41 導かれし人
「きゃーーーー!」
ドッシンッ!
お尻が痛い、尻餅の中でもザ・尻餅だ。
「いたたー、なんなのよー」
人形を触れて転移させられた私は回りを見渡した。
大きな木の根っ子の中みたいで、辺り一面緑の苔で埋め尽くされ中央には泉が沸いている。
とても神秘的で幻想的な場所だった。
「ティナちゃん。いきなりゴメンね。」
背後から聞こえるその声はどこかで聞き覚えがあるものだった。
「あっ!ご飯奢ってくれたお姉さん!」
あの時、新しい飯屋に行った時に話し掛けてきた二人組のエルフのお姉さんだった。
「久しぶりね。最初に言っておくけど私たちは敵ではないわ。」
「信じるよー!でも私たちー?」
「ありがと。あなたの仲間も別々にお話してるって事。」
「あー!ミルアちゃん!あとはご飯屋さんの時のお兄さんかな?」
「そうよ。だから心配はしないでね」ニコ
その微笑みに悪意は微塵も感じられなかった。
◇◇◇◇◇◇◇
「おい、いい加減に話そうぜ!」
「………そうね、そろそろ良いわね」
ザドンとミルアは山の中を歩き回っていた。
「こんだけあいつらと離れたんだ!何が目的だ?」
「あらっ、気付いていたの?ただの筋肉バカだとばかり思ってたわ」
「口調が変わったな、その姿もなんだろ?」
「流石はベテラン冒険者ね」
ミルアの回りから魔力が漏れ始めた。
幼かった姿が一変してティナより少し年上位まで成長した。
「それが本来の姿って訳か!」
「それは違うわ、さっきも今も両方本当の私」
「なるほどな!それじゃ参るぞ!」
ガッシャァーーンッ!
ザドンの先制攻撃で大きく土煙が舞う。
しかしザドンの初撃を交わしたミルアは、風魔法でダメージを与える。
「お前強いな!レベルいくつだ?」
「対人戦で無闇に情報を与えると思って?」
「ガハハ!面白くなりそうだ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
何も情報のない俺はここら辺で一番高い木の天辺でティナたちを探す。
が、もちろん見つかる筈もない。
「どうすればいいんだ?考えろ!考えろ!」
そんな時、俺の直ぐ真横を鷹が横切った。
何故か「ついてこい」と言われた気がした。
移動速度上昇系のスキルを複数掛けて必死に追いかけた。
気が付けば山の麓の方まで追いかけていた。
「ハァハァ…………やっとかよ!」
息を切らしながら言葉を吐き捨てる。
「予想以上の速さだねー、流石はAランク冒険者」
「誰なんだあんたは?」
「うーん、俺は君の仲間を拐った敵かなー」
エルの目付きが変わった。
「じゃあ剣で居場所を聞くか!」
エルが先に仕掛けた。
上段からの流れる様な8連撃技だ。
しかし、謎の男は剣で全てを紙一重でいなす。
「見事に綺麗な剣筋だなー!似た型を使う人と戦ったことがある」
「………………ちっ!これならどうだ!」
パキッ!
エルの会心の一撃で謎の男の剣を砕いた。
その後剣先を顔に向け話す「俺の勝ちだ」。
「強いなエルくん」
「………何故俺の名前を?目的はなんだ?」
「正直言うと女の子が目的でただの時間稼ぎだったけど、」
……ゴクリッ!
「君に少し興味が沸いたよ!」
言い終わった瞬間、奴の雰囲気が変わった。
今度は奴の連撃を俺が辛うじて防いでいる。
(さっきと剣圧が全く違うぞ、本気って事か)
「ほら右足ガード薄い!」
徐々に防ぎ切れなくなり、数発貰い始めた。
こいつ俺の剣筋を真似てやがる……。
さらにスピードに加え、フェイクを混ぜ込み対処が追い付かない。
「グハァッ」
奴の一撃を腹にモロにくらってしまった。
息が出来ないほど攻撃が重い。
「スタミナをもっと付けた方が良いな、集中力は申し分ないねー」
「………………………………」
「仲間はもっと苦しんでるかもなー」
「………………………………」
「まだ息するのも辛いはずだよー、良いよ少し休んで」
「………………ふざけんなー!!」
俺は根性で立ち上がり腹から声を出しながら奴に突撃した。
パシッ!
俺は腕を弾かれ剣を飛ばされた。
今更気付いたが先の剣が折れた後、こいつは木の枝を使っていた。
圧倒的な実力差に頭が真っ白になり膝を付いた。
「勝負を諦めたのかー?それと女の子の事も」
「…………ティナ」
俺は考えるより先に身一つで向かっていた。
剣が無くても拳が、拳が無くても足が、足が無くても歯が、歯が無くなっても呪い殺す!
「ヒール!」
謎の男は俺に回復魔法を唱えた。
はっ!?!?!?!?!?!?
「ゴメンねー、エルくん冗談が過ぎたよー」
「………冗談?」
「ティナちゃんは全然無事だよ!それに大男の方もねー」
「どういうこと………なんだ?」
「俺の仲間が神獣をテイムしてるんだけど、同じ匂いをティナちゃんから感じたんだ」
「それでちょっと話がしたかったみたいなんだー、ほら神獣って相当レアでしょ?」
「話は分かったけど、帝国で話せば良かったんじゃないの?」
「タイミングが良かったんだ、丁度リッチーにも用があったし余興も含めてなー」
なるほど、こいつはクエストの依頼者だな。
上手いこと誘われてたんだな俺たち。
「あんた名前は?何者なんだ?」
まっすぐな瞳で俺に答える。
「俺はエン、ただの旅人だよー」




