第七話
ハーブティの準備が出来た。ハンナに言わせると、ちょっと摘み過ぎたらしい。
本当はたくさんの村人や両親と飲む為の物だったんだろうな……
「大丈夫、俺は本当にハーブティが大好きだからな、これくらい飲んでしまうさ」
俺はそう言って笑った。背負い篭一杯分くらいあるけど、これでどのくらいハーブティが出来るのだろう。少しだけ心配になって来た。
ん? 村に誰か居る? 村人が誰か戻って来たのか?
俺は念の為、後ろからついて来ていたハンナに、ちょっと待てと合図する。
「どうしたんですか?」
「村に誰か居るんだ。山賊とかだと困る」
「えっ……」
ハンナの顔色が曇る。多少は心当たりがあるのかもしれない。
村が襲撃され、村人が去ったという噂を聞きつけたんだろうか……要するに火事場泥棒だ。ある程度は予想してたんだよなあ……やっぱり来るか……
「俺が行って確認して来るか……」
そこまで言い掛けて、俺は急に心配になり出した。まさかとは思うが……ハンナは死ぬべきだったという、あのくそったれの予言が、まだ続いていたりはしないだろうか?
「いや、一緒に行こう、大丈夫だ」
俺は身を隠しながら村に戻る。ハンナにも俺の後ろに隠れさせる。
外の森に残して来ようかと思ったが、やっぱり俺の近くに居てもらいたい。何が起こるにしても、俺の見ていない所で起こるのは嫌だ。
とはいえ、ハンナを巻き込んで荒事になるのも嫌だ。俺は一計を案じた。
「そうだハンナ、先にハーブティの準備をしていてくれないか?」
「えっ?ハーブティ……ですか?」
「ちょうどいい、ここの家は大家族で、大きな食堂があったよな?」
俺はちょうど今身を隠していた家の中の様子を伺う。よし、賊は居ない。
「ここでハーブティの準備をしててくれ、頼むよ」
「……はい、いいですけど……」
ハンナは素直にそう答えた。
俺はさらに身を隠して……男達がうろついている場所に近づく。
「シケてんなあ」
「元々、貧乏村だしな……クソッ、酒も見つかんねえ」
「そこの家はどうだ? 何だ? 鍵がかかってんな」
「じゃあ中にまだ何かあるかもな、へへ、おいそいつを斧でぶっ壊しちまえ」
良かった、賊だな。じゃあ話が早いわ。いちにいさん……五人か。
俺は姿を現す。
「よう」
「……なんだ?てめえ」「村の奴じゃねえな」「一人か?」
「一人だ」
「間抜けな野郎め、俺達の仕事を見られたからにゃ、生かしちゃおけねえな……」「オラァ!」
×××××
「ハーブティの準備はどうだい?」
「あっ、ブレイドさん……先程の方々は?」
「ああ、たまたま近所を通りかかった *猟師* の皆さんだったよ。さあどうぞ、入って下さい……遠慮なく」
俺はハンナに見えないように、扉の外に並べた連中をギロリと睨む。
「へ、へえ」「おじゃましやすぅ」「突然すんまへーん」
「ようこそ……まあ、皆さん! お怪我をされてるじゃないですか!」
「それが、超大きなイノシシが暴れて、大変だったんだってさ! ……な?」
「ハ、ハイハイ」「ええ、イノシシが」「ハハハハ……」
「まあとにかく、上がって……ハーブティをね、飲んで行って下さいよ、折角だから! この村特製のハーブティですよ!」