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異界のブレイドと始まりの村のモブ少女  作者: 堂道形人
この村を出たくない
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第19話

 俺がメリダ村に住み着いて、一ヶ月が経った。

 ハンナの元の家は、ようやく今日完成した。俺の今の能力じゃこれが限界だなあ……隙間風は入るし、床も軋みがする……

 だけど最近俺達は、自然に五人の山賊亭で過ごす事が多くなっていた。俺は夜には自分の家に決めた家に帰って寝るが、ハンナはそのまま宿で寝る事も多い。


 正直、俺はハンナはこのまま五人の山賊亭の方で過ごした方がいいと思う。俺が建てた家はボロい。

 だけど、俺がこの家が完成した事を告げたら、ハンナは喜ぶふりをしてこっちに引っ越すだろうなあ……

 この家はまだ完成していない事にするか……改良点もあるかもしれないしな……


 メリダ村の生活は意外に順調だ。門も直ったので夜は閉めて眠れる。

 天候も順調で、例のドラゴン襲撃より後に植えた作物も順調に育って来た。


 村の外にもある程度気軽に行くようになった。

 先日は初めて湖にも降りた。今は鱒の季節だと聞いたのだ。


 ただ、俺の手製の投網はどうしても思ったように広がらず、二時間やって獲れたのはドブにでも居そうな鈍い鯉一尾と、痩せた小魚数尾だった。


 鯉はそこそこ大きかったが、しつこい骨を取っている間に細切れになってしまったので、だんごにして煮て食べた。

 小魚は骨が柔らかいので、焼いて丸ごと食べた。どちらもあまり美味くはなかったが、珍しいのでハンナは喜んでくれた。


 先日のサンバンの件もある。田舎の屋外はやっぱり安全とは限らないのだ。

 だから俺達は、村の門を出る時は二人で行く、と約束する事になった。

 俺は今まで、見回りの時は一人で行ってたし、これからもそうするつもりだったんだけど……ハンナの方から言って来たのだ。


「ブレイドさんだって、一人じゃ危ないです!」


 お腹を壊して三日間寝込んでその間完全にハンナの世話になりっぱなし事件以来、俺達の関係は少し対等になって来た気がする。

 これはとても嬉しい事だった。完全な対等、いやハンナの方が少し上くらいになるといいなあ。この村では俺の方が後輩じゃないか。


 そう思っていたのだが……


「だからブレイドさん、それはアオテングタケなんです、食べたらお腹を壊すんです!」

「で……でも斑点がないから……エッグタケかなって……」

「雨が降った直後は斑点が無くなってたりするんです、傘の根元を見て下さい、エッグタケはこっちなんです」

「あっ……そっかぁ……」


 ……単に、俺はあの一件以来、彼女の中では「食いしん坊でうっかり者のブレイドさん」というキャラになってしまったらしい。

 まあ、このくらい気楽に接してくれる方が俺も楽しいし、いいか。

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