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ネトゲ女  作者: kaji
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第四十四話「VSタリア隊(後編)」

試合終了まで残り20分どちらの支援も完璧で膠着状態がしばらく続いていた。最初の衝突で2人やられているのでこちらの方がポイントで負けていた。そろそろ仕掛けないとまずい。俺の考えでは0対0のまま終盤戦まで持って行きたいと思っていたので誤算だがまあ想定内だ。



ケミカルアイカ なにかおかしいと思ったら狩り装備だったっすー

ケミカルパンク 何やってんだ。死ねええええ



やはりアイカは当てにならないので俺がやるしかない。ファンタジークエストのチーム戦で活躍する条件が何かといえばいくつか条件がある。レベルはもちろんだがどれだけお金をかけているかにかかっていのだ。装備はもちろん、一番はアイテムだ。高価なアイテムをどれだけ惜しみなく使えるかが勝負の分かれ目となる。後はテクニックと状況判断だ。どこでアイテムを使うか。どのような動きをするか。これは何戦もチーム戦をこなさないと身に付かないものだ。教えられるものではない。俺はここが勝負どころだと今までの経験から察知してアイテムをフルに使うことにした。

 俺は今日のために用意したアイテム「トランスD(注1)」とトリカフト(注2)と切り裂きジャクソンの磨ぎ石(注3)とリーさんのキムチ(注4)、確率変動のサイコロ(注5)を使うことにした。


注1 攻撃力アップアイテム

注2 三秒無敵っぽいアイテム 

注3攻撃力アップするかもしれないアイテム

注4スピードアップするかもしれないアイテム

注5クリフィティカルの確率を変動させるアイテム


注目は確率変動のサイコロだ。このゲームは一定の確率でクリフィティカルダメージを与えることができるのだがこのサイコロを振ることによって確率を変動させることができるのだ。

 俺は早速このアイテムを使ってみることにした。画面上に3つのサイコロが出てきて転がり出した。「5、3、2」が出た。まあまあかな。他のアイテムも使い俺が今、考えられる限りの最高の攻撃力を身につけた。これで数千万くらいのお金が消えた。レベル帯が上がれば上がるほどチーム戦でかなりの額の金額が動く。俺は1試合本気で試合すると億くらいのお金を使い切る。かなりの痛手だがチーム戦で活躍するにはそれくらいお金がかかるのだ。まあ試合後にどれくらいお金を使ったか自慢するのも楽しみなので億程度は許容範囲だ。

 俺は早速近場の弱そうな相手を見つけて攻撃をかける。大体キャラの色でどれくらいのレベル帯であるか予想はできる。どれくらいの鎧を付けているかでキャラの色が変わるからだ。弱そうなやつを見つけ、早速突っついて見る。意外とあっさりと片付けることができた。 

 さらに調子に乗って2人ほど片付けた。インフレーション(剣士) 雄星民営化(剣士)、佐藤協奏曲(支援系魔法使)を一気に倒す。レベルが低いようで失点を挽回できるほど得点を得ることができなかった。このレベル帯を今までの時間維持するとはタリアのやつは恐ろしいやつだ。

 死亡者が出たので相手はワープして一旦引いた。俺たちもこの時間を利用して支援をかけ直す。残り10分、あまり時間は無い。チーム戦をやっていると驚くほど時間が短く感じる。



ロマンチストジャーニー やばいいいいい。親だああああ。落ちますうううう。


ケミカルパンク お前。まじかよ。こんな時に。


ロマンチストジャーニー すんませえええん。おつかれですううう。


ケミカルアイカ お疲れっす。またね。


ねこねここねこ お疲れ様。


ケミカルパンク お疲れいー。


ロマンチストジャーニーがゲームからログアウトして14人から13人になった。一番、勝負所の場面で抜けられたので非常に痛いがリアルも大事なので仕方がない。これで無理させてインでもできなくなったらそっちの方が痛手なのでここは我慢することにした。

 残り5分前、試合前の作戦通りに全員のタゲをタリアに合わせる作戦を実行することにした。



ケミカルパンク 行くぞ。準備しろ。


ケミカルアイカ 了解っす。


ケミカルパンク アイテムおk―。


惨劇のクマさん おkですー。


ねこねここねこ 大丈夫よ。


ニートは人間国宝 オーケーだ。いつでもいいぞ。


ケミカルパンク よし。カウントするぞ。


ケミカルパンク 10


ケミカルパンク 9


ケミカルパンク 8


ケミカルパンク 7


ケミカルパンク 6


ケミカルパンク 5


ケミカルパンク 4


ケミカルパンク 3


ケミカルパンク 2

ケミカルパンク 1


ケミカルパンク 発射!!



レッドウィングの全ての攻撃がタリアへと迫った。さすがのタリアもこれには一溜まりもないだろう。しかし、一瞬の間にタリアにナイトが重なってきた。



ホップステップごま塩 タリア様―!!


タリア ごま塩。


ケミカルパンク 何だって! どういことだ。


ケミカルアイカ たぶんナイトのスキル「かばう」かも知れないっす。



ナイトがタリアをかばって即死した。ナイトが死んでポイントは逆転したがタリアは未だ健在だ。俺はこんなスキルがあるとは予想していなかったので思惑が外れて愕然とした。もう少し情報を入れておけばよかった。



タリア やったなあああああああああ。



タリアは怒りに任せて小惑星おとしを連発してきた。爆風で前がよく見えない。画面が大きく揺れて恐ろしい程にHPのゲージが減っている。さすがの高レベルのハイブリッド魔法使いだ。高レベルになると元々は支援系魔法使いでもたくさんのスキルが習得できるようになり攻撃スキルも取れるようになる。タリアはハイブリッド魔法使いの最たる例だ。ファンタジークエスト全体を見てもハイブリッド魔法使いは数えるほどしかいない。

 ここでタリアの小惑星落としに耐え切れずにわんわん物語とサイキッカーがやられてしまう。



ケミカルパンク ぐ。これは。きつい。

ニートは人間国宝 まずいな。全滅するぞ。


ケミカルパンク まだだ。諦めるな。カウント3から行くぞ。



まだアイテムの効果は失われていない。まだ行けるはずだ。



ケミカルパンク カウント省略3カウントからいくぞ。


ケミカルパンク 3


ケミカルパンク 2


ケミカルパンク 1


ケミカルパンク 発射ああああ!



レッドウィングの全ての攻撃がタリアへと集中した。



ニートは人間国宝 浅いか。


ねこねここねこ みたいね。



2人やられた分が影響したのか、画面がよく見えないのでタゲがうまく合わなかったのか分からないがタリアは生きていた。

 ここまできて得点で負けていた。まずいな。これは。残り時間は2分。ここで再び俺は勝負をかけるためにアイテムを全部使うことにした。

 先ほどの「トランスD」と「トリカフト」と「切り裂きジャクソンの磨ぎ石」と「リーさんのキムチ」、「確率変動のサイコロ」に加え、「スピードマスター」を使用する。これで攻撃速度、移動速度ともに格段に向上することになる。

 更にサイコロを振ると「6、6、6」だ。奇跡が起きた。行けるぞ。これは。



ケミカルパンク ねこ!


ねこねここねこ 分かってる。



タリアの弓と俺の剣のタゲが合った。さすが里美だ。俺との付き合いが長いだけはある。瞬間的なやり取りだったが里美は理解してくれたようだ。



タリア く。しまった。


ケミカルパンク よしゃあああああ。


ケミカルアイカ やりましたっすね。


ニートは人間国宝 よーし。よくやった。パンク見直したぞ



今まで倒れたことが無い無敵の浮沈戦艦がついに地面へと倒れた。レベルが高いのでかなりの得点を獲得することができて逆転した。俺はそれよりもタリアを倒したことにかなりの満足感を得ていた。久しぶりの手ごたえに思わずリアルで小さくガッツポーズをした。それくらいうれしかった。



『レッドウィングの勝利で試合が終了いたしました。お疲れ様でした』



そのすぐの後に試合終了が告げられた。結果的にはタリアを撃破して大逆転勝利でチーム戦を終えることができた。さすがに今回ばかりは危なかった。さすがの俺も負けるかと思った。とにかくねこねここねこの復帰戦は勝利で終えることができた。

 試合後、タリアをつるし上げるために集会所にタリアを呼んだ。さすがのタリアも今回の敗戦はショックだったのかひどく落ち込んでいた。



ケミカルパンク さあ。じゃあ罰を受けてもらうかな。

♪タリア♪ どうとでもしなさい。


ケミカルパンク どうしっかなあ。迷うなあ。


ケミカルアイカ エロイのは駄目っすよ。私が不許可っす。


ケミカルパンク えー。駄目なのかよ。


ケミカルアイカ 駄目に決まってるっすよ。何言ってるっすか。



俺はそんなことは考えてはいなかったがそう言われると迷ってしまう。本当に考えていないよ。これは本当。



ケミカルパンク 罰はだな。俺たちとこれからも一緒にやってくれ。以上だ。


♪タリア♪ は!


ニートは人間国宝 パンクがまともなことを……。


ケミカルパンク いいじゃねえかよ。たまにはまともなことを言ってもよ。これから戦って行く上でタリアの力は絶対必要だ。頼んだぞ。タリア。


♪タリア♪ 別にいいけど。何か気持ち悪い。


ケミカルアイカ タリアちゃん。これからもよろしくっす。


♪タリア♪ うん。よろしく。



タリアは拍子抜けをしていたが元々俺はタリアを倒して勝ったらこうしようと思っていたのでこれで問題ない。最後はいつものお決まりの花火を上げて解散した。花火の間にねこねここねこにこの後に話したいことがあると耳うちされたので場所を移すことにした。

 グリーンリバー湖。ファンタジークエストでは一番大きな湖で広くてとても静かな場所だ。じっくり話すにはここがいいと思って俺はここを指定した。



ねこねここねこ 私正式に転校することになったから。


ケミカルパンク そうか……。



着いた早々里美はいきなり切り出した。



ねこねここねこ それで今学期は転校しない話だったけど変更になって1月後には転校することになったから。


ケミカルパンク 随分早いな。


ねこねここねこ 何か早めに向こうに行って準備したいんだってさ。



まるで他人事のように言う里見。俺はそれを聞いて一瞬なんとかしたいと思った。こいつの親に直談判でもするか。そんなことを思ったがそれも一瞬だった。まあここまで来たらどうにもならねえだろうな。そこで俺はあることを思いついた。



ケミカルパンク 里美。心配するな。離れていても俺たちはネットで繋がっている。苦しいときどうしようもないときはネットに繋げれば俺たちがいる。俺たちはこれからも一緒だ。


ねこねここねこ ……。


ねこねここねこ そうね。ありがとう。



思わずネット上なのにリアルの名前で呼んでしまったがねこねここねこは突っ込まなかった。ここで里美は初めてネット上で絵文字を使った。里美が初めて使った絵文字は笑顔だった。ネットなので分からないがきっとリアルでもこういう表情をしているに違いない。俺は久しぶりに心温かな気分になった。


ご拝読ありがとうございます。

 諸事情で早めに投稿しました。次回投稿は1月31日を予定しております。よろしくお願いします。

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