61 地面下の技神
「エル右から3体来てるよ!」
「了解ー!」
岩と同等に硬いゴーレムを豆腐を切るかの如く綺麗に斬り刻むエル。
「まとめて行くぞ!ティナ付与頼む!」
「はーい!重力軽減」
体が嘘みたいに軽くなる、まるで自分が風で構成されているんじゃないかと錯覚するほど。
ザンッ!スパッ!ザシュッ!
「これで最後だーー!!」
一瞬の内に20体はいたであろうゴーレムをエルは倒しきった。
驚くべき事はエルの技術もだが、使用していた剣が刃こぼれ1つしていないことだ。
「やっぱり凄いな剣!あの硬さを誇るエメラルドゴーレムをこんなに簡単に」
「私の魔法杖も凄いよ!少しの魔力で強い魔法バンバン使えるんだから!」
二人は驚きと喜びではしゃいでいた。
「気に入ってくれた見たいでよかったわ。」
「気に入った所じゃないですよ!もう家宝として永遠に奉りたいぐらいですよ」
「フフ。それだと使えないじゃない。」
「私はこの杖と毎日一緒に寝るー」
ハルの笑顔が途絶えない。
本気で喜んでいるからこそ周りも嬉しいのだ。
-数時間前-
「エルくん。ティナちゃん。あと少しでドワーフの集落に着くわ。」
「長かったなー、私お腹空いちゃったよー」
「お前はいつも空腹だな!」
「フフ。知り合いのドワーフは料理もとても上手だから期待して良いよ。」
「わーい!どんな料理だろー?」
「お楽しみよ。それと1つ注意して欲しいのはドワーフの方には悪口は絶対にダメよ。それが冗談でもね。」
ドワーフ族はプライドが高く、蔑む様な発言は絶対に許さない。
旅人が軽い気持ちで言ったブラックジョークを許さず、命が尽きるまで追いかけたという話は結構有名だ。
「ティナ、頼むから変なこと言うなよ」
「なにそれー、私絶対に言わないよ」
どうしよう……。
これは完全にフラグが立っちゃったよ。
あとでいざってときはハルさんに頼んでティナに音遮断魔法かけて貰うか。
「ここよ着いたわ。」
山奥で人気の無い場所だった。
回りを見渡しても、木や草に岩とどう見ても先程から変わらない自然豊かな山の中って感じだった。
「あのーハルさん?」
「見えるものが全てじゃないでしょ。感じてみて。」
ハルさんの目は稽古をつけてくれている時と同じだった。
俺はすぐに目を閉じ意識を周辺に溶け込ませた。
「……そこの大きい岩の後ろですね」
「正解。成長してるね。」ニコ
「…あ、ありがとうございますっ///」
「あーエル照れてるー、クスクス」
「うるさいティナ、お前は分かってたのかよ?」
「着いた瞬間分かるわよ!こう言うの得意なんだから私」エッヘン
三人は大岩裏の隠し入口から中にゆっくり入り、人工的な階段を下っていく。
「すごーーい!まるで地下帝国だねー!」
「まるでじゃなくて本当にだろ、これ」
入口の狭さと反対に中はとても広い空間になっていた。
壁一面に松明が灯されており十分に明るい。
ドワーフの手も加えられていると思われる為、地下と言うよりは幻想的な洞窟内というイメージだ。
「けどドワーフさん一人もいないねー」
ティナが気になったことを口にした。
「ここはまだ玄関みたいなもの。もう少し先に進むと沢山いるわよ。」
「……さすがはドワーフ族ですね」
広い空間を壁に向かって歩くハルさん、その後ろを俺とティナは黙々と付いていく。
すると突然岩陰から小柄な男が飛び出て来た、ドワーフだ。
「お主ら何処から侵入してきたん………ってハルじゃないか!久し振りだの!」
「ダンフォイさん。お久しぶりですね。」ニコ
ハルさんの知り合いみたいだった。
それよりドワーフの話の中で、何処からって事は入口は沢山あるんだな。
多分だが相当広いぞ、これ。
「今日は族長に会いに来たのですがいらっしゃいますか?」
「ああ族長は自分の工房にいると思うぞ!」
「ありがと。ダンフォイさん。」ニコ
「ゆっくりしてけハル!その仲間達もな!」
「「はい!!」」
俺とティナはダンフォイさんに大きく返事をした。
「エル見たー?ドワーフさんって本当にちっちゃいんだねー」
「バカ!!」
俺は慌ててティナの口を塞ぎダンフォイさんの方を確認した、聞こえていない様で安心して大きく息を吐いた。
「ティナ、ハルさんに何て言われたんだ?」
「えー今のは悪口じゃないよ、可愛いって意味だもん」
「けど駄目だ、ティナがそうでも向こうに違う意味で捉えられたらそれは悪口なんだからな」
「そっかー、気を付けまーす」
内心ヒヤヒヤだ、先が思いやられる。
「工房だから確かこっちの通路のはずね。」
迷路のような複雑な道を歩いていく。
ハルさんは迷っている気配はないが、俺だったら間違いなく迷子になってるだろうな。
ハルさんが壁に着いた扉の前で立ち止まった。
「ここよ。入るわね。」
扉を空けると空間が一変した。
さっきまでの洞窟感がなく、まるでアルクドラ帝国の鍛冶工房にそっくりだった。
「ビックリしたでしょ。エルくんとティナちゃんの国の鍛冶技術の大元はドワーフ族なの。」
ハルさんがそう言うと奥から族長らしきドワーフが姿を現した。
「おーハルか、今日はエンは来てないのか?」
「カーリー族長お世話になっております。今日は私とエルくんティナちゃんの三人です。」
「そうかそうか!あの坊主に顔を出せと言っといてくれよ!」
「分かりました。伝えておきますね。」ニコ
「……ハルが連れてきたと言うことはワシに武器を造らせる気だな?」
「はい。お願いしますカーリー族長。」
ちょっと待て、聞いたことがあるぞ。
ジェリカ王女の所持する聖剣、それを鍛えた伝説の鍛冶師『カーリー』。
その造り上げた武器は全て頭に『聖』が付く程、貴重で高価、特殊付与に最強性能と手にしただけで何倍にも強くなると言われている。
そもそもハルさんとどういう繋がりなんだ?
そんな伝説の方に初対面の俺達の武器なんて承諾してくれる訳ないだろう。
「オッケー!今準備するからその辺で休んでてくれハル!」
「ありがとカーリー族長。良かったねエルくん、ティナちゃん。」ニコ
あまりの衝撃に、俺は呆然と立ち尽くすしか出来なかった。




