帽子
暖かい目でご覧下さい
大きな麦わら帽子に白いワンピース。照りつける夏の青い日差しを、空と海から一心に受け、白い砂浜を何も知らないような無邪気さで走り回る。
どんな顔で。どんな気持ちで。
ひさしの大きな麦わら帽子はあの人の顔を私に見せてくれなかった。
でも、あの人はすごく綺麗だった。しなやかな腕と足の動きの一つ一つも、チラチラ見える首筋も、そして何より麦わら帽子に隠れてしまって逆に神秘的になった顔も。全てが綺麗だった。
今も私はあの人を探し続けている。
親に聞いても、小さい頃から世話になっているバレエの先生に聞いても、誰に聞いても、私が小さい頃そんな砂浜で謎の女の人に出会った覚えなど無いと言い張る。でも、私は確かに見た。
いつどこで、どういういきさつか全く覚えてないけどあの光景だけはしっかりと網膜に焼き付いている。
社会人になって、昔の好奇心旺盛な自分を捨てた。興味のない化粧を始めた。趣味も持たないようにしている。頑張れば頑張るほど無機質になっていく生活。耐えれるのはあの人に会う瞬間を待てばこそだ。
言わば、恋。レズじゃないが、よもや男に興味はない。
そんなある日、疲れて仕事から帰る途中、私はいつも前を通る電化製品屋のサンプルのテレビの前で足を止めた。
白い砂浜、照りつける日差し、画面の中央に立っているのは……
歳子です……
この間、バイト先で「高一に見えた」って言われて童顔なのかって喜んでたら、「いやあまりにも態度がおどおどしてるから」と言われて、なんとも言えない気分になりました……歳子です……
レズじゃないけど、女と結婚するのもいいと思っています……歳子です……




