表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界のブレイドと始まりの村のモブ少女  作者: 堂道形人
ここは廃墟じゃない
8/100

第八話

「さようなら~」「急に御邪魔してすみませんでしたあ」「ごちそうさま~」

「ありがとうございましたぁ~」


 ハンナは明るく笑って、帰って行く*猟師*さん達に手を振っていた。


「こうしてお客さんが来る事もあるんだ、これからも村を綺麗にしておかないといけないな」

「はい! 私、頑張ります!」


 俺は奴らが使ったカップを集めながら言った。行儀よくハーブティをお楽しみいただけたようで結構な事だ。

 御土産に鹿肉の塊も置いて行ってくれたしな。自発的に。

 洗い物を片付けたら、このままこのキッチンで料理をさせて貰おうかな……


「そうだ! ブレイドさん!」


 急にハンナが声を掛けて来た。それも、とても明るく元気に。俺はすぐに振り向いた。


「この家を宿屋にしませんか!? 元々宿屋だったんですここ、家族が増えたからって言って廃業してたけど……ここに宿屋があったら、旅人の人も喜ぶかもしれないです!」


 何だろう……

 熱い物が込み上げて来る。左腕の骨が疼くような……

 俺の心に何かが広がって行く。


「素晴らしいアイデアだ! さっそく看板を作ろう!」


 俺は即答していた。


「あっ、でも……あの……すみません私、我侭ばかり言って……」

「おいおい、我侭なんか一度も言われた事ないぞ」


 ハンナは少し自信なげに声を落とす。


「でも……家を直したいって言ったの、私なのに……」

「家も直すぞ、ちゃんと。必要だろ?」

「だ、だけど宿屋をやりながら家も直したり……大変です……」

「なーに、時間はいくらでもあるからさ。それにまあ……心配しなくても、最初は……あんまりお客来ないだろうしさ……」

「あ……うふふ……そうですよね」

「ハハハ」


 この、元宿屋のやや大きい家で一緒に暮らそう。そこまで言おうかとも思ったけれど、その日はそれはやめておいた。

 鹿肉はステーキにしてみた。というか、俺に出来るのはそのくらいだ。俺は平気だったが、ハンナにはちょっと固くて臭いもあって食べ辛かったかもしれない。

 見た目は喜んで食べていてくれてるけど……反省だ。

 次からは煮込みにするか。


 翌日。俺はさっそく、大きめの板を用意し、ハンナを呼んだ。


「名前、何がいいかな?」

「うーん……思いつきません……」


 俺もどうも思いつかない……

 あっ! そうだ。

 ハンナが宿をやりたいと言い出してくれた。自分から何かをしたいと。それが宿屋だなんて最高じゃないか。

 これだけの事を、俺に、そしてメリダの村にもたらしてくれた奴らにあやかった名前をつけよう!


『五人の山賊亭』


「変わった名前ですね……?」

「ちょっとロマンチックだろ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



宜しければ是非連載中の作品もご覧下さい

伯爵令嬢エレーヌ・エリーゼ・ストーンハートには血も涙も汗もない
19世紀末欧州風の世界を舞台にしたお嬢様ドタバタ劇です

マリー・パスファインダーの冒険と航海(シリーズ作品)
17世紀前半くらいの近世世界を舞台とした航海冒険小説です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ