14話 令嬢は驚かれる
更新が日をまたいでしまったのと、文量が少なくなってしまい申し訳ありません。
どうも今日の22時ごろから小説家になろうの書き込みページが重くなっていて
わが家の貧弱回線とぽんこつパソコンではページが開けず
今回の話の仕上げ作業が滞ってしまいました…………。
「ハルツ様………?」
戸惑いを含んだフィオーラの声に、ハルツは動きを再開した。
まだ去らない驚きを抱えつつ、フィオーラの姿を観察する。
(整った顔立ちをしているとは思いましたが、予想以上ですね………)
顔にこびりついた泥を湯で落とし、汚れた衣服を取り換える。
ただそれだけで、驚くほど印象が変わっていた。
(最初に見た時は、せいぜい12、3の少女かと思いましたが………)
今ではハルツにもわかっていた。
細い手足も、十代後半にはとても見えない小柄な体も、全ては家族に虐げられていたせいだ。
満足に食事がとれなかったせいでやせ細り、泥と汚れにまみれていたフィオーラ。
華奢な体型はそのままだが、今の彼女は見違えるように、年相応の美しさを見せ始めていた。
(今の姿で彼女が外に出たら、また一波乱ありそうですね…………)
聖女にも匹敵する力に、十代後半の瑞々しく美しい容姿。
フィオーラへと向けられる人々の欲と視線を想像し、ハルツは彼女の今後を思いやったのだった。
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ハルツ司教は部屋に入るやいなや、なぜか笑顔で固まってしまっていた。
フィオーラは彼の姿に、もしや自分は何か粗相をしてしまったのだろうかと不安になっていた。
「ハルツ様、どうなさったんですか? もしかしてどこか、お加減が悪いのですか?」
「…………いえ、なんでもありません。少し驚いていただけです」
ハルツ司教が答えつつ、ふとフィオーラの手首に目を留めた。
「フィオーラ様、勘違いでしたらすみませんが、手首にも痣があったはずでは………?」
「…………はい、ありました。でも、今はもう大丈夫です。アルムが治してくれました」
アルムの力を素直に話しても良いかどうか、フィオーラは一瞬ためらった。
だが、青あざが消えているのは、少し確認されればわかることだ。
下手に嘘をつき、ハルツの心証を悪くするのはためらわれたからだったが、
「…………はい?」
当のハルツは、またもや動きを止め固まっていた。
「痣が、特殊な樹具もなく、一晩も経たず消え失せたと?」
ハルツの瞳が、治癒されたフィオーラの手首と、アルムとの間を交互に見やっている。
「………ありえません。そんなこと、一体どうすれば………」
「失礼だな。君たちの尺度に、僕を無理やり当てはめるのはやめてくれ」
平坦なアルムの声を聴きつつ、フィオーラは冷や汗をかいていた。
(千年樹教団にだって、癒しの奇跡を行う方はいらっしゃるはずでしたよね………?)
あいにくと、ミレア達に虐げられていたフィオーラがその奇跡を目にしたことはないが、千年樹教団の中には、傷を癒すことを生業にした人間もいるはずだ。
そう思いつつ、おそるおそるハルツへと確認することにした。
「ハルツ様、アルムのしてくれたことは、それほど驚くことなんですね………?」
「………ありえない、少なくとも今までの事例には無い話です。私達千年樹教団の中で癒しの奇跡に優れている者でも、通常は人の持つ治癒力を促進し、傷の治りをよくする程度がようやくです。高価な樹具を惜しみなく使うならともかく、今までの常識では考えられない話ですよ」
「………高価な樹具………」
フィオーラはちらりとアルムを見た。
樹具とは世界樹の枝葉、つまり世界樹の欠片を加工したものだった。
アルムが世界樹本体である以上、その力が樹具を遥かに超えるのも当然かもしれなかった。
「フィオーラ様、それにアルム様も…………そのお力、説明してもらえませんでしょうか?」