表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/100

第二話

「お母さん! お父さん!」


 少女は走りながら叫んだ。

 何故この子は、たった今大爆発が起きた所へ全力で走って行くんだ!?

 まだどんな危険が待っているかも解らないのに!


 俺の「通常より速い全力ダッシュ」は確かに早く、そしてスタミナの消耗が激しかった。まずい、追いつく前にスタミナが尽きる可能性が……間に合え! 間に合え!


「よせ!」


 間一髪だった!


 ――ゴワァアアアアアア!


 ギリギリで少女の前に飛び出した俺が見たのは、村の広場の中央で炸裂する火の玉だった!


「キャアッ!」


 少女は俺の背中にぶち当たった。俺は正面から少し炎を浴びた!

 くそ熱…くない?


「近づくな! 離れろ!」


 俺は振り向いて少女を見た。かなり驚いてはいるようだが、正気は失っていないようだ。


「村に……お父さんとお母さんが!」

「俺が行くから! その塀の影に……」


 そう言い掛けた俺の上から……何かの影が覆いかぶさった……


 ドラゴン……

 俺は何故かその生き物を知っていた。翼を持ち火を吹くトカゲ。強大で傲慢な魔獣の王。


 次の瞬間、旋風と砂嵐が舞い、俺は視界を失った。


「ぐっ……」


 ――グアアァァァァァッ!!


 頭上で咆哮を上げるドラゴン!

 ……危ない!

 俺はろくに目も見えぬまま、村の石塀の方へ駆け寄る!


「返事をしてくれ!」

「は……はい!」


 俺は声のした方に手を伸ばす。砂嵐が一瞬晴れ……

 泣きそうな顔の少女が見えた……


 俺は押し倒す勢いで、というより完全に少女を押し倒して地面に伏せさせる。

 同時に凄まじい破砕音が俺達を包む!

 ドラゴンが村の門柱に着地しそれを粉砕したのだ!


 ――ギエエエエェェェェ!!


 再び咆哮を上げ離陸して行くドラゴン。

 くそっ! 何だってんだ!


「お、おい! 無事か!」


 俺は…名前を知らない少女に呼びかける。無事か!? 無事であってくれ!!


「は、はい……でも!」


 砂嵐がようやく晴れて来る。俺は立ち上がり、少女を助け起こす。

 細かいすり傷などは負っているようだが、どうにか無事のようだ……俺ではない、その少女が。


「あなたが怪我を……!」


 そう。俺は正面から火の玉の爆風を浴びた火傷と、背中に降り注いだ石や丸太によるダメージを受けていた……はずだった。

 実際、何ともない訳ではないのだが……奇妙だ。受けたダメージは俺の行動を何らさまたげる物ではないらしい……普通、例えば足を強打されれば、全力で走る事など出来なくなると思う。

 だけど今の俺は、死ぬ直前まで全力で動けるらしい。何故かは解らないが、それがはっきりと解る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



宜しければ是非連載中の作品もご覧下さい

伯爵令嬢エレーヌ・エリーゼ・ストーンハートには血も涙も汗もない
19世紀末欧州風の世界を舞台にしたお嬢様ドタバタ劇です

マリー・パスファインダーの冒険と航海(シリーズ作品)
17世紀前半くらいの近世世界を舞台とした航海冒険小説です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ