第十一話「ある日、アイカ、クマさんに出会った」
今対抗トーナメントのチームのメンバーとか考えているのですがキャラの量が多いのとこれはもうちょっと詰めていきたかったで今回は番外編という形で急遽差し替えました。よろしくお願いいたします。
レッドウィングと組むことになって里美は再び俺のアパートに来るようになった。ちなみに近々レッドウィングとブルーウィングの初顔合わせが決まっている。一回会ってこれからの指揮系統のことなどを話し合おうということだ。
カタカタ
カチカチ
コロコロコロ
俺は今アパートで里美と一緒なんだが基本的に会話は無いので自然と部屋の中はキーボードの音とマウスのクリックの音とマウスホイールのコロコロという音が大半を占めていた。
俺はちょっと居心地が悪いのでヘッドホンで音楽を聴きながらサイトの巡回をしていた。
「またあの漫画が実写化か……。止めて欲しいんだがな」
「……。ねえ」
「おわ! なんだ」
振り返ると里美が俺の背後にいた。最近は背中合わせになるような感じでPCをやっているので振り返らなければ里美が何をやっているかわからないし、俺が何をやっているのかも里美には分からなかった。俺はヘッドホンで音楽を聴いていたので里美の接近には気が付かなかった。まあ今は助かった。何が助かったかはあえて言わないが。
「いや。何やってるのかなって思って」
「情報サイト巡りしているだけなんだが」
「そうなんだ」
「そうだけど」
「……」
「……」
基本的に俺と里美は会話しないので会話が続かなかった。しかし、何でまたこいつは話かけてきたんだろうか。俺から話しかけることはあっても里美から話かけてくることなど今までなかったからだ。なんだか妙な雰囲気が流れた。
「何か用なのか?」
「別に。暇だったから何やってるのかなって思っただけ」
そう言うと里美は自分のPCに戻って行った。その後も里美は「何聴いてるの?」とか「チーム対抗トーナメントのことなんだけど」などと言って話しかけてきた。前はチャットで話してとか言って来てたくらいだったのがどういう心変わりだろうか。
次の日、学校で内藤君とビジュアルノベルはクリック派かオート派のどっちがいいの
かについて話あっていたら里美が挨拶してきた。
「おはよ……」
「あ。ああ。おはよう」
そう言うと里美は自分の席について友達と会話を始めていた。アイツが俺に朝の挨拶をするなんて今までなかった。授業中も里美は起きて真面目に授業を受けていた。何かはわからないが色々とおかしい気がした。それと俺はクリック派だ。どうでもいいが。
昼休み、廊下でケミカルアイカの中の人こと桐原愛華に会った。廊下の端にいるのが見えたのだが俺に気が付くとこちらに向かってひょこひょこと駆けてきた。相変わらず愛らしいお姿をしておられた。思わずにこやかな笑顔になってしまった。
「先輩あざす。これからお昼ですか?」
「ああ。そうだ。それと何だ。その挨拶は?」
「えとですね。今友達の間で流行ってるんですよ。先輩もどうですか? 使って見てくださいよ」
愛華の外見からは恐ろしく似合わない気がしたがそこは突っ込まないことにした。あと俺はそんな挨拶は使わないからな。使うなら絶対「ファンタジわ」だ。
「お前って俺のこと先輩って呼んでたか?」
「ああ。そのことですか。ひどいじゃないですか。先輩! 先輩って名前中村俊介じゃないらしいじゃないですか?」
「お前それを誰に聞いた? う……」
里美が俺たちの近くを通りかかった。なぜかニヤニヤしていた。俺は一瞬絶句してしまった。まさかコイツが言ったんじゃないだろうな。しかし、愛華と里美は面識がないはずだしな。違うか。
「先輩どうしました? あらお友達ですか?」
「いや。全然知らない人だ。見たことも聞いたことも無い!」
「そこまで否定しなくてもいいんじゃ……」
まさかあれがねこねここねこの中の人だとは言えなくてなぜか俺は全力で否定していた。
「ああ。そうだ愛華。今日の放課後暇あるか?」
「え! 何ですか? デートですか?」
「違うから。それと近い。離れてくれ」
「そんなにすぐに否定しなくてもいいじゃないですか」
俺が即座に否定すると愛華はなんだかしょんぼりしていた。
「愛華に会いたいっていう人がいるんだがどうだ?」
「んむ? 誰でしょうか?」
「惨劇のクマさんだ。知ってるだろ?」
「え! 惨劇のクマさんって惨劇のクマさんですよね」
「そうだ。惨劇のクマさんだ。アイツ実はここの生徒なんだよ。というか俺のリア友だ」
「なんとなくそんな感じがしてたんですけどやっぱりそうなんですね。ここの生徒だっていうのは驚きましたけど」
「で。どうだ? 会うか?」
愛華は顎に手を当てて考えていた。まるで買い物中の主婦のような仕草だった。なんでこいつはいちいち愛らしく見えるんだろうか。
「いいですよ。会いましょう。悪い人ではなさそうですし。」
「じゃあ。放課後にな。屋上まで来てくれ」
「はい! またです」
俺と愛華は元気に挨拶をして別れた。その後、惨劇のクマさんの中の人こと内藤君にアイカと会えることになったと伝えると天にも昇るようなガッツポーズを見せてくれた。「何着て行こうかな」とかふざけたことを抜かしていたが、今日の放課後だと伝えてやると内藤君は「どうしよう。どうしよう」とうろたえていた。俺は「ありのままのお前でぶつかれよ!」と叱咤激励してやった。
放課後、俺は愛華を連れて屋上に向かっていた。内藤君には先に屋上に行ってもらっていた。
「どんな人なんでしょうね。なんだかわくわくします」
「まあ大したことないぞ。ただのエアホッケー馬鹿だ」
「エアホッケー? その人エアホッケーするんですか?」
「ああ。そうだけど。それが何だ?」
「いえ。なんでもないです。そうですか。エアホッケーですか」
俺は変な所で食いついてきた愛華におかしな印象を受けた。しかもなんだか愛華は顎に手を当てて何かを考えていた。屋上のドアを開けて外に出ると強風が俺たちを迎えてくれた。さっきまでこんなに風は吹いていなかったんだがおかしいな。見ると一人の男がこちらに背中を向けて立っていた。もちろん内藤君なんだが内藤君は強風で揺れる長髪をたなびかせてこちらを振り向いた。
「おお。内藤。連れてきたぞ。これがケミカルアイカの中の人だ。桐原愛華って言うんだ。どうだ。可愛らしいだろ?」
「……」
「……」
「ん? どうした?」
「神速の内藤……」
「はあ!」
愛華はいきなり無言になったかと思うとおかしなことを口走った。神速の内藤だって。なんだそれは。
「君はカウンターの桐原さんじゃないですか。君がなんでここにいるんですか」
「私はクマさんに会えるっていうから来たんですけどまさかあの神速の内藤がクマさんだったなんて」
「それはこちらのセリフですよ。カウンターの桐原さん」
なぜか内藤君と愛華との間で火花が飛び散った。愛華がエアホッケーをやっていたことにも驚いたが内藤君と面識があったことにも驚いた。それと「神速の内藤」と「カウンターの桐原」だって。誰か俺に説明してくれ。
2人とも落ち着くと俺に説明してくれた。どうやら内藤君いきつけのゲームセンターで勝ち抜けエアホッケーが流行っているらしくてそこで何度か愛華と対戦していたということであった。それで内藤君はそのエアホッケーの強さから「神速の内藤」と呼ばれて恐れられているらしい。その対抗馬とも言える「カウンターの桐原」はその絶妙のカウンターで「神速の内藤」に唯一まともに相手ができる存在らしい。俺はこの町でこんなにエアホッケーが流行っていて、こんな熱いバトルが繰り広げられていたなんてしらなかったので大分面食らっていた。というかなんだこれ。
「私の27戦5勝6敗16引き分けですね。私は今度こそ勝ち越したいと思っていたんですけどこんな所で会えるとは思いませんでした。ぜひ対戦お願いします」
「分かりました。行きましょうか。場所はいつものゲーセンでいいですね」
「はい。そこでいいです。行きましょう」
愛華と内藤君は俺を置いてゲーセンに向かおうとしていた。どうでもいいが引き分けが多すぎないか。エアホッケーってそんなに引き分けが多いゲームだったかな。
「おい! 俺を置いてくのか! 行くなら俺も連れて行けよ!」
「岡崎君は弱すぎて足手まといです。付いてこないでください」
「なんだと! 内藤コノヤロウ。おい。愛華ひどいと思わないか?」
「先輩。これは私と内藤さんの真剣勝負なんです。遊びじゃないんです。付いてこないでください」
「……」
「では行きましょうか。岡崎君。ではまた明日」
「先輩。また明日です」
愛華と内藤は2人で俺を置いて行ってしまった。いつのまにか風は止んでいた。俺はなんだか分からない敗北感を感じていた。しばらく屋上で俺は今までの一件が処理しきれずしばらく立ち尽くしていた。
「そうだ帰ってファンタジークエストやろっと」
俺はこのことはなかったこととして処理することにした。そうだそれがいいに違いない。それと内藤君と愛華の対戦がどうなったかはそれはまた別の話だ。
注 愛華と内藤君の対戦は本編とは全く関係ないので割愛させていただきます。
ご拝読ありがとうございます。書いていてなんだかおかしなことになってきたなと思いましたけど、自分は楽しかったのでこのまま載せてみました。
次回更新は4月26日です。次回第12話「死のH組」(仮)です。次回は話を進められるようにしたいと思っていますのでよろしくおねがいいたします。ご拝読していただけた方どうもありがとうございます。
コメントなどありましたらよろしくお願いたします。効して欲しいなど所がありましたら今後の展開に活かしていくこともできますのでよろしくお願いいたします。