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44 束の間の繁栄

「いつまで休んでんだよオラ!」バシ

「グッ…………すっすみません」


 そこには人が人を物のように扱う残酷な光景が広がっていた。

 皆が手を取り助け合う、そんな夢物語はこの国にはもう訪れる事はないだろう。

 1日1食でも食べている人が何人いるだろう。

『貴族』じゃないなら人ではない……か。



 -地下牢-


「まだ生きてるのか?汚れた鼠が!」


「………………………………………………」


「元気そうだから今日も泥水のみだな!ハッハッハ」

「かつては持上げられた奴でもこうなると見るに耐えないな!ハッハッハ」


 ガリガリに痩せ細った男を看守が嘲笑う。

 虫の息とは痩せ細ったこの男がまさにそれだ。



「姉ちゃん、俺たちは一生このまま奴隷として死ぬのかな?」

「そんなわけないでしょ!きっと……きっと助けが来るよ!だから耐えるのどんなに辛くても」

「きっとっていつ?本当に助けなんて来るの?」

「……後少しよ!絶対くる!姉ちゃんを信じて」

「うん、お腹へったね…………」



 国の至るところで嘆き悲しみの声が聞こえる。

 救いなんて来ない、心の底では皆が分かっている。

 しかし、それを表に出すのは『死』と同じ。

 希望がない、光がないけど夢をみる位良いんじゃないかな。

 夢にすがらないと心が砕けてしまうから。



「王よ、今日はまた楽しんでおられますなー」

「じいか、人の興を邪魔するな」

「邪魔をするなんて滅相もありません。お耳に入れたいことがありまして」

「なんだ?簡潔に話せ」

「アルドラク帝国に潜り込ませている我同胞が、探りを入れた者がいるとの事です。」


 王と呼ばれる男は幼い少女を投げ飛ばし口にした。


「じいよ、それを処分しておけ。鼠が何をしてもそれと同じ結末よ」

「はは!承知致しました」


 じいは幼い少女を抱え部屋を出た。


「息がないですね、これで何十人目ですかね」



 国の中心部はとても綺麗な街並みを輝かせていた。

 その端の方にあるギルドである噂が広まっていた。


「ギルド長聞きましたか?」


 この小規模ギルドの受付で働くエルフが慌てていた。


「なんだユーフィユ慌ただしいな」


 鍛え上げられた肉体を年中無休で御披露目しているギルド長と呼ばれた男が答えた。


「ここら周辺で流れている噂ですが……

「あの男が生きているってやつか?」


 ユーフィユの話を遮るように言葉を挟む。


「知っていたんですね、本当でしょうか?」

「さあな、何の確証もないただの噂だろ」

「でも………本当だとしたら助けないと!」

「落ち着いて良く考えろユーフィユ!なぜ今になってそんな噂が、なぜ2年前のあの人が今なんだ?」

「………………………………………………」


 ユーフィユはうつ向いて肩を落とす。


「いいか俺達は中立だ!生きていく為にあの時決めただろ、感情に流されるな」

「しかし…………………………………」


 いつのご時世も波を立てる奴は叩かれる、そんな事は常識だ。

 こっちに来て教えて貰った言葉で『長い物には巻かれろ』とあるが本当にその通りだ。

 めんどくさい事に自ら突っ込んでいくのは馬鹿のやることだ。


 けど本当は誰しもが分かっている、間違いに立ち向かいたいと。

 動けないのはただ『きっかけ』がないだけだと。


「………………波がくるな」

「えっ?」

「ユーフィユ、お前は波が来たときそれを眺めていられるか?」

「ギルド長と同じですよ、波に乗るわけではなく波を高くするお手伝いですね」

「ハハッ、お前は頭の良いやつだな」




 ◇◇◇◇◇◇◇




「まだまだ遅いなー」


 帝国を出て少し離れた荒野で二人は剣を交えていた。


「エンが速すぎるんだろ?本当に俺が遅いのか?」

「今の俺はエルと同レベル位の力しか使ってないよ、だから質問の答えは後者だねー」

「まじかよ…………ならばスキルで」


 スキルを発動しようとしたエルを止める。


「スキルは無しだエル、確かにスキルを使えばスピードやパワーが桁違いになるけど、今は元々の能力値を上げるべきなんだ」

「元々の能力値?」

「そうだエルなら間違いなく伸びる、俺が保証するよ」

「エンの保証は他のどんなものより信用出来るな」


 お互いの剣が甲高い金属音を何度も上げる。


追跡する鎌鼬(ソニックテンペスト)


 少数の竜巻がエンに襲い掛かる。


「なかなか良い魔法だなー」


 全てを身のこなしのみで避けるエン。

 追跡を利用して魔法同士ぶつけて相殺した。


「なんで避けるのよーエン!」


 小岩に姿を隠していたティナが姿を表し叫ぶ。


「それは特訓だから仕方ないだろー」アセ

「せっかく魔力貯めて気配消してたのに!」

「タイミングと魔法選択は凄く良かったけどまだ甘いね」


「だったらエルあれやるよ!」

「話聞いてなかったのかよティナ、スキルは無しだって」

「知らないよ、まだ一撃も当ててないのよ悔しくないの?」


 ティナは根っからの負けず嫌いだ。

 頭の中は指導を受けていることを忘れ勝負になっている。


「もしかして特殊スキルかな?よしエル、ティナ見せてみろ!」

「良いんですかスキル使って?」

「ああ構わないよー」

「じゃあ遠慮なくティナ行くぞ!」



「特殊スキル 『感覚共有』『能力配合』」


「さらにー」


「スキル 『剣武活性』『剣圧上昇』」


「まだまだー」


「スキル 『能力向上×2』『肉体強化×2』」


「もういっちょー」


「スキル 『生体感知』『身体加速』『魔力活性』『疲労回復弱』『一撃失神』『遠広範囲残撃』」


 近くで感じ取れる程オーラが溢れ出す。


「なるほどー、スキルの共有スキルか!互いを強化して更に複数掛けられる」


 エンの口角が上がった。


「なかなかレアだなー、面白い!」



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