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【改稿前】「作者」4

 茶柱が倒れてから数十分。

 やっと正気に戻ったヘルプ、そして泡を吹いて倒れたヤンスキャラの奴、女性だからという優しさなのか……ただ気絶している赤眼鏡の女性。

 何故かここは一戦終わった戦場の様な気がした。


「さて、話に戻ろう。まずはこいつらの紹介をする」


 ええ⁉ こいつら死んでますけど⁉ さり気なく話を戻そうとしても意味ないよね⁉


「では……こっちの赤眼鏡の女性が"テング"、名前から天狗らしいかどうかは別として私とは別の側面で賢い優秀な人材だ」


 本当に続けるのかよ……

ほぉ……しかし、優秀ねぇ……って言われても倒れてますしなぁ……


「次に、この泡吹いて倒れたヤンス口調の奴が"ヤス"だ、覚えやすい名前だろ。ヤスは調査において疑問点を見つける優秀な人材だ」


 へえー……優秀なんでヤンスか……


「そして俺がさっき話したようにヘルプ・コールマンだ。この隊のリーダーをやっている優秀な人材だ、俺がこの隊の創始者だからな!」


 ……そういえばお茶飲んでなかったな……あちゃー……ぬるくなってる……


「興味持てよ! 特にバンダナ!」


 ヘルプに呼ばれて俺は少し驚いた。こいつをキレさせてはいけないと直感がそう囁いているからだ。


「あのー……質問しても良いですか?」


 ニジイロが恐る恐る手を挙げる。


「構わない、答えよう」

 ヘルプの眼鏡が少しばかりか光ったような気がした。これは優秀な我々を見せつける為、もしかしたらこの可愛いニジイロを引き込む為に興味のそそる自信満々な回答をするのに気合を入れたのではなかろうかー!

 期待した面持ちで待つヘルプ、これは隊員も増えて、更に我々が優秀になるだろうとか考えてそうなのが伝わってくる。何故なら彼は少しニヤけているからだ。そんな彼に対して彼女は口を開くが、予想外なものだった……


「三人で隊って言っていいものなんですか?」


 うん……えぇ……あぁ……無慈悲。

 確かに隊にしては人数が少ないと思ったけどね、ニジイロそうじゃないんだ……もっとミステリーや科学的なアレコレを聞いてほしかったんだと思うよ……

 目線をヘルプに変えると、彼は少し悲しそうな目をしていた。それはニジイロに隊への興味が無さそうな質問をされて勧誘は無理だと悟った事にではない、多少、隊のリーダーとか見栄を張った己を悔いているのだろう、握り拳が様になる。

 確かに国が隊として認めちゃっているから彼の見栄は別に見栄でもないし自慢しても良いものだろう。しかしだ、彼はいま自分の口で自ら『俺がこの隊の創始者だからな!』と喋ったことによりこの三人で隊と名乗らせているのは必然的に国家のお偉いさんか、創始者である彼しか居ない。

 ちなみに隊に人数の定義はないが、どんなに少ない小隊でも十人は居るという。流石に国家側は隊の人数編成なんかは、ほぼ毎日やってるだろうし……誰が隊と名乗らせているのかは明確だろうな。


「……国家の精鋭となるとな、試験の難易度は高く、王都で王族絡みの職に就けるのは難しいんだ、三人しか居なくても仕方ないと思うぞ! 私は!」


追い詰められたからって急に開き直ったぞー、この白衣眼鏡。本当に優秀の集まりか……?

 ちなみにこの国の名前は"ヒョウコク"、アイスランドみたいな名前してるけど全くの別物ですよ? 場所は日本の北海道ってとこに近いと聞いた。

 実際、ここみたいに寒い地域が北側に六割程あり、氷の国ヒョウコクと呼ばれてるらしい、そして国家の精鋭が集うこの国の要、"王都"。南に位置しているからというわけでもないのだが不思議な事に春のような暮らしやすい気候である。なんで今、説明したかというと、俺ら二人が旅でとりあえず目指すのは王都だったりするのだ、目指す理由は王都は栄えている街、つまりそこからの旅路の情報を集めるには打ってつけって訳です、ハイ。


「う……オイラは寝てたでヤンス……?」

「ふぁーあ!おはようございます皆さん……?」


 二人は深い眠りから覚めた気分でリフレッシュして起きだした。どんな身体してるんだこの二人……


「いつもこんな感じなのか? ヘルプさんよ……」


 俺がこっそり耳打ちするとヘルプは頷く。


「どうしてこうなるのかは私にも分からん。彼らが優秀だからって事で納得してくれ」


 優秀ってスゲェな……

 考え深いというか、むしろ大迷宮よりこの二人を研究してみた方が珍しいデータとか取れそうなもんだがな。


「あ、そういえば大迷宮に行って入り口を早めに開けないと……!」


 ニジイロの声でそういえばそうだったと思い出す。

目の前に居る、怒らせると怖い優秀な人材で本来の目的を忘れるところだった。


「それもそうだ、お前に先に開かれては我々の立場もない……行くぞ、ヤス、テング!」

「はいでヤンス!」

「はい!分かりました!」


 思い付いたら即行動、声をかけるだけで瞬時に立ち上がる彼ら。

この会話や動作という一連の流れを見て、彼らの統率はよく取れている。もしかしたら国家が試験を難しくさせているのは少数グループをわざと作り、互いの協調性、信頼性を高める為ではないかと少しぎってしまったが、まぁ考えすぎか……

ただ、彼らは何だかんだで仲が良い、笑顔がどことなくあの三人から溢れているのは良いことだ。


「楽しそうですね、彼ら……」


ニジイロの耳打ちで気付くが、我々も長い付き合いだ、信頼関係の高さでは負けられない!


「よし、あいつらに負けないよう頑張るぞ! ニジイロ!」

「ええ、私達が負けるはずありませんから……!」


 彼女は笑顔を見せた、可愛いらしい良い笑顔だ。虹のような輝きが自分の瞳映りゆく。

笑顔という名の気合を入れ、テントを出ようとした時だ。

ヤスとテング……だったか。この二人が慌てて付いてきて、

「そこのお二方! 楽しそうな顔をしてるでヤンス!」

「えっ⁉ 私達ですか⁉」

「そうですよ、あなた達ならきっとこれからも頑張れるはずです! 可愛い良い顔をしていたので、そう思っただけですが……アハハ」

「確かにそうですね……しかし、あなた方も私達より仲良さそうでしたよ?」


ニジイロの問いに全力でテングとヤスは答える。


「「応ともさ!!」でヤンス」

「だからこそ私達も負けられないんです、ね? ヤス!」

「そうでヤンス! 我々も負けられないからお互いに頑張ろうでヤンス!えぇっと……」


そういえば二人に自己紹介してなかったな……

それに気付いたニジイロはそのまま笑顔で真っ先に切り出す。


「私の名前は雨野アメノ 虹色ニジイロ、覚えてくださいね」

「よろしくでヤンス、オイラはヤスでヤンス!  以後お見知りおきでヤンス!」

「私はテング・レムリア、呼ばれ方はテングですが、レムちゃんって呼んでもいいんですよー!」

「テング殿、もうすぐで二十代後半入るんじゃなかったでヤンス? レムちゃんはそろそろキツい気がするでヤン……ひぃっ⁉」

「何か言いましたかぁー? ヤスさぁーん?」

何この子、怖い。年齢言われた時の覇気が凄いぞ……

「とっ……ところでっ!そこの君はなんて言うんでヤンス‼」


あ、俺か……そういえばろくに自己紹介が出来てなかったな、うーん……そうだな……


「ヤスとテングだったな、よろしく頼む。俺の名前か……"バンダナ"とでも呼んでくれ、そういう愛称だからさ」

「……」

「分かったでヤンス! よろしくでヤンス、バンダナ殿、ニジイロ殿!」

「よろしくお願いしますね、バンダナさん、ニジイロちゃん」


ここで遅れて、ヘルプが出てくる。


「改めてよろしく頼む。ニジイロ……そして、バンダナ……フッ……変わった愛称だな」

「そりゃあ良かった、ヘルプ・コールマンってのも面白い名前してるけどな」

「それもそうか、でもお前の場合は本名を聞いてない……お前の名前は一体?」


……それもそうか。だけど……


「そうだな、じゃあゲームにしよう! もし俺らが負けてお前らが勝ったら本名を明かすってのはどうだ? 俺らが開けた時はこっちが大迷宮を調査出来る。お前らが勝ったら俺の名前を知る事が出来る。それで条件は互いに生まれると思うが?」

「少し条件が吊り合ってない気がするが、いいだろう、それで行こう」


互いに条件が生まれて、互いに負けられない状況となった。


「どうした、ニジイロ?」


ニジイロを見れば少しだけ、さっき向けていた笑顔が薄れた気がした。


「い、いえっ! 大丈夫です、いつでも行けます!」


咄嗟に彼女の笑顔は先程の輝きに戻る。


そう、俺らはこれから大迷宮を開けてやるっ! ────負けられるものかッ!


テント入り口の垂れ幕は開けられる────

既に、大迷宮を開ける気分で、必ずこの垂れ幕のように開けてみせるから……!

全員が気合いを入れて向かう先は、未開拓の地。

それぞれの性格に難は多く、個性という名の矢印は四方八方に向いてしまってはいるものの、足先だけは皆、同じ方向を向いていたのだ────

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