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64 色付くパレット

「すいませんハルさん、まさかあそこまで暴走するとは思わなくて」


 テントの外で俺は謝った。


「気にしないで。知ってたけれど本当に素直で可愛い子ねティナちゃん。」


「戦闘中とかは違うんですけどね、俺なんかより冷静で頭も切れるし凄い奴なんです!」


「お互いを良く分かっている良いコンビね。」


 ハルさんの言葉に少し恥ずかしくなった。


「さっきティナちゃん。私を守るって言った時に小さく『エルも』って言ってたよ。」


「……あいつが1番弱いくせに昼寝までしやがって!」


「フフ。良いのよ私の前では悪役やらなくても。」


「えっ?悪役?」


「ティナちゃん亜人でしょ。兎さんかな。隠しているみたいだったから深くは聞かないけどね。」


 俺は内心ドキッとした。


「気づいていたんですね、ハルさんに隠そうとしてた訳ではないんですが!前にその事でティナに嫌なことがあったので……」


 兎の亜人は奴隷商に狙われやすい。

 過去にティナが拐われた事があった、何事もなく助けられたから良かったが、その時から亜人であることを隠してきたのだ。


「優しいねエルくん。私からはもうこの話はしないから安心して。けど1つだけ教えて欲しいの。」


「はい、どんなことでも聞いてください!」


「ティナちゃんが頻繁にお腹が空いたり眠くなっちゃうのは兎さんの習性なの?」


 兎には薄明薄暮性、つまり外敵に襲われない為に早朝や夕方に活動的になるという特徴がある。

 ティナが明るい内に眠くなるのは百歩譲って仕方ないとしても、食欲は多分関係ないだろうな。


「おそらく関係ないです、自由奔放の性格もティナ自身の個性です……。」


 ハルさんは笑顔で笑い声を漏らしていた。



「じゃあエルくん。特訓がどれぐらいの時間行われるか分からないからまずはこの殺風景を何とかしましょう。」


 話は一転して環境造りになった。

 精神を鍛えると言う意味では良い場所かもしれないが、一人でこの場所にいたら間違いなく鍛える所ではなく崩壊してしまう。

 ダンジョンの独特の雰囲気も混ざり、『色がない』というのがこれ程にも怖いんだと学んだ。


火の玉(ファイアボール)


 俺はこの空間の広さを知るために下級魔法を上下左右に放った。

 下はもちろん魔法が足元で弾けたが念のためだ。

 なんなら少し焦げた痕がある足場に安心感さえ覚えた。


 次に上だ、床の様に魔法が弾ければ天井が有ることになるのだが。


「………そのまま落ちて来たな」


 そこまで魔力を込めずに放った魔法は約20メートル程でUターンし落下を始めた。

 天井はないのか?あるとしても相当上ってことだな。


 続いて左右だ。

 両手を伸ばし互いに同等の魔力で火の玉(ファイアボール)を放った。

 これも壁にぶつかる事なく緩やかに下に落ちていった。距離にして約20メートルだ。


「ならもう少し力を込めるか」


 先と同様に両手から魔法を放った。

 今回は魔力をしっかりと込めての挑戦だ。

 結果は壁と思われるものには当たらずまた下に落ちていった。距離にして約100メートル程だ。


「ハルさん、この空間多分相当広いですね」

「そうみたいね。見てたけど不思議な感覚だったわ。」

「奥まで行ったら迷子になるかもしれませんね」


「エルくん。良いアイデアね。」


 ハルさんの目が教官モードに変わっていた。



「じゃあ頑張ってね。」ニコ


火の玉(ファイアボール)


 ハルさんから言われた訓練内容はこうだ。


 今いる場所からひたすらに真っ直ぐ、魔力が空になるまで真っ白い地面に焦げ痕を付ける。


 以上だ。


 ハルさんは魔法で俺の動きを把握しているらしく、動きが止まったら拾いに来てくれるとのことだが………想像以上に地味だ。

 正直戦闘訓練とか派手なのをイメージしてたからなー。


「魔力を空にしてから本番って言ってたけどなにするんだ」


 俺は内心不満を抱えながら作業を続けた。



「445…446…447……448……449」


 大分遠くまで進んだなー、テントが小さく見えてきた。

 まだ魔力切れをおこしてないけどそろそろ時間の問題だな。



 "ビビビ"


「エルくんの魔力が尽きたわね。」



 コツコツッ!


 足音が近づいてくる、しかし魔力が空の為その場に這いつくばっている俺は振り返る事すら出来ない。


「エルくん。おまたせ。」


「ハルさん、すいません1歩も動けないです」


「魔力切れは初めての経験?」


「はい、いつもコントロールしていたつもりなので」


「良かった。1度拠点に戻りましょ。」


 ハルさんは俺をおぶりテントまで運んでくれた。とても良い匂いがした。


「魔力を空にしたことで自分の総魔力量が分かったわね?しっかり把握しておいてね。」


「はい!」


 魔力切れ=戦闘不能。それは戦場では『死』に繋がる。

 俺は自身の魔力量をコントロールしているつもりだったが、実際に空になるまで魔力を使い続けた結果、本当の魔力量が自分の認識と大分誤差があった。


「自分を知る事……そんな当たり前が俺は出来てませんでした」


「強くなればなる程、誤差は生まれるの。けれどそれを把握しているかどうかで戦況が変わる場面ある。特に力が拮抗した相手とかだとね。」


「なるほど、良く覚えておきます!」


 感心しているとハルさんが俺に何か飲ませてきた。


 ゴクゴク


「……っんはぁー!ハルさんこれは?」


 動かなかった体が力を取り戻した。


「エン特製の魔力回復薬よ。」ニコ


 確かにさっきまで空だった魔力を感じる、それどころか少し魔力量が増えた気がする。


「ではエルくん。2回目いってらっしゃい。」ニコニコ


 ハルさんは笑っているが目は教官、いや鬼教官のそれと同じ物に見えた。



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