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67 空白の歴史

 道の真ん中で休憩を取っている。


 草原を見渡すと、倒しきれていないゴーレムがオブジェの様に止まってる。

 俺は気付いた、俺とティナが戦っていた場所にしかゴーレムがいないということに。

 ハルさんはあの量のゴーレム全て倒していたんだな……。なんなら多分ティナの方のゴーレムも手伝ってたんだろう。

 やっぱり凄い人だなー。



「じゃあ休憩終わり。詮索再開しましょう。」

「はい、周囲を良く調べましょう。それと草原には入らない様にしよう!」

「はーい!」


 時間を掛けてゆっくり調べながらダムを一周したが、ダンジョン攻略に繋がる情報は手に入らなかった。



「またここに戻ってきちゃったねー」


 ティナの言うこことはゴーレムを相手にした後に休憩した場所だ。



「……やはりダムに何かあるんだろうな」


 正直嫌な予感がしていた。あれには絶対に何かあると。


「そうね。覚悟を決めましょう。」


 ハルさんの目付きが変わった。



 俺達は円形ダムの綺麗に整えられている階段を降りた。

 降りている最中は何も起こらなかった。


「何も起きないねー、やっぱり泳ごうよ!」


 ティナが屈んで水を手でピチャピチャしている。その直後にダム全体が揺れ始めた。


 ゴゴゴゴゴォ


「なんだ、何が始まるんだ?」

「エルくん。ティナちゃん。気をつけて。」

「地震?ビックリして靴濡れちゃったよー」


 ダムの水溜まり中央付近がゆっくり盛り上がっていく。皆その光景に目を奪われる。


 ゴゴゴゴゴォ………パシャッーン!


 水が円柱状に盛り上がったてっぺんから女の人が飛び出してきた。いや、良く見ると下半身は人ではなかった。


「……あれはマーメイドなのか?」

「大昔に滅んだはずの人魚族。まさかダンジョン内に生き残りがいたなんて。」

「すごーい綺麗な人!絵本で見た通り!」


 俺は相手の出方を伺った。



「初めまして皆様、私は人魚のアリシャです」


「…………………………………」


「ダンジョンを攻略したいですか?」


「私はハルと申します。このダンジョンについて知っている事があれば教えて頂けますか?」


「ハルさんですね、とても強大な力を感じます。」



 小さい頃に聞いたおとぎ話を思い出した。

 人魚族はとても不思議な魔法を使うと。


「アリシャ!先に聞かせてくれ!お前は俺達の敵か?」


「私は敵ではありません、味方でも。ただの切り取られた歴史の1ページなのです。」


 その言葉から不思議な重みを感じた。



「歴史の1ページ?アリシャちゃん敵じゃないならこっち来てよー!お話しよ!」


「すみません、私はここから動くことがで来ないのです。歴史の1ページとは、そのままの意味なのです。人魚族が滅びゆく瞬間、最後の場面がこのダンジョンなのです。」


「………続けて。」


「皆様の知っている歴史だと人魚族は滅んでいますね。おそらく魔王に滅ぼされたと伝えられているのではないでしょうか。」


 確かにそうだ。人魚族の不思議な魔法に恐れた魔王が人魚殲滅を企てる。とても有名なおとぎ話だ。



「大筋合っています。けれど1つだけ異なる真実があります、それは私がまだ死んでいないと言うことです。人魚族はまだ滅んでいないのです。」


「魔王の襲撃があった日、私はそこにいました。無限とも思える数のゴーレムの軍勢が、同胞を次々と殺していく。そんな中で最後まで残ったのは私と人魚族長であった母でした」


「母は私を守る為、最後の力で空間転移魔法を使用しました。」


 古代魔法と呼ばれる程、希少魔法『転移』。

 時空間をねじ曲げ強制的に出入り口を作る魔法だ。

 更にその上、伝説級の魔法『空間転移』。

 転移の完全上位魔法で、出入り口を設定しなくて良いため自由自在だ。



「そのお陰で私は生き延びることが出来ました。しかし、母が私を飛ばした先が偶々ダンジョンでした。それに死ぬ寸前で命を絞りだして魔法を発動した為、文字通り空間ごと転移させてしまったのです」


「………それで切り取られた歴史か」


「はい。母が飛ばした空間とダンジョン空間、それにまた違う世界の空間が混ざり合ったのが今この場所なのです」


 何となく見えてきた。

 要するにダンジョンという未知の力が、アリシャの母が空間ごと飛ばした『過去』を継続させているのだろう。

 過去のまま現在まで時間が止まっているんだ。


「どうかお願いします。無限のこの時を終わらせてくれませんか?」


「終わらせる事がダンジョン攻略に繋がるんだろうけど、具体的にどうすればいいんだ?」


 俺はアリシャに質問を投げ掛けた。


「………私を殺してください」


 

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