音楽相談所での初仕事-2
由井さんと、彩夏へ。
由井さん、彩夏のことを何も伝えずにいて驚かせてしまっていたらごめんなさい。多分彩夏が何となくの推測はしたと思うから、その内容と合わせて読んで下さい。
別の楽譜を簡単にしたものだとも見えるけれど、それにしては、左手と右手で完成度が全然違う。さらに、右手のメロディーも元の曲と比べると、中途半端に主題を拾っている。でも左手のメロディーはきちんと主題を拾っている。
また、左手には和音が何度も出てくるのに右手には最後まで一回も出てこない。そういうことをふまえると、これは、右手と左手を作った人が違うと考えた方が自然。
さらに、難易度が違うことから二人で引くことが想定されている。もっと言えば、書き込みがないから長い間弾く予定の曲、例えば練習曲や発表用の曲ではないとわかる。
また、発表されたときからして、一見すると元の楽譜に見える楽譜の方があとに出ている。
そろそろバスを降りるのであとは、彩夏が説明して。
初めての仕事で大変だと思うけど由井さんも頑張ってください。相手の立場に自分を置き換えて考えてみれば最善の策はとれなくても、喜んでもらえるはずです。
岩原さんからのメールを彩夏さんと一緒に見た後、彩夏さんは目の前でマジックの種明かしをされた後の子供のように驚いた顔をしていたが、呆れたような顔をした。
時間がないとか言いながらあらかた説明してる野郎め。そのくせこっちも気づかなかったようなことまで気づいて、どこまでの嫌味を言ってくる気なんだか。とりあえず、このメールに書いてあることまではあんたもわかったね。
何とかメールを一読しただけで内容を理解できたのでうなずく。そのあと、彩夏さんは手元の紙に書き込みながら次のように説明を始めた。
あいつが何を言いたいかというと、右手を一番最初に書いた奴はそれほど技術がない。そして、そのあとに左手と右手のアレンジをしたやつは技術がある。
また、練習用の曲ではないということは、何かのために作った訳ではない。また、和音が使えないということは、一般的には幼いことが推測できる。
そのあと、彩夏さんから細かい説明を受け、詰めの調査を行った。依頼主には、この週末に依頼主の両親と一緒にマンションのスタジオルームで報告することで、約束した。




