4 刺激的な日常
ワンルームに黒いソファー、その前には32インチのTV。ベランダへの窓の側には敷き布団。
エンの部屋は物が少なくスッキリしている。
「今日の戦利品を確認しようぜ!」
「そうだなー床に並べるかー」
そう言ってエンはソファーで、ケイジは床で左手を上げる。
「兎皮×10」
「ゴブリンの牙×25」
「ゴブリンの角×28」
「魔石×50」
「???×2」
「透明宝石×2」
「赤宝石×3」
「青宝石×3」
「今日は結構頑張ったから疲れたなー」
「俺は後8時間は続けられたけどな!」
「あ、そうだ!毎回思うけどゴブリンの角とかいるのか?エンが持ち帰れって言うから取ってきてるが!」
「後々使うことになるよー多分ね」
「なら良いんだがよ!今日はまだまだ動き足りねーな!」
「はいはい、戦利品分けたら飯にしよう」
「おう!腹がへっては風呂場を養えないからな」
「そーだなー」
(腹が減っては戦ができぬの事だよな…)
エンは床に風呂敷を広げ、上にのった兎肉を取り出しそのまま口に運ぶ。
「あ、エン1番デカイの食ったな」
そう言うとすぐにケイジも風呂敷の上の兎肉にかぶり付く。
「兎肉、旨いけど飽きてきたなー」
「確かにあの日からこれしか食ってねーな」
あの日……空から大陸が降ってきた時から、生活に必要不可欠なライフラインが止まった。
水道、電気、ガス、文明が退化したと言っても過言ではない。
最初の方は、冷蔵庫に入っていた食料や非常食で食いつないだ。だがそれも3日で尽きる程度だった。
生きていく為に俺とケイジは近場で食料を探し、宝ウサギの巣を見つけた。
それからというもの罠を作り仕掛け、毎日捕獲する日々だ。ゴブリンが横取りしようと襲ってくるのを退治するのも日課になっている。
アパートの他住民はというと、すぐに飛び出していった。多分家族や大切な人を探しに行ったのだろう。中には森の中を車で突っ切った猛者もいた。
「なあエン!」
「んー?」
「皆無事に生きてっかな?」
「……分からない」
「だよな!信じるしかねーか」
「そうだね」
(家族や友達が心配なのは俺も一緒だ)
(探しに行きたくともあいつを見てしまった)
(今を生きるのが精一杯で、お互い分かっている)
「今は強くなるしかないよ」
エンはそう言って強く拳を握りしめる。
「そう言えば俺達ステータスプレート消しちゃってレベルとかわかんねーじゃん?」
「そうだねー」
「けどこの3ヶ月で明らかに体が軽くなったし、パワーも上がった気がするよな!」
「言われてみればそうだねー」
「俺多分全盛期のタイソン並みだぞ」
「タイソンもレベル上がってたら今が全盛期だろー」
「はっはっは!流石だなエン!」
言われてみれば前の世界の時と比べると、余裕でオリンピック全種目を金色で飾る事が出来る位の能力になっている。
(ウサギを獲る為の動きしかしていなかったから、今度色々試してみるかー)
「そこでだエン!!!」
刺激物でも入れた様に目を開いて大声を出す。
「そろそろあそこにリベンジだろ!」
「行ってみ何とかドーの事かー?」
「そうだ!あのスーパーなら飯がたくさんあるだろ!」
「あれは無理ーあの日の少し後に覗いた時、ゴブリンが100はいただろー」
「それにあいつがいるだろ」
「何か今ならイケる気がすんだよ!」
「ちょっと行ってくるわ!」
ケイジは立ち上がり玄関に歩いていく。
「待てケイジ、流石に危険過ぎる夜だし」
「お土産買ってくるから待ってろよ!」ニコ
「いや、ゴブリンレジ打てないだろー」
「確かに、万引きしてくる!」ニコ
「待てって!」
「俺も行くから明日の昼にしよう」
「しょーがねーな、まあ明日でもいいか!」
ケイジは頭を掻く仕草をしながらゆっくり戻ってきた。
(はあー……今の状況分かってるのかこのバカ)
-ゴブリンベビー LV1-
HP :30
MP :0
ATK:75
DEF:20
LUK:3
δ とても活発で狂暴。実力は牙の鋭いガキ大将位だ。