13 ライフコミュニティ
-元渋谷区近辺-
「マジックアーム」ドカ
「スライスカッター」ザシュ
大きめのスライム数体を若者が倒した。
「おい、エミと合流して108に防具買いに行こうぜ」
「オッケーその前にギルドに魔石を買い取りしてもらおう」
あの日から世界が変わったが、ここ元渋谷ではあまり向こう側の影響を受けておらず、街並みはほとんど変わらない。
生きるすべを知るむこう側の知識と上手く融合し、とても賑わっている。
前と大きく変わった点というと、通貨が金貨や銀貨になり日本円はなんの意味も持たなくなった。
魔物やモンスターを討伐して生計を立てる者が現れた(冒険者)。
加治屋や冒険者に仕事を斡旋するギルド等は向こうの住人だった者が率先して仕組みを整えた。
逆に食品製造、サービス等の優れたこっちの技術、知識は商人をするなら欠かせないものになっている。
元渋谷区を囲むように、人々が協力して魔物の侵入を防ぐ巨大な城壁を作った。城郭都市といっても何もおかしくないだろう。しかも半年かからないでの完成、魔法の凄さが身に染みる。とはいっても急ピッチで作られたものであるため、たまに魔物が城壁内にいることがある。
元々あったデパートの婦人服売り場にスライムが。公園のブランコにゴブリンが。そんな事が時々ある。
元渋谷区は完全に国になりつつある。
「お前レベルどのくらいになったー?」
「やっと15になったよ!」
「おせーな、俺なんか18だぜ」
「流石だなー!」
「ちょっとこのタピオカジュース生臭いわよ」
「へい、うちのは足付魚の卵をつかってやす」
「ばかなの、タピオカは卵じゃないわよ」
「奥さん聞いたー?後藤さんちの子オーガに食べられちゃったんですって」
「やっぱり冒険者なんて野蛮ね、命がいくつあっても足りないわね」
「違う!最強の武器は日本刀だ!」
「いいや、この剣こそ間違いなく最強だ!」
この場所は様々な人々が入り乱れ、毎日を謳歌している。
もちろん、最初の方は人口が多いこともあり、混乱と絶叫のまさに『地獄絵図』そのものだった。
その地獄を変えたのは二人の男性だった。
一人は元々こっちの世界だった「渡辺 勝」
前職は渋谷区長で誠実で真面目だ。
もう一人は向こうの住人だった 「ガルシア・バンドータフ」
中級階級の貴族でとても博学だ。
彼らが中心に皆をまとめ、見事に地獄からの復興を果たした。
「そう言えばあれ今日だねー」
「そろそろだよ、何だろうね発表って。」
「まーあの渡辺さんとガルシアさんの事だからきっと素晴らしい発表であることは間違いないね」
「うん。場所はスクランブル交差点のところでしょ?もう人一杯だよねー」
「多分ね、私達は放送で聞こ!」
ザザザ………
町中のスピーカーから音が漏れた。
「皆様おはようございます。渡辺 勝です。それとガルシア・バンドータフです。」
「本日は事前から告知していました通り私達の考えをお話させて頂きます。」
「最初から単刀直入に申し上げます。ここ元渋谷区を新しい国にしようと思います。」
"ウオオオオォォォ"
「世界が変わり、私達は絶望の壁を乗り越えた。全てがゼロになったのなら、私達が1を一緒に作りましょう!この世界で、他の場所で絶望を味わっている人の希望を作りましょう!子供の笑顔が絶えない強い国を作りましょう!」
"ヴォオオオオオオオオオオオオオォォォ"
スクランブル交差点からの声がスピーカーで聞いている人にまで届く。
「今ここに独立国家、『ガルシブ』を宣言致します!」
この新しい世界に初めて国が出来た瞬間だった。
「やっぱ渡辺さんすげーよ!」
「確かにな、ガルシアさんもやばいよな!」
「けど、ガルシブってださくね?」
「そうかなー?いいと思うけどね」
皆が肯定し、誰一人素晴らしい国が出来ると疑わない。
-冒険者ギルド内-
「ギルド長の言った通りになりましたね」
受付の背の高いエルフが言った。
「だろ、悪くないと思える考えだがそれが大きな間違いだな」
鍛え抜かれた肉体を見せ付ける様に上半身裸のギルド長と呼ばれている男が答えた。
「どういうことでしょうか?」
「ゼロのままで良かったってことだ」
「ゼロのまま…?」
「言うならば全ての人が仲間だったんだ、国が出来れば差別化するだろ」
「確かに国民とその他で……」
「この後国が次々と出来るぞ」
「他の場所でもそうなるでしょうね」
「ああ、近い内に始まるぞ。血で血を洗う人同士の戦争がな」
(ガルシアはなにか絶対に企んでいるな…)
愚者は己を賢いと思うが
賢者は己が愚かなことを知っている。




