38 共同戦線
「じゃあねーバイバイ!」
二人に手を振りお店を後にした。
「あー美味しかった!全部が絶品なんて人気出ちゃうなあのお店!それにしてもお姉さん達の名前聞くの忘れちゃったなー」
ニコニコの笑顔でエルのいる宿屋に戻る。
「エルたっだいまー!」
「お帰り、美味しかった?」
「うん凄く美味しかったよ、今度一緒に行こうよ幸せになるよ」
「そんなにかよ、結構並んだのか?時間やけにかかったけど」
「そんなに混んでなかったよ、知らない人と仲良くなっちゃってさ」
「ティナは誰にでも付いていくんだから気を付けろよな」
「子供じゃないんだから!それに向こうから私の優秀な魔力を感知して話してきたのよ」
少し自慢気な顔をしている。
むしろそっちの方が危ないと言うのに……。
「おいっ、それ危なくないか?どんなやつだ?」
「何よ怖い顔して!別に優しいお兄さんとお姉さんだよ!ご飯奢ってくれたし」
「どんな事話したんだ?」
「世間話だよー、色々旅をしてるんだってー」
「………嘘だろ、旅人ってまさかな」
「あっ!!!」
ただの偶然なのか?
考えてみれば旅人なんてゴロゴロいるわけだしな。
「ティナに言ってなかったが、実は俺たちが探している旅人はこの帝国内にいるんだ」
「えー!!あの人たちがそうだったの?」
「それはまだ分からないが、なんか引っ掛かるな」
「顔は覚えてるよ!それにお姉さんはエルフだった」
「他にどんな話をしたか思い出せるか?」
腕を組み思いだそうとするティナ。
本物だったらこれとない好機だ。
「………あっ!……ハクちゃんの事話した!」
「それは駄目って言っただろ!誰に対しても話すなって!」
少し呆れた、慣れているから少しなんだが。
「違うの!私からじゃなくて言われたの……」
「……なんてだ?」
「貴方は神獣と契約してるねって、そのあと私も何だって言ってた」
疑惑が確信に変わった。
間違いなく探している旅人だろう。
そもそも神獣と契約している人間なんて、ティナと噂レベルの大賢者様位しか知らない。
旅人じゃなくても『強い』事に違いない。
「ティナすぐに出るぞ!」
「やっぱり旅人さんだったのかな」
「高確率でそうだろうな」
俺達は急いで飯屋に向かったが、もちろんその場にいるはずはなかった。
「まだそう遠くには行ってないだろう、二手に別れて探そう!」
「りょーかい!」
俺は路地裏や商店街など様々な場所を探した。
(俺には男女一人ずつで女の人はエルフって情報しかないからな)
(とにかくエルフを探そう)
大分時間が経っただろう。
景色が黄金色に変わりつつあり、街灯が灯し始めた。
「エルーどうだった?」
「ダメだな、見つからない」
「そうだよねーまた明日探そー!」
「…………分かった」
「焦っちゃだめだよ、また会える気がするから大丈夫だよ」
「ああ、そうだな」
俺達は本日の捜索を諦めた。
帰り道に気紛れでギルドに立ち寄った。
「おっ、タイミング良いな!エルティナ!」
入って早々近付いてきた大男はザドンだ。
俺達と同じAランク冒険者でソロだ。
「何だよザドン、タイミングって」
「それがさっき入ったばかりの依頼で興味深いものがあるんだ」
「どれどれー?」
ザドンが持つ依頼書をティナがかっさらう。
「緊急クエスト、不死王の討伐だってー」
「不死王ってリッチーだろ?」
「面白いだろ、どうだエルティナ俺と共同戦線といかないか?」
「確かにAランク以上の依頼だし、興味はあるな」
「えー私やだー!ゾンビ系嫌いー!」
昔からリッチーを倒すと不思議な力が手にはいると言われている。
旅人を見つけられない以上、これもありなんじゃと考えて始める。
「良し、やるぞティナ!」
「うわー、何言っても聞かない出たその目」
「そうこなくっちゃな!じゃあ俺が申請しとくから明日の朝にギルド集合なお前ら」
「了解だザドン!よろしく!」
「えー、ティナ行かないよー」
「成功したらあの飯屋奢ってやるから、な!」
「んー、考えとくー!」
不死王リッチーは雑魚ではない。
ケルベロスと同等位だろう。
まあ今回はザドンがいるから少し安心できる。
見た目はむさ苦しい筋肉野郎だが、冒険者としての腕は紛れもなく本物だ。
(明日に備えて早く帰って寝よう)
サササッ!
「……………………!!」
ギルドからの帰路途中で気配を感じた。
しかし、回りを見渡しても誰もいなかった。
ティナはギルドで晩御飯を食べている筈だから気のせいだろう。
「あの依頼取られましたね。」
「仕方ないだろー、俺たちAランクじゃないんだからー」
「冒険者ですらないですけどね。これでいいんですよね?」
「それはもちろんだよ、ははは」
二人の男女が路地裏で話している声なんて、もちろんエルには聞こえているはずがなかった。
ザドン・ザドン ♂ 40才 LV47-
HP :7120
MP :321
ATK:9880
DEF:8910
LUK:112
とても大柄な体格で馬鹿力の持ち主。
座右の銘は『死んでもかすり傷』。




