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ネトゲ女  作者: kaji
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第十五話「理由」

 チーム対抗トーナメントで「ロボット三原則なんて糞くらえ」を破り、歴史的大勝利をあげたその日、俺とねこねここねこの中の人こと前田里美 (まえださとみ)は俺のアパートであまりの喜びで柄にもなく大はしゃぎしていた。


「イエーイ!」


二人でハイタッチをして喜びを分かちあっていた。


「やったな! おい!」

「うん。なんだかうれしい。たかがゲームなんていえばそれまでだけど今までこんなことなかったからすごくうれしい」


そう言うと里美は愛用の飲むキャラメルを一気飲みした。里美の目はいつもの死んだ魚のような目ではなく昔の少女漫画のようなキラキラした目で満面の笑みだった。そういえば昔はよく俺が遊びに誘うといつもこんな顔をしてたなあと俺は少し昔を思い出していた。彼女のきらめく笑顔の源はきらめく歯だった。思わず○リアクリーンと言ってしまいそうだった。


「○リアクリーン」

「何なのそれ? 気持ち悪い……」

「勝利の雄たけびだ。気にするな。それよりも」


俺は更にとっておきの飲むキャラメルを冷蔵庫のCドライブから出して部屋の真ん中のちゃぶ台の上で里美と乾杯した。俺と里美はそれから飲むキャラメルとキャラメルのスナックで先ほどのチーム戦の反省会をした。俺が相手のスモークの中に突入したところを熱く語っていたところで里美がいきなり声のトーンを下げてこんなことを言い出した。


「ねえ。私がなんでこの提案受けたか分かる?」

「ん? 提案って俺がチーム対抗戦を一緒に出ようって誘ったことか?」

「それしかないでしょうが! で? なんでか分かる?」

「なんでって第10話での俺の話に感動したからじゃねえの?」

「そんなわけないじゃないの? それにそんな昔の話誰も覚えてないわよ!」


里美は思わず両手でちゃぶ台を叩いた。その勢いで飲むキャラメルが飛び散った。ああ。もったいないなと思いつつ俺は布巾でちゃぶ台を拭いた。


「飲むキャラメルなんてどうでもいいじゃないの! それにいつまで飲むキャラメルネタで引っ張るつもりなのよ!」

「いや。普通に拭かないと汚いだろ」


里美はなぜか誰かに向けて怒っていた。俺はこのままだととんでもないことになると思って素直に答えることにした。


「すまんが本当の所なんで里美がこの提案を引き受けてくれたのか分からん」

「そう……」


里美はがっくりとうなだれると自分のパソコンに戻っていった。里美は俺に背中を向けてパソコンのキーボードを叩き始めた。しばらくすると俺専用のノートパソコンからチャットのメッセージが入った音が鳴った。こんなときになんだよと思ったら里美からだった。ちなみにチャットでの里美のハンドルネームは「SATOMIN」だ。俺のは「この店、前ラーメン屋だったよね」だ。



SATOMIN 私正直に話すわ

この店、前ラーメン屋だったよね なんだよ。急にそれになんでチャットなのか説明してくれよ!

SATOMIN 私ね。昔からことあるごとに悠一に助けられてばかりだった。いつも悪いなと思いながらも悠一を頼りにしてたのよ。

この店、前ラーメン屋だったよね ああ。それよりもなんでチャットなのか説明してくれないのかなあ……

SATOMIN 彼氏に振られて私にこのゲームを紹介してくれたでしょ? 私本当はうれしかったのよ。ああ。悠一はまた私を助けてくれるんだなって思って。ゲームなのがちょっとなと思ったけど私は正直なんでもよかった。

この店、前ラーメン屋だったよね ……。お安い御用だぜ。そんなこと気にすんなよ。それよりもなんでチャットなのか教えてくんない?

SATOMIN 私が家から出られなくなった時もチャットで説得してくれたよね? 私また悠一は助けてくれるんだ。うれしいなと思った半面、なぜだか悠一を困らせたくなったのよね?

この店、前ラーメン屋だったよね なんでだよ! 意味がわからんのだが。

SATOMIN 私にもよく分からないんだけどもしかしたら悠一のこと試したくなったのかもしれない。どこまで私を見放さないでいてくれるのか。

この店、前ラーメン屋だったよね それで俺のチームを乗っ取ったのかよ。

SATOMIN ……うん。どうすれば一番悠一が困るのか考えていたら悠一の大事にしているチームを乗っ取るのが一番だということに気が付いたのよ。

SATOMIN 私は色々と手筈を整えてそれで悠一のチームを乗っ取って自分のチームのレッドウィングとあなたのチームのブルーウィングとチーム戦をして勝った。

SATOMIN 私は悠一からチームを奪うことはできたけど結果的には悠一は何も困っていなかった。むしろ前よりも楽しそうにしてた。私はなんだか急に虚しくなったのよね。私、何やってるんだろうって思って。

この店、前ラーメン屋だったよね まあ別に困ったけれども里美がチームを残してくれたから楽しくはやってるよ。



そこまでチャットをした後、後ろで里美が席を立った音が聞こえた。後ろを振り返ると里美が背後に立っていた。里美は先ほどの笑顔からうって変わって捨てられた小猫のような悲しそうな顔をしていた。


「な……なんだよ」

「ごめん。悠一!」


里美は急に俺に向けて謝罪した。俺は何がなんだか分からなかった。


「私、悠一を少し困らせたかっただけなの。それがなぜかチームを乗っ取ることになったんだけど謝って許されることじゃないけど本当にごめん!」


いきなり里美が謝り出したので俺はひどく狼狽した。色々あったけど結果的に色んな人と知り合えることが出来たし、今は楽しくゲームができてるので俺はここで里美を許してやることにした。


「ま。まあ気にしてないとは言わないけどよ。結果的に今一緒に楽しくやってるからいいよ」

「本当に?」

「ああ」

「ありがとう。悠一」


そう言うと里美は俺の手を取って上下にぶんぶん振り回した。俺はこいつがこんなことを考えているとは思わなかったので驚いた。というかなんだこれ。

 里美は俺の手を取ってずっと笑顔でぶんぶん振り回しているのでなんだか俺は妙な気分になってきた。俺は一刻もそこから離れたくなったので里美の手を離した。


「俺、用事思い出したから今日家帰るわ」

「え。だってここが悠一の……」


里美が何か言っていたような気がしたが俺は大急ぎで部屋から出た。途中で「俺の家ってあそこじゃねえかよ」ということに気付いたがもう戻りづらくなったので近くの公園のベンチに座って頭を抱えて時間を潰した。しばらくして自分のアパートに戻ると里美はいなくなっていた。自分のパソコンのチャット欄に里美のメッセージが残っていた。


SATOMIN アホ! ここが悠一のアパートでしょうが。今日はもう帰るね。なんだか変なこと言ってごめんね。とにかくこの先のチーム戦頑張ろうね。おやすみ!


どうでもいいのだが結局里美が俺の提案を受けた理由はなんだったのだろうか。どうも里美の言っていることは要領を得なかった。俺はなんだか無性にもやもやした気持ちだったが無理やりふとんを被ってその日は寝た。




ご拝読ありがとうございます。


 プロットだともうちょっと話しが進むのですが意外と長くなったので今回はこれくらいにします。次回もリアルネタで引っ張ります。


 次回5月24日更新「好きなライターが引退するのって残念ですよね」(仮)俺は愛華と内藤君とでゲームセンターなどに遊びに出かけるのだがそこである人物と出会ってしまいます。


 感想などございましたらよろしくお願いいたします。次回もよろしくしていただけるとうれしいです。


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