第10話
ハンナが両親と住んでいた家を、俺は少しずつ再建していた。素人仕事なので時間がかかるが、しっかりした物を作りたいので手抜きはしない。
骨組みは全部再建出来たし棟も上げた。次は床かな。
そんなある日の事だった。
誰かが村に続く道を歩いて来る……それも三人。若い男が一人……その後ろに女が二人。
男は三白眼で何を考えているか解らないタイプの人間に見える。腰には剣を帯び、眩しい白銀の胴鎧も着ている。ちょっと戦士にしては体格が細い気もしないではないが、肩幅はかなりのものだ……正直、かなり腕が立ちそうだ。
後ろの女は……一人は……黒と紫を中心にした配色の、ずいぶん金がかかった感じのドレスを着て、同じ色の大きな帽子も被っている……雰囲気、黒魔術師だろうか。
もう一人は白魔術師か……こちらは白い装いだが、どうしても肌色の辺りに目が行ってしまう……立派な巨乳だな……惜しげもなく胸の谷間を曝け出している。
どちらも滅多にお目にかかれないような、大変な美人だ。凄いな、あの男……
ハンナも旅人の姿に気付いたようだ……ハンナ?
彼女は……菜園をいじる手を止め、村の中を通る道の脇へと歩いて行き……立ち止まった。
三人の旅人は近づいて来て、村の門をくぐった……
「旅の人? ここはメリダの村よ」
ハンナは言った。
なんだろう、この言いようのない寂しさは……いやいや、あれは確かに彼女の仕事の一つだったのだ。だから俺だって彼女と出会えたのだ。そうなんだが……
男が口を開いた。
「この村には、宿はあるかな?」
ハンナが答える前に、黒魔術師の方が口を開いた。
「ここには無いわよガードナー。だからベラルクスに泊まろうって言ったのに」
失礼な事を言う女だと思った。いや……仕方無いか、確かに一時期は無かったのだ、旅人ならそれを知っていても不思議はない……俺は知らなかったが。
「あ、あの……ここは宿屋です……」
ハンナは俺に目配せして来た。見て見て? 私宿屋さんみたいでしょ! 彼女の目がそう言っていた。嬉しそうだなあハンナ。俺も嬉しくなって来た……
「……一泊いくらなんだ?」
男が言った。無粋な事言うなよ……あ、でもこれは言わないハンナも悪いのかな……まあまだ不慣れな宿屋なんで許して欲しい。
「あっ、ごめんなさいっ、ひ、一晩6ゴールドになりますが、お泊りになりますか?」
「6ゴールド? 一人? 三人?」白魔術師。
「三人6ゴールドは安過ぎるだろ」男。
えっ、えっ? という顔で、俺に助けを求めて来るハンナ。
仕方無い、俺が行くか……
「はいはい、娘がすみません」
面倒なので俺は初手からウソをつく。
「一人6ゴールド、三名様で18ゴールドになりますが、お泊りになられますか?」
次の瞬間。男は真顔で俺を見て、言った。
「あんた……もしかしてブレイド?」