62 蝮数のピース
「少年少女よ、利き手をワシの前に出すのだ。」
カーリー族長は俺とティナに向けて言った。
俺は左手を、ティナは右手を差し出した。
カーリー族長は両手で俺達の手を確認した。
「少年、名は何と言う?」
「はい、エルです」
「良い剣士の手だな、流派も上流綺麗な型が見える。毎日剣を降っておるな良き良き」
「ありがとうございます」
手を確認しただけでそこまで分かるのか。
伝説と呼ばれてる訳だな。
「少女よ、名は何と言う?」
「私はティナだよー!」
「ほっほ!ティナは魔法使いだな?」
「すっごーい!何で分かったのー?」
「マメ1つない綺麗な手だ」
これは俺でも分かる気がした。
「ではエルには剣を、ティナには杖をワシが尽力すると約束しよう」
「わーいありがとうおじいちゃん!」
「おじいちゃんか、ワシも年を取ったな」
「フフ。生涯現役ですよカーリー族長。」
「ほっほ!若いのは老人に無茶を言う」
本当にあのカーリーに俺の剣を造って貰えるんだ。やばい、冷静さを保てなくなりそうだ。
「けどおじいちゃん、ハルちゃん、ティナたち本当にお金ないのに良いの?」
「心配しないで。素材もお金もエンから預かっていますから。だから後でお礼言ってあげてね。」
「うん!いっぱい言うよ!おじいちゃんヨロシクね!」
するとハルさんがストレージから素材を取り出した。
「カーリー族長。これでお願いしますね。」
「ほっほ!鍛冶師としてこれを扱える事は大変名誉な事だ!小僧とハルには逆に感謝しておる」
黒っぽい宝石?の様なものや鋼とは違う光沢の凄いものなど結構な量をハルさんは渡した。
どれも見たことのないものだらけだった。
「ハルさん、気になったので教えて欲しいのですがあの素材はなんですか?」
「あれはアダマントやミスリル。それにダマスカス鋼にオリハルコンなどね。」
「………………………………………」
俺はあと少し戻ってくるのが遅かったら死んでいただろう。
衝撃を超える衝撃で息をするのを忘れていた。
エンやハルさんは桁違いなのは分かっていた事だかここまでとは思ってもいなかった。
「なんか全部美味しそうな名前だねー」
「フフ。私も最初に聞いた時はティナちゃんと同じ事を考えたわ。」
「……………………………………………………」
これ以上深く聞くのは止めよう。
いくつ体があっても衝撃で持たないよ。
「ではワシは作業に取り掛かる!ハル、三日程時間を貰うから適当にふらついておれ!」
「お願いします。また後で来ますね。」
「「よろしくお願いしましす」」
俺たちは族長の工房を後にした。
地上に向かう最中ハルさんに聞いてみた。
「ハルさん、待機の三日間で行きたいところがあるんですが!」
「分かってるわ。ダンジョンでしょ?」
「はい!お願いします連れていってください」
「そうね修行も含めて攻略しましょう。」
「ありがとうございます!」
遂に念願のダンジョンに挑戦出来る。
こんなに嬉しいことは……最近だといっぱいあったけどそれ以上に嬉しい。
「でもハルちゃん先に行くとこあるでしょー?」
ティナが頬を膨らましてハルさんに絡む。
「えっ?何だっけティナちゃん?」
「もー!ドワーフさんのご飯はー?」
「「アハハハハ」」
ドワーフ族の料亭的な場所でご飯を食べてからダンジョンに向かうことになった。
◇◇◇◇◇◇◇
荒野の一角に大型バイクを停め、休憩している二人組。
「やっぱこれだと速いねー楽チンねー!」
ミルアがバイクを指差しそう言った。
「そうだなー、サンベルだとあと少しで着くな」
「けどエンが転移魔法使ってくれればもっと楽チンなんだけどねー」
ミルアがチラッと上目遣いでエンを見る。
「あれ結構難しいんだよ、繊細過ぎる魔法だから少し間違えただけで何処か違う場所飛ばされるしー」
「エンでも難しいなんて流石は古代魔法と呼ばれるだけはあるねー」
「ああけどあの時、ケイジを連れ去った奴は転移を完全にコントロールしてたよな?」
「うん、魔法陣無しの無詠唱なんてあれは本物の化け物だよー」
……やっぱりか、俺はミルアにかまをかけたが見事に引っ掛かってくれた。
「あの時、王都で待機の筈のミルアが何で知ってるんだー?」
「………え?……あっ…違うよ王都を散歩してたら迷子になって偶々だよ別にエンたちが探してたケイジ君を見たかったとかじゃないんだから」
あたふたしながら早口で言い訳するミルア。
一通り言い訳が終わると一呼吸置いて
「ごめんなさいエン」
ミルアの物体以外の変身は俺でも正確に気付く事が出来ない。それほど優秀過ぎるスキルなのだ。
多分向こう側にも気付かれてはいなかったと思うが、しっかりと叱った。
「けどねエンこれだけは分かって欲しいんだけど、エンとハルが想っている救いたいって気持ちは、もう私も本気で共有してるんだからね」
「それは伝わってるよ、でも言うことは守れ」
「うん、もう勝手はしないよー」
下を向いて落ち込むミルア。
「けどありがとうミルア」
「うん!」ニコ
笑顔が戻ったところで改めて聞いてみた。
「ミルアは奴をなんだと思う?」
「エンが一番分かってると思うけど、あれは人の形をした魔の化身」
「やはりそうだよな、分かってはいたんだけどミルアに聞いて確信に変わったよー」
俺は奴の声に聞き覚えがあった。
それはケイジが魔人に堕ちた日に、初めて使ったメッセージで微かに聞こえたケイジの声とその話相手の声。
本来のメッセージだと周囲の音など聞こえる訳がないが、あの時の俺は無我夢中でメッセージに特殊スキルを重ねていたのだ。
「あの仮面の奴は『魔王』だな」




