんなことだから。う。げほ。げほ」
俺は思わず愛華の口に指を滑り込ませて暴言を吐かないように阻止した。ふー。危ない所だった。
「止めろ。朝からそんな放送禁止用語は叫ばせねえぞ」
「げほ。げほ。そんな……こと言わないし」
「いや。今の目つきは絶対そうだった。俺の読んだ雑誌にはそう書いて。なんと! うぐ。てか痛でででで」
俺は何かに足払いをされて前のめりにこけた。全く予想していなかったので受身が取れずに顔面を強打した。
「大丈夫?……とんでもない変態発見」
「うん……大ジョブ。慣れているし。変態なのも知っているし」
鼻が折れたかと思ったが触って見た感じでは何とも無いようだった。良かった。鼻が低くて助かった。鼻がもう少し高かったら危ない所だった。
「そうだ! ファンタジークエストで何かできないかな?」
「鼻痛えわ。いや。どうだろうな」
「変態には聞いてませんよ」
「愛華。何かちょっと前から俺に対して冷たくないか!?」
「……。どう思う良子ちゃん」
「え。無視なの!! 酷い。俺何かしたっけ?」
愛華の余りの冷たさに俺は欝になった。俺何かしたかな? うーん。心当たりがありすぎるな。まあいいか。それよりも顔面から落ちるなんて本当にあるのだなあと俺は今身を持って知った。
「それなら……いい考え……ある」
「何。何?」
「うん。ごにょごにょ」
「ふん。ふん。なるほど。それいいね」
「あの。私にも教えて欲しいのですが」
「じゃあ今日の18時にいつもの集会所にみんなを集合させて相談しよっか。良子ちゃんもタリア隊の人連れて来てね。私もレッドウィングの人に声掛けておくからさ」
「あの~」
「じゃあ早く行かないと授業始まるから走ろっか」
「うん」
「おーい。教えてよー」
愛華と良子ちゃんは俺を置いて走りさった。何か最近俺の扱い悪くない? この前の試合であれだけ活躍したのにどういうことだろうか。こういうのって癖つくと一生このままのような気がするけどやっぱり俺ってこういう役回りなのだろうか。そんなことを考えながら学校に向かった。学校には遅刻してしまった。
学校も終わり18時頃、いつもの町の外の森の中の集会所に集合した。一応ねこねここねこには内緒ということでねこねここねこはこの場所には呼ばないようにした。
ケミカルアイカ さて。みんなに集まってもらったのは他でもないっす。
ニートは人間国宝 なんでアイカさんが仕切っているのだ。
ケミカルパンク ノーコメントで。
惨劇のクマさん それにあれってタリア隊の皆さんですよね?
ホップステップごま塩 お邪魔してます。
ささくればくはつ お邪魔してまーす。
以下略。
全員では無いがレッドウィング、ブルーウィング、タリア隊と20数名程のキャラが集まっていた。最近では中々ない人数だったので俺は少し興奮していた。何となく強豪チームの集まりっぽい感じだ。
ケミカルアイカ それで話は戻りまっすが実はリアルでねこちゃんが転校することになるみたいなので私達で何かできないかと思い今日は集まってもらったっす。
ニートは人間国宝 うむ。それが今までチーム戦に参加出来なかった理由なのかな。
ホップステップごま塩 俺たちは? 何で集められたんだ?
タリア それも今説明するから黙ってて。
ケミカルアイカ 話し戻しますがそうっす。それで今まで参加できなかったみたいっす。
ケミカルパンク 俺にも喋らせろ。それで転校先でも精々頑張れよという気持ちを込めて何かできないかと考えたがどうせならファンタジークエストで何かやろうということになった。
ケミカルアイカ それで考えついたのが! ではタリアちゃんどうぞ~。
タリア レッドウィングとブルーウィングとタリア隊とで交流戦やるぞ!
ケミカルアイカ ということです。どうっすかね?
ニートは人間国宝 おー。いいね。
惨劇のクマさん 面白そうですね。
ホップステップごま塩 さすがタリア様ですね。
ケミカルアイカ みんなおkっすか?
ニートは人間国宝 まあマスターがオーケー出しているのだから問題は無いだろう。もちろんうちのマスターには内緒なのだろう?
ケミカルアイカ うん。でも私が後でねこちゃんのことは伏せてお互いの交流を兼ねて交流戦をやりたいっすということは伝えて置くっすから大丈夫っすよ。
ニートは人間国宝 なるほど。それなら問題ないな。
ケミカルパンク じゃあ詳しい日程は後で伝える。たぶん1週間後くらいになると思うが予定は絶対空けて置けよ。予定があったらそっちキャンセルな。
ニートは人間国宝 相変わらずだな。まあいいが。できるだけ早く詳しい日時を頼むな。調整しにくくなるからさ。
ケミカルアイカ 分かったっす。早めに伝えますので。
ロマンチストジャーニー 了解いいいいいいい!!
タリア では解散!!
ケミカルパンク 結局全部持ってかれたな。
1週間後にささやかに転校先でも頑張れ交流戦を開くことになった。なかなかこういうことをやる機会が無いので結構楽しみだったりする。今日は主導権を取られたが当日は俺が仕切るぞ。
ご拝読ありがとうございます。
次回は交流戦になります。
1年くらい書いているのにこれはまだやっていないと
いうことに最近気づきました。
次回投稿は2月7日を予定しております。
よろしくお願いします。