60 淀む明暗
「ユーフィユ、数日ほどギルドを空けることになるが宜しくな」
「えっ、ギルド長どこに?」
「ちょっと王に呼ばれたみたいなんだわ」
ユーフィユに挨拶し俺はじいとギルドを出た。
「ギルガッド様、少し歩いた所に車を停めてますのでご同行宜しいですかな?」
「車かー、苦手だけど大丈夫です」
少し歩いくとじいの言うとおり車が停まっていた。この国の貴族は大体が所有している。
俺は車が好きではない、それに俺のが速いから乗ることはない。
「じい様はずっとガルシア様の付き人でしたよね?世界が変わる前から」
「はいその通りでございます」
「ずいぶん車の運転上手いですね、相当練習しました?」
「いえ、直ぐに慣れましたよ。とても簡易な操作方法でしたので」
「……………………………………」
ギルガッドは運転が出来なかったのだ。
前に試しに乗った時、レベルが低ければ死んでいた程の事故(エンジン大爆発)を起こしたので車が苦手なのだ。
「そろそろ王の屋敷に到着致しますギルガッド様」
ガルシアの大豪邸が目視出来る、皆はこの豪邸を王邸と呼んでいる。
「なあじい様、俺は一応疑われているんですよね?」
「ギルガッド様は誠に鋭いお方だ」
「まあそれっぽく振る舞いますよ」
二人は厳重な警備態勢の正門を潜った。
車を降りてじいに部屋まで案内された。
扉を開くとそこには知ってる顔が見えた。
(やっぱり思った通りか)
「ギルガッド様、くつろいでお待ち下さい」
「分かりました」
部屋の窓側中央に玉座のような趣味の悪い椅子がある。
その正面にあるフカフカのソファーに大きく座った。
「お前も呼ばれたのか変態筋肉」
「おー久しぶりだなサクヤ!元気そうだな」
「お前は本当に何も変わらないな」
俺を変態扱いするこの女の名前はサクヤ。
元冒険者で俺のギルドにいたが、今は何処にも所属しない一匹狼の剣士だ。
「おい俺もいるぞギルガッド!」
そう言いながら俺の隣に座ってきた男はウェルズ、何でも屋をしているお調子者だ。
俺のギルドも何でも屋みたいな物だが、こいつは貴族からの高額報酬仕事しか受け付けない。
「ウェルズもいたのか、帰れよ」
「おいおい、サクヤと扱い違いすぎねーか」
「男の癖になんだそのヒョロヒョロの体は!情けない」
「いや、お前が鍛えすぎなんだよ!なあサクヤ!」
「それもあるがウェルズもヒョロすぎるな」
「ガーーーン」
ウェルズは頭を抱えて落ち込んだ仕草をした。
「そんな事よりお前達はどんな謳い文句でパーティーに誘われたんだ?」
俺は二人に質問した。
「私は囚人の脱獄補助を疑われてる」
「俺もサクヤと似たような感じだな」
全員同じ理由で呼ばれているのか。
それにしてもガルシブで五本の指に入る実力者の内三人が一緒かー、めんどくさいことになりそうだな。
「と言うことはギルガッドも私達と同じ理由だな」
「ああ、どうするつもりだサクヤ?」
「私は誰の下にも付くつもりはない」
「誰の下にも?サクヤは何言ってんだギルガッド?」
サクヤは俺と同じで集められた意味を理解していた。
ウェルズの馬鹿は相手にしない。
ガチャンッ!
ガルシアと青年が部屋に入ってきた。
「待たせたな、話をしよう」
お手製の玉座に腰掛けそう言い放った。
付き人の青年は隣に立っている。
「サクヤもこっちに来いよ!」
ウェルズの言葉を無視してサクヤが口を開いた。
「ガルシア、濡れ衣着せてまで私達を呼び出すのだから余程の理由があるのだよな?」
サクヤは仮にも王のガルシアに普段通りで接した。流石に肝が据わりすぎてるだろ。
「お前王に何て態度なんだ!身の程を弁えろ」
青年がサクヤの言動に怒りを押さえきれていない。
「良いのだセフ、この三人は特別だ」
「はい、申し訳ございません」
セフと呼ばれた青年はガルシアの言葉に平常に戻った。
「サクヤにウェルズ、それにギルガッド。癖の強いお前達だ、誘い方は許せ」
「そんな事は良い、俺たちをどうしたいんですかね?」
ガルシアは大きく息を吸った。
「サンベル、そしてアルドラクを攻める!その為にお前達の力をこのガルシブに捧げろ」
正直驚いた、俺達を下に置きたいだけだと思っていたから。
本気なのかこいつは?頭のネジが足りてないどころの話じゃないぞこいつ。
「いい加減にしろよガルシア!この国の現状も見えてない馬鹿が、その首落とせばどれだけ流れる血を減らせるだろうな?」
サクヤが刀を装備した。
やばいな、こいつ本気だぞ。
「落ち着けサクヤ!取り敢えず話を最後まで聞け!なっ!」
俺はサクヤをなだめて隣に座らせた。
めんどくさい事は本当に嫌いなのになー。
「俺はガルシア王の考えに賛成だな!」
ウェルズが意外な答えを叩き出した。
「なっ!?正気かウェルズ!」
「ああ、やっぱり戦は男のロマンだろ!短い人生なんだ、頂点目指してなんぼだろ!それに前の世界では戦争なんて当たり前だったしな」
こいつはただの馬鹿だ。
深く考える事が出来ないただの馬鹿だ。
「もしもの話だ、三人共協力するとしても戦力差が天と地だろう。サンベル王国にはあのローマン・ドグダルシャン、そしてアルドラク帝国にはジェリカ・シンエンベルトがいるんだぞ!その辺はどう考えているんだガルシアさんよ?」
俺は少し気になったことをガルシアにぶつけた。
「今は確かに無理だな、しかし今日の話を断ると後で必ず後悔すると断言はしておく」
ガルシアの言霊には嘘やハッタリではない力強さを感じた。




