表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/100

第10話

 ハンナが両親と住んでいた家を、俺は少しずつ再建していた。素人仕事なので時間がかかるが、しっかりした物を作りたいので手抜きはしない。

 骨組みは全部再建出来たし棟も上げた。次は床かな。


 そんなある日の事だった。



 誰かが村に続く道を歩いて来る……それも三人。若い男が一人……その後ろに女が二人。


 男は三白眼で何を考えているか解らないタイプの人間に見える。腰には剣を帯び、眩しい白銀の胴鎧も着ている。ちょっと戦士にしては体格が細い気もしないではないが、肩幅はかなりのものだ……正直、かなり腕が立ちそうだ。


 後ろの女は……一人は……黒と紫を中心にした配色の、ずいぶん金がかかった感じのドレスを着て、同じ色の大きな帽子も被っている……雰囲気、黒魔術師だろうか。


 もう一人は白魔術師か……こちらは白い装いだが、どうしても肌色の辺りに目が行ってしまう……立派な巨乳だな……惜しげもなく胸の谷間を曝け出している。


 どちらも滅多にお目にかかれないような、大変な美人だ。凄いな、あの男……


 ハンナも旅人の姿に気付いたようだ……ハンナ?

 彼女は……菜園をいじる手を止め、村の中を通る道の脇へと歩いて行き……立ち止まった。

 三人の旅人は近づいて来て、村の門をくぐった……


「旅の人? ここはメリダの村よ」


 ハンナは言った。


 なんだろう、この言いようのない寂しさは……いやいや、あれは確かに彼女の仕事の一つだったのだ。だから俺だって彼女と出会えたのだ。そうなんだが……


 男が口を開いた。


「この村には、宿はあるかな?」


 ハンナが答える前に、黒魔術師の方が口を開いた。


「ここには無いわよガードナー。だからベラルクスに泊まろうって言ったのに」


 失礼な事を言う女だと思った。いや……仕方無いか、確かに一時期は無かったのだ、旅人ならそれを知っていても不思議はない……俺は知らなかったが。


「あ、あの……ここは宿屋です……」


 ハンナは俺に目配せして来た。見て見て? 私宿屋さんみたいでしょ! 彼女の目がそう言っていた。嬉しそうだなあハンナ。俺も嬉しくなって来た……


「……一泊いくらなんだ?」


 男が言った。無粋な事言うなよ……あ、でもこれは言わないハンナも悪いのかな……まあまだ不慣れな宿屋なんで許して欲しい。


「あっ、ごめんなさいっ、ひ、一晩6ゴールドになりますが、お泊りになりますか?」

「6ゴールド? 一人? 三人?」白魔術師。

「三人6ゴールドは安過ぎるだろ」男。


 えっ、えっ? という顔で、俺に助けを求めて来るハンナ。

 仕方無い、俺が行くか……


「はいはい、娘がすみません」


 面倒なので俺は初手からウソをつく。


「一人6ゴールド、三名様で18ゴールドになりますが、お泊りになられますか?」


 次の瞬間。男は真顔で俺を見て、言った。


「あんた……もしかしてブレイド?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。



宜しければ是非連載中の作品もご覧下さい

伯爵令嬢エレーヌ・エリーゼ・ストーンハートには血も涙も汗もない
19世紀末欧州風の世界を舞台にしたお嬢様ドタバタ劇です

マリー・パスファインダーの冒険と航海(シリーズ作品)
17世紀前半くらいの近世世界を舞台とした航海冒険小説です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ