表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界のブレイドと始まりの村のモブ少女  作者: 堂道形人
ここは廃墟じゃない
5/100

第五話

「なんですか……それ」

「ああ、村の旗だぞ! どうだ! 俺が描いた!」


 火事で焼け残ったカーテンに、大きく俺とハンナの似顔絵を描いた……つもりだが俺の画力だとキノコが二個生えてるだけに見えるな。

 とにかくそれを、俺はロープにくくりつけた。

 滑車からぶら下がったロープを引く。するすると、村の焼け残った門柱に、手作りの旗が揚がって行き……風にはためいた……


「……なんか……へんなの」


 ハンナが少しだけ笑った。元々はもっとよく笑う子だったんだろうな。さすがに今の状況じゃ……ほんの一瞬でも微笑んでくれただけで上々出来だ。


 村は空き家だらけなのに、ハンナは壊れた、元の家に住みたいという。

 この村で暮らすにあたり、俺は密かに自分の中で一つだけルールを決めた。

 ハンナが自分からやりたいと言い出した事は全部応援する。


「じゃあ一旦片付けないとな。それと、ハンナの家にある、使えそうな物は全部使おう」


 ハンナの家の向かいの家は小火程度でほぼ残っていたので、ハンナの家に残っていた鍋やカップなどの雑貨、焼け残った服や毛布、本などは一旦そこに運び込む事にする。


「待て待て、そのカップ! 捨てる事ないぞ、ほらっ、拭いたら綺麗になるじゃないか、まだ使えるぞ、もし使わないなら俺にくれ、俺そういうの持ってなくてさ」


 家財道具を運び出した後は、一度家を解体しないといけない。大工は専門外だが解体までは俺にも出来た。幸い槌や斧などの工具はある程度、村人が置いていってくれていた。


「この柱はまだ使えるな、この窓も平気だ……おお、この暖炉はそのまま残していいんじゃないか?」


 本来なら……あまり亡くなった家族を思い出す物を残しまくるのはどうかとも思ったが、とにかくハンナの意思を優先したかった。

 そして、予想はしていたが「ハンナの意思を優先する」事は、実際にはとても困難だった。


「ごめんなさい、ブレイドさん……私……どうしていいか解らないんです」


 予想はしていた。何故かは解らない。だけどハンナは初めて見た時の活発そうな印象とは裏腹に、ほとんど自分の意志や希望というのを持って居ないのだ。

 俺はそれを、両親を失った事による一過性のものだと思い込む事にした。本当の彼女はちゃんと自分の意思を持ち、自分で考える事の出来る人間に違いない。


「足りない材料は他の空き家から貰う事にしよう。今日はもう遅いな、ハンナ、元の家が直るまでは、そのお向かいさんの家を借りなよ、その家の中、もうハンナの家の物だらけだしな」



 俺はその隣の家に住む事にする。

 正直、同じ家に住んでもいいと思うし、俺がそう言ってもハンナは反対しないと思うが、それではいけない気がした。ハンナが一緒に住みたいと言い出さない限り、俺はハンナとは別の家に住む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



宜しければ是非連載中の作品もご覧下さい

伯爵令嬢エレーヌ・エリーゼ・ストーンハートには血も涙も汗もない
19世紀末欧州風の世界を舞台にしたお嬢様ドタバタ劇です

マリー・パスファインダーの冒険と航海(シリーズ作品)
17世紀前半くらいの近世世界を舞台とした航海冒険小説です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ