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15 来夢を狂わす遭遇者

 見渡す限り美しい草原が広がる丘。


 山々に囲まれ、底がくっきりと分かるほどの透き通った湖。空気が美味しいなんて事を言っている人は、正直馬鹿だと思っていたが謝るとしよう…。

 似た景色を俺は知っている。昔みたテレビアニメの風景そっくりだ。

 しかし、草原に無数に突き刺さる交通標識がなければの話だが。


 ケイジがハルに何か耳打ちをしている。どうせ下らないことを吹き込んでいるに違いない。


 ハルがトコトコ近づいてくる。


「エララが立ったわ。」


 ケイジがお腹を叩き割るかの如く笑っている。


「…ハル、ケイジに何を吹き込まれたのー?」

「エンたちの世界だった言葉でお疲れ様って意味ではないの?」

「ケイジを見てみなー」


 ハルは振り向くと凄い速さでケイジに向かい、何発も蹴りをいれている。


「あー笑った!疲れたから休憩しようぜ!」

「もうケイジの言葉は信用しません。」

「それじゃあ丘の上に見える小屋まで行って休憩しようー」


 小屋の前には、白いヤギと丸太の上で本を読む老人がいた。


「初めまして、エンと申します」

「俺はケイジ!こいつがハルジだ!」

「…ハルです。お爺様は何をしているのでしょう?」


 本を閉じこちらの様子を伺っている。


「おーすまない、人に会うのは久々なのでな」

「茶でも入れよう、入りなさい」


 そう言うと小屋の中に案内してくれた。


 おじいさんから話を聞くと、昔からずっとこの小屋で生活をしていたと言う。自給自足の基盤を作りのんびり過ごしていたら突如草原に標識が現れたとのこと。



「本当に危ないぞじいさん!」


 ケイジが強めの口調で言うがおじいさんは首を横に振り続ける。

 この世界に魔物等の危険が在ることを説明し、安全な街への移動を説得している最中だった。


「わしはどこにもいかん。先が短い老いぼれだ、死ぬならこの美しい場所と決めておる」


「だけど…

「ケイジ!おじいさんが決めることだ」


 エンがケイジの言葉を遮るように話す。


「多少ではありますが食料と身を守る為の武器を置いていきますねー」


 エンはストレージから取りだし老人に渡した。


「ほっほっほ!これは良いものを貰った。少年よ、お礼に良いことを教えてやろう」

「この丘から見える正面の山の途中に、不思議な『宙に浮く扉』がある」

「あれは冥界へ繋がる入り口だ。入ったら二度と戻ること叶わぬだろう、あれには近寄らん方が身の為だ」


 三人の表情が一変する。


「分かりました、正面の山は避けて旅を続けるとします。親切にありがとうございます」

「なに、良い良い!こんなにも食料を貰ったのだからな」


 ドアに手を伸ばし小屋を後にする一同に対し、老人は小声で呟く。


「………面白い奴等だ、また会うことになるだろう。」




「エン。やっぱり宙に浮く扉って事は……」

「ああ、ダンジョンだろうなー」

「ダンジョン自体中々発見されない筈なのにこんな短期間で……。」

「運がいいのか、それとも悪いのかなー」

「まあとりあえず行くぞ!急がば回れだ!」

「それはどういう意味なのケイジ?」

「知らん!」


 結局、正面に見える山に歩を向ける事になった。

 歩いていても魔物やモンスターの気配が一切なく、ハイキングを楽しんでいるのかと錯覚に陥る程のどかである。


「そう言えばハル、前に聞いた5人の臨界者の事を詳しく教えてくれないかなー?」

「はい。まずは……


 ハルは事細かく話してくれた。



 まずは、レルビンの国で戦士長を務める男 『ローマン・ドグダルシャン』


 ハルが知っていた事は、LV72でドラゴンの討伐をしている実力者。元々平民からの成り上がりで国民からとても支持されているそうだ。



 次は、アルドラク帝国の王女 『ジェリカ・シンエンベルト』


 サンベルと同等の大国である亜人帝国アルドラクの王女にして最強の武人とのこと。


 ハルとはちょっとした面識が有るようで、笑顔で彼女の優しさを語っていた。



 三人目は、諸悪の根源とも言われている別称『魔王』


 文字通り魔の王である為、人ではないであろうと思うが姿を誰も知らないらしい。

 いるんじゃないかと思っていたからそこまで驚かなかったが、この世界になった今恐ろしく嫌な予感がする。



 四人目が、伝説の竜神 『バハムート』


 これに関しては完全に人ではないがLVは90近くらしい。2000年の時を生き、災いの前兆に姿を見せるとのこと。実際に多くの者があ・の・日・の前日に空を舞う巨大な金色の竜を見たそうだ。



 最後が、大賢者 『バルティス』


 バルティスに関しての情報は殆ど無く、架空の人物だと思っている者が大半らしい。

 しかし、大きい国の殆どで銅像が奉られているから知名度は抜群のようだ。


 臨界者とは別で勇者と呼ばれる青年 『カイル』がいるみたいだ。相当な実力で魔王を倒す旅を続けていたらしい。ちなみに勇者だけは臨界者ではなく天界使者と呼ぶそうだ。



「魔王に会ってみたいなエン!」

「いやめんどくさそーだからいいやー」

「私はジェリカ王女様に会いたいです。」

「王女様は見てみたいなー」

「俺は絶対魔王を捕まえて飼うぞ!」

「そうか、大きめの水槽が必要だなー」

「あとでホームセンターいくぞエン!」

「あればなー」



 時間も大分経過して、山を登り続けるエンたちの目先に禍々しい光が見えた。


「同じだな……」

「ダンジョンへの扉ですね。」

「うだうだ言ってねーで行くぞ!」

「あっ…。また勝手に入ってばか。」

「まあこの前レベルのダンジョンが連続する事はないだろーからね、行こうハル」

「そう言いはしましたけど……。」


 そうして俺たちは二度目のダンジョンに足を踏み入れた。





 -コボルト LV8-


 HP :240

 MP :0

 ATK:210

 DEF:220

 LUK:10


 δ 狂犬病の如く暴れる魔物。生まれたときから狂暴で母親の乳首を噛みちぎる。


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