表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

17話 ナージェスは人を知る

僕は知っている。

まだ生まれたばかりだけど。




僕が力を蓄えて、そろそろ魔族の形をとろう魔力を吸収しはじめた時。

食べても食べてもお腹がいっぱいにならなくて。

まだ足りないと思ったら、餌場の端っこでちょっと変わった魔力を見つけた。


変わった物も食べてみたい。

食指が動いた僕は、それを引き寄せて味見してみたんだ。


そしたら、それまでの食事エサとは違う感情が流れてきて驚いた。

それまでの食事では、黒くて蠢く意味のない感情だけだったのに、その食事エサは実にたくさんの感情を与えてくれた。


無償の愛を与えるのが母親だと食事の中で知ったから、つまり、あの食事は母親ママだったってことでいいんだよね?


本当はアレをゆっくりと食べ尽くしたかったのに、同族の何かに無理矢理満足させられちゃったんだ。

いっぱい、い〜ぱい出してくるから、それでお腹がいっぱいになっちゃったんだよ。

でも、その何かの食事で理由がわかった。


同族や親が死んでしまうような食べ方はダメってことだったらしい。家族は大事で、自分の、自分だけのスィートハートはドキドキと胸が高鳴る存在なんだと知ったんだ。

それを教えてくれたのが同族ってことは、あれが僕の父親パパだったんだろうと思う。


なのに酷いんだよ。

僕は、僕が生まれる時に仲間を作ってたくさん出したんだ。

それらは、僕の力を分けた僕の忠実な手駒になる存在なのに、母親ママ父親パパが潰していくんだもん。

獅子の子落としって言うんだって。

父親に父親のスィートハートが教えてくれたらしい。

父親のスィートハートは物知りなんだね。


僕はたくさん知っているけれど、それがどういうことなのか、まだ知らないんだ。


せっかく作った最強の手駒を次々に潰されて、あと20体になったところで、遠くからキラキラ輝く人がやってきた。


その人に僕の目は釘付けになってしまった。


だってキラキラしている。

あれが母親が教えてくれた、天使というものに違いない。

空を飛び、キラキラしたものが彼女から飛び出して、くるくると回って次々と僕の手駒を踏み潰す美しい天使。


手駒が潰れるたびに、僕の胸がドキドキと高鳴る。

ああ、これが恋!

あの子が僕のスィートハート!


父親の知識と同じ、胸の高鳴りだもん、間違いない。

彼女が僕のスィートハートなんだ。


しばらくすると彼女の方からいい香りがしはじめた。

ああ、美味しそうなにおいだ。

舐め回したい。


まだ力が馴染んでなくて、同じ速さで追いかけられないのが残念で仕方ない。


でも、でも待っていてね。僕のスィートハート。

きっと、君を幸せにしてみせるから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ