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0 にんじんとにんげん

 

 無学は神の呪いであり

 知識は天にいたる翼である。



「エン!あれはゴブリンの騎士団なのか?」

「あれはメリーゴーランドっていう人の遊具だよ」

「そうなのか…確かにグルグルしてるだけだな」


 メリーゴーランドを知らない。

 それは仕方の無い事である事は理解している。

 何故なら彼は()()()()()()の住人だったからだ。

 今の世界になってから、お互いがお互いの知識を擦り合わせ強く生きるしか方法はなかったのだ。


「しかしメリーゴーランドにゴブリンの軍団とは、かなりシュールだなー」

「確認だがあの金ぴかペガサスは偽物なんだな?」

「ああ、それは間違いないよー」


 遊園地内の大きめなゴミ箱の後ろで身を隠す二人。


「どうするエン!目的はゴブリンじゃないけど」

「そうだね、無害な奴等だったら放置だけどあいつら間違いなく人を殺してるよ」


 メリーゴーランドで遊ぶゴブリンの中には、血の付いたこん棒を持つ者がいた。


「そう言うことなら俺たち冒険者の仕事って訳だな!」

「行くぞっ!」


 二人はゴミ箱裏から飛び出しメリーゴーランドに走り出した。


「俺が斬り込む!エンは援護頼む!」

「了解、気を付けろよー」


ザシュッ!スパッ!


(やはりあいつの剣技は光るものがあるな)


切り裂く波動(スラストショット)


 無数の風の刃がゴブリンに襲いかかる。


「これで最後だー!」


 ザシュッ!


「お見事だ、流石は王宮剣術だなー」

「おいエンそれは言わない約束だろ」

「ごめんごめん、でも本当に見事だよ」

「へへっ!ありがとな」



 20体以上はいたゴブリン軍団をものの数分で倒しきった二人。

 しかし先程の戦闘音で、遊園地の雰囲気が変わった気がした。


「さすがに気付かれただろうなー」

「関係ないね、正面から堂々と行こう!」

「言うと思ったよー」


「スキル 『生体感知』」


 エンの体から色鮮やかなエフェクトが発生した。



「見つけたー」

「さすが便利スキル持ちだな」

「近いな、気を抜かずに行こう」

「了解!」


 辺りを見回すとコボルトが噴水で水浴びしていたり、スライムが射的の景品棚にいたりと様々だ。

 下級モンスターや下級魔物は向かってくる気がないみたいなのでそのまま歩を進める。



「ここだなー……………めんどくさいな…」

「やばそうな感じが伝わるぜ」


 二人が立ち止まったのは『お化け屋敷』の前だった。


「いいかここは9割偽物だ、だから焦らずに行動して欲しい」

「成る程トラップ屋敷か!いろんな罠が待ち構えてるだな」

「………そうだよ、集中しよう」


 恐る恐る中に足を踏み入れた。

 するといきなり


 "ザザザザザァァー"


 上から大量の虫の作り物が頭上まで落ちてきた。


「うわぁぁーーーー」



 俺はあまり驚かない方だからあれだけど。

 それにしても剣で全てを微塵切りにするなよエル……。


「大丈夫かー?」

「全然平気だ!多分毒虫のトラップだな」

「……………………」


 恐る恐る前に進む。


 人体模型や呪いの人形、火の玉に白装束の女の子。

 様々な恐怖心を煽る仕掛けが微塵切りにより形を変える。



「やばいなエン!依頼内容絶対インチキだろ」

「…………終わったら報告しよう」


 そんな会話をしていると前からガイコツが3体近付いてきた。



(スケルトン LV19 これは本物だな)


「うわぁぁぁーーーおりゃーーー」


(まっどっちにしろ微塵切りかー)



 お化け屋敷も終盤に差し掛かり一際不気味な扉が現れた。


「その扉の先にいるぞ」

「だろうな!行こーぜ」


 勢い良く扉を開けた先は、少し開けた空間だった。

 その空間の中心にいるのは、顔は骸骨でボロボロのローブを着たモンスターだ。

 肩に大きな杖の様な物を掛けて、不気味なオーラを漂わせている。


(死霊王リッチー LV48 なかなかだな)



「こいつヤバイんじゃないのかエン?」

「まあそこそこな感じかなー」

「お前のそこそこが俺には分からないんだよ」

「エルだけで何とかなるよ」

「本当かよ!死んだら恨むぜ!」


 "オオオオオオオオォォー"


 雄叫びを上げてエルと呼ばれた男はリッチーに向かい走り出した。


「スキル 『剣武活性』『剣圧上昇』」


 エルの剣からエフェクトが発生し、それをそのままリッチーに振りかざす。


 リッチーは真っ二つに切り裂かれた。



「なんだよエン!余裕じゃねーかよ!」

「油断大敵だよ」


 エルの体が飛ばされ壁に激突した。


「ぐはっ!」


 顔を上げると目の前には先のリッチーが3体いた。


「幻影か………なら第三の型『霧綱落とし』」


 一瞬で3体の背後に回ったエルは同時に斬撃を繰り出した。

 2体のリッチー消え本体は悶えその場に崩れた。


「ちょっと危なかったぜ………ハァハァ…」

「お疲れエル、けどまだ爪が甘いよ」


 "ドカォーン"


 エンの掌から炎の玉が発射し倒れているリッチーに向けられた。


「さすがにやりすぎだろエン!」

「今結構危ない呪文唱えてたんだよリッチー」

「まじかよ、すまんありがとう」

「さあギルドに帰ろうー」



『クエスト 死霊王リッチー討伐 A 完了』



「なあエン!まだ街に留まるんだろ?ならまた稽古つけてくれよ!」

「もう少しいるかなー、また今度ねー」

「約束だからなー」


 街に戻りギルドに報告し、報酬を貰う。



「俺はいいよ、エルにあげる」

「駄目だちゃんと貰えよ!」

「倒したのはエルだ、それは事実だよ」

「んじゃ飯奢るから行くぞ!」

「はいよ、ご馳走になるよ」



 俺はエルにご飯をご馳走になり宿屋に戻った。


「お帰りなさいエン。」

「ただいまハル、どうだった?」

「大した情報はありませんでした。ただ1つ気になることが……。」


 窓の外は、明るい街灯と夜空の星がお互い競うように輝いていた。




 言葉が役に立たないときには

 純粋に真摯な沈黙がしばしば人を説得する。




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