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12話 ミルタはおいしいらしい

その日私たちは、質のいい大き目な魔石が手に入り浮かれていた。


ここの連中は倒した魔物に執着がないのか、放り捨ててあることが多い。

中には希少で美味な部位を持つ魔物もいるのに、だ。

最初はそれを切り取り料理長に引き渡せば、美味いものが食える。その程度の考えだったのだ。


なのに

『なんて素晴らしい方なんだ、ミルタ様は!最近では食料の確保も大変でして』

おいおいと涙を流して感謝されれば嫌な気はしない。


だから、それは私たちの仕事にした。

私はともかく、2人の戦闘能力は低いからな。

ついでに魔石を取り出すことにしたのは、まあ、愛嬌だ。

どうせ捨ててあるものだし、いいだろう?


「おい、もう少し奥まで行ってみるか?まだどこかに放り捨ててあるかもしれん」

私が意見すると

「もちろんでございます」

「さすがミルタ様。皆のことを考えて行動するお姿は素敵です」

とすぐに乗ってきた。


それが間違いだったのだ。


「今日はどこにもありませんね」

「他のきし達はどこに行ったのだ?」

魔物の死体も騎士もどこにも見当たらない。


何かあるのかもしれないな。


「中断して、砦に戻ろう」

私は、2人を自分のわがままに付き合わせている自覚がある。

けれど、それにより恩恵も得ているだろうから、そんなことは遠慮しない。


だが、命に関わることは別だ。


自分の思いつきのお遊びに、命までかけることはないのだ。この2人には感謝しているのだから。

足を砦の方に向けて歩き出そうとした、のだが。


……身体が、そちらに、進まない。


「ミルタ様?」

「どうかされましたか?」

怪訝そうに2人が振り返る。


もう10歩ほど歩みを進めていた2人が、動き出さない主に戸惑いを隠せない。


もう一度動こうとして…………後ろに引っ張られる感覚に血の気が引いた。


何が起きている?


足を踏ん張ろうと力を入れて、その瞬間力強く引っ張られた。

思わず尻餅をついた私に、2人が走り寄る。


何か起きている。


ズルズルと地面を引きずられるのを、2人が抑えようとしても、3人の力で抵抗しても、敵わない。

これは、おかしい。


「お前達は砦に帰れ!」

何かあった時、私の身は守られても、お前らは捨てられる可能性の方が高いんだぞ!

そんなことに気づいていないお前らじゃないだろう?


「嫌です!」

「ミルタ様を1人になどできません!」

梃子てこでも動こうとしない2人に、何か理由がないかと頭を巡らせる。


「では、どちらか1人砦に助けを呼びに行け」

2人は顔を見合わせ、カシュータが走り出した。

と、私の身体が一気に引きずられる。


「ミルタ様!」

走り出したカシュータがすぐに戻ってきて、私を引っ張る。


「ミルタ様、ダメです。ミルタ様を置いて行けません」

アルゴンの方が力があるのに、私を抑えておけないとは、ということらしい。足が速いのはカシュータで、力が強いのはアルゴンだ。

アルゴンが砦に行く選択肢は、ない。


でも、この時、それでもカシュータが砦に走っていたら、何かが違っていたかもしれない。





打つ手もないままズルズルと、そして、モッ木にめり込んでいく、私の身体を。

力の抜けていく、自分の身体を。


なるほど、この木は魔力を飲み込みたいだけだ。

痛くもなんともない。

あるのは、経験したことのない、脱力感だけ、だ。


「お前達は、か、帰れ」

もしそうならば。

魔力のほぼない2人は、まだ、帰れる可能性がある。

けれど、ハラハラと涙を零す2人は、しがみつくようにして離れようとしなかった。


……お前ら、バカだなあ。


こんな私のために、命まで捨てることはないのに。

でも、だからかな。

もう、死はそこまで来てるだろうに、怖くない。


私は、力の入らない手を伸ばして、2人を抱きしめた。





実はミルタ様はおバカなだけで、いい子なのです。


っていうか、コメディ、どこいった

(゜Д゜≡゜︎Д゜)

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