74 拮抗という名の段違い
「………やはりハルに繋がらないなー」
俺は何度かメッセージを試しているのだが、ハルと連絡が一切取れない。
何かあったのか、少し予定を繰り上げよう。
「ミルア行動に移るぞ!」
「了解、気を付けてねエンー」
「ミルアもな、何かあったら直ぐに撤退しろよー」
アルドラクで手に入れた情報だと、サンベルに潜っているガルシアの手先は結構な数がいる。
俺とミルアが狙うのはその中でも権力の大きい二人。
別々に探りをいれる事にした。
(今頃ジェリカは必死に王様を説得しているんだろうなー、会わないようにしないと)
王城を見上げてふと立ち止まる。
なぜなら俺のターゲットもこの中にいるからだ。正直気乗りはしない。
立派な門を王国兵が警備している。
その警備兵と笑顔で絡んでいる男が。
俺はこの男の顔を知っている。
「やあレルビン!元気そうだなー?」
「……エンなのか?」
とても驚いた顔でポツリと言葉を呟いた。
レルビンとは本当に久しぶりだ、驚くのも仕方がない。
「レルビン大隊長統括になんて口の聞き方をしているのだ!無礼者!名を名乗れ!」
警備兵が俺に怒り散らかしている。
それにしても大隊長統括?随分出世したんだなー。
「彼は知り合いだ、エンこっちに来てくれ!」
レルビンに案内され、王城の方に向かう。
すんなり警備兵を突破出来た。
「良いのか部外者を城に招き入れてー?」
「エンなら構わないさ!それに今の私は、城の応接室位なら自由に入る事が出来る権限を持っている」
「偉くなったな大隊長統括ー!」
「よせ!全てはエンにハル、それにケイジがいたから今の私があるのだ」
レルビンの言葉の大きさは最初と最後でとても差があった。
俺たちは城内の応接室で腰をかけて話を始めた。
「本当に再会が心から嬉しいと思っているエン!この数年ずっと待っていたのだ!」
「何年ぶりだろうな、あの日から会って無かったよなー」
「その通りだ、今日はハルはいないのか?」
「ああ、別用でサンベルには来ていないー」
「そうか、それは残念だ!聞きたい事が山ほどあるのだか良いか?」
「その前に客人にお茶でも出したらどうだレルビン?」
「そうかすまない!私はこういう些細な所が昔から気付かないのだ!」
二人は微笑みを浮かべた。
レルビンは不器用ながらもお茶を出してくれて再び正面の席に戻った。
「さあ話の続きだエン、聞かせてくれるな!?」
◇◇◇◇◇◇◇
「何故国王に取り次いでくれないのですかローマン!」
「そう声を荒立てるなジェリカよ、私が話を聞くと言っておるのだ不満か?」
バンッ!
机を叩き体を乗り出してジェリカが言う。
「ローマン貴様はいつもそうだ、私の話をまともに聞いたことがないくせに軽口ばかりで話が進まん!」
「何度も言うがジェリカ、お前が嫁ぐ相手など私以外有り得ないからだ、ソナタの美と力に私以外に相応しい者はいないのだ」
ジェリカ・シンエンベルトとローマン・ドグダルシャンの間柄は幼なじみだ。
幼少の頃から互いを知っており、今では各国を代表する顔である。
「まだ昔の戯言を引っ張っているのか?それでも私よりも強い者と言っていた筈だがな」
「ああその通りだジェリカ、お前が私に一度でも勝ったことがあったかな?この世界で私より強い者がいたら紹介して欲しいぐらいだ」
「フン、自惚れるなローマン!世界は広いぞ、貴様より強い者を何人も知っている、それに私自身も含めてな!」
手を叩いてローマンは笑う。
「面白い事を言う、今の私の力はあの賢者すら超えている!何人も?その中にはもしかしてバハムートや魔王が入っているのか?」
「狭い世界でしか生きてないから分からないのだ、私が知っているのは人にエルフ、それに魔人だ」
「ハッハッハ!人にエルフだと笑わせるな、お前の言うことが本当なら噂位耳に入る筈だ。魔人が現れたのは知っているが、何も恐れるに足らん」
「笑っているが良い、けど恐れるに足らんとはどういう事だ?魔人の強さを知っているのだろう?」
ローマンはストレージから剣を取り出した。
その剣の力の大きさは、実力者が見ればすぐに分かる程だった。
「こいつは魔剣の癖に『魔』に対して絶大な力を発する、それこそ無敵と言って良い程にな」
ローマンはジェリカに見せびらかす様に説明をする。
「何故こんな力の魔剣が存在するか分かるか?人の手では造る事など出来ない剣を!」
「…考えられるのはダンジョンか」
「正解だジェリカ!しかもただのダンジョンではない、勇者パーティーのみが歴史上唯一攻略したと云われる『完全攻略型』の戦利品だ」
「完全攻略型……、それは素直に称賛しよう」
「おそらく今後現れないのではないかとすら思うよ、完全攻略型を攻略した者なんてな」
◇◇◇◇◇◇◇
「ダンジョン?ああ、ひたすらレベル上げる為に探し回ったなー」
「見つける事が出来たのか?」
「案外ダンジョンって多いんだよ、探す場所のコツさえ分かればすぐに見付かる」
「そうなのか、けれど完全攻略型なんかはやはり稀なんであろう?」
「確かにあれはレアだなー、確率でいうなら1/5だなあくまで体感だがー」
「1/5って、どんだけダンジョンを攻略してきたんだエン?」
「ちゃんと数えてないけど、『50』位だ」




