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5 悪魔が佇む日用スーパー

 小鳥のさえずりを穏やかな風が木々を揺らし指揮を執る。()()()より前だとしたら外で散歩してから朝食をとるだろう。ゴブリンの群れに突撃して食料を確保するなんて欠片も想像しなかったはずだ。


 しかし今、それこそが『現実』だ。


「ケイジーそろそろ起きろよー」コン


 エンがケイジの額を軽く小突く。


「今日は遅番だからもうちょい寝かせろ」グー


 ソファーの中に潜ろうとするケイジ。


「お前はもぐらかっ」バシ

「おーエン!おはよう!」


 眠い目を擦りながら洗面台に向かい、水の入ったペットボトルで顔を洗う。


 今のこの世界では、水はとても貴重だろう。

 たまたま近場に小川があったのは、ステータスのLUKに関係があるのだろうか。


(誰かおしえてくれないかなー)



「待たせたエン!行くか!」


 半袖短パン姿で、右手には修学旅行で買ったと思われる木刀。頭には現場仕事で使っていたであろう工事中の記載のあるヘルメット。


「見違えたよ、まるで戦士だー」

「だろ!けど木刀はエンが使え!俺は何時でもこの拳だけだ!」

「そうか…それじゃお借りする」


(危なくなったら逃げるからまあいいか…)


 エンとケイジはアパート正面のスーパーへ歩いて向かう。いつもの狩り場は逆方面であるため、ほぼこちら側は来たことがない。慎重に事を運ぶべきだろう。


「ケイジ!昨日も言ったが今回はあくまで偵察だぞ」

「危なくなったら直ぐに撤退、チャンスがあれば多少の食料を頂く」

「ああ!分かっている!」

「それと()()()にだけは近づかないだろ!」

「いや、見つけた瞬間撤退だよ」

「了解だエン隊長!」


 アパートからスーパーまでの距離は目測で500メートル程。明らかにスーパーがあった場所が木や草で盛り上がっている為分かりやすい。慎重に木と木の間を縫い進んでいく。


 地面は少し湿った土と雑草で覆われ、所々に見たことのない奇妙な花が咲いている。

 ケイジが前方を、俺が後方を特に注意する手筈だ。そんな中、ふとケイジの足下を見ると


(おい……こいつなんでクロックスなんだよ…)


 途中、ゴブリンやゴブリンベビーが数匹いたものの気付かれず後50メートル程まで接近できた。


「そろそろだぞエン!」


 少し要り食った藪を抜けると拓けたスーパーの駐車場が見えた。


「このまま進むと丸見えだな、迂回して近付こうー」

「うがい!?風邪気味か!?」

「………ちょっとだけな、だから右側の藪を進もう」

「了解だ大班長!」


 藪の中に身を隠し、ゆっくりと本丸に向かう。

 駐車場ではゴブリン達が学童の様に遊んでいる。およそ15匹程だろう。1匹明らかに体格の良い奴がいる。


(おそらくホブゴブリンだろうな……)


 "ゴピキャギャギャー"ガヤ


 大声と同時に俺達のいる逆側の藪から、ホブゴブリンの2倍はあろう巨大な奴が買い物カートを押して現れた。

 カートの中には縄で縛られた女の子が乗っている。

 俺とケイジは目を会わせた。


「「()()()だ」」


(あれは間違いなくゴブリン達のボスだ)


(どうする…撤退か?けど女の子は?考えろ)


 巨大なゴブリンはカートの中の女の子を駐車場真ん中に投げ飛ばした。直ぐに他のゴブリン達が集まり囲んでいる。

 投げ飛ばされた女の子は痛みと衝撃で目を覚まし、絶望の表情で涙をこぼしている。


「……だ れか……たす…け…て」


 少女の微かな言霊が聞こえた気がした。


「ケイジ、間違いなく死ぬだろうけど手伝ってよ」

「見過ごして生きていく方が死んでる様なもんだろ!行くぞエン!」


 二人は勢い良くゴブリンの群れに走り出した。


「ケイジは中位のと小さいやつ全部!」

「俺は何とかデカイのを引き付ける」


 そう言ってエンは一直線にデカイ奴の元へ走った。


「逆だろ!良いとこ取りか!?」フッ

「絶対死ぬなよエン!!」


「おらっ!小鬼どもかかってこんかいっ!!」


 大声で叫ぶケイジ。見事にゴブリンどもは群れをなして襲いかかった。


 デカイ奴との距離が狭くなるエンはゴブリンの頭上に表示された文字に気付いた。



『ゴブリンロード LV86』



(だと思ったよ……俺にとってはまだ始まりの町だぞ)


「ギャーピギャ」ブン



 ゴブリンロードが背中のこん棒を装備し、エンに降り下ろす。

 しかしエンには当たらず、コンクリートを叩いた音が響く。スライディングで初撃をかわしたエンはそのまま女の子を抱え距離をとる。


(さーて、ここからどうするかなー)


「俺が時間を稼ぐから逃げるんだ」


 エンは女の子を降ろし前に立ち、振り返らずにそう告げる。目線はゴブリンロードから一時も離さない。


「しかし……あなたは?」


「君が逃げたのを確認したら俺も逃げるよ」

「だから早くっ!」


 エンは木刀を右手に構え、ゴブリンロードに走り出した。


(このまま木刀を突き刺してやる)


「ファイヤボール」ヒュ―


 エンの後ろから飛んできた小さな火の玉が、ゴブリンロードの顔に命中した。


(なんだあれ、けど隙が出来た)


「くらえーーーー」ドサ


 エンの木刀はゴブリンロードの首元に見事に突き刺さった。

 ゴブリンロードはそのまま後ろに倒れ、動かなくなった。


(勝ったのか……)


(そうだ、ケイジと女の子は?)


 ポンポン。エンの肩を誰かが叩く。

 エンはすぐに後ろを向き身構えた。


「すげーなエン!良く倒したな!」


 溢れる様な笑顔でそう話しかけたのはケイジだった。

 そのとなりにはさっきの女の子もいる。

 一気に力が抜けたエンはその場にしゃがみこみ、辺りを見渡した。

 ケイジが倒したであろうゴブリンの山が形成されていた。


「お疲れエン!」


 ケイジはエンの元に近より拳を突きだした。


「ああ、本当に疲れたー」ゴン


 エンの拳とケイジ拳が音をたてた。





 -ゴブリンロード LV86-


 HP :38000

 MP :50

 ATK:48000

 DEF:36000

 LUK:70


 δ ゴブリンの王。狂暴、残虐、破壊の化身。

 レベル50を越えると王都の騎士団3大隊に匹敵すると言われている。



 -ホブゴブリン LV30-


 HP :8200

 MP :20

 ATK:12000

 DEF:10000

 LUK:35


 δ ホブゴブリンがいるとゴブリンに集落が出来る。

 何十年単位でたまに生まれてくる。




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