フレンチラベンダーー悪い子動く子オートマタ
2018/10/13
みんな久しぶりに私服に戻っていた。
数日空けていただけで、Kの体調が戻った以外は何かと変化はなかった。どっさりと布団に腰かける。まだ頭はガンガンするが寝起きよりはましだろう。そうパウロスは寝床に入ってまた眠りについた。
ルナはもうピンピンしていた。寝奥の唸りが嘘のように、元気にクリアとみぃと仲良く遊んでいる。仕事のことはすっかり忘れている。ここ最近、月華の目を盗んで抜け出してきているらしい。そろそろ見つかりそうだが。
ディフに関しては、リビングのソファーで紅茶を飲みながら先日の疑問を片付けようとした。しかし全く思いつかない。Sに質問でもと思ったが、一向に見つからない。暫くは一人で考えるしかなさそうだ。それかまた赴いて彼を探すか、しかしそんな気分もなかった。何でもないだろうと自己解決した。
フィヨルドは…周りと違って、またあの部屋にいた。点描彫りの扉のその奥、あの本棚の前に胡坐をかいてクリアと一緒に本を開いていた。今日はベッドテーブルに小さな小瓶が置いてあったが、あまり気に留めなかった。
この前と同じように、クリアが読み、フィヨルドがメモに取る。
「(賢い子だ。)」
年齢は分からないが、読み方が拙い以上人の言葉を理解したてなのだろうか。とも思える。すらすらと暗号のような文字列を読んでいく。今は内容を理解はしない、後でじっくり読んでおくつもりだ。
しかし。
「ねぇふぃよにぃ、ここからまっしろだよ?」
「…うん?」
そういわれて見れば、ページの途中で文章が途切れあとはすべて最後のページまで白紙だ。この本で最後なのか。それとはいえ、文章にしては終わりが不自然だ。
考え込んでいると、背を向けていた扉がギィィ…と音を立てる。その途端に、クリアはフィヨルドのマントの中にくるまって隠れてしまった、まるでおびえる様に。
「どうした。…!」
扉がひとりでに開くはずがない。もしかしたらあるのかもしれないが、今までフィヨルドが見たことはなかった。
その扉を見る。…テディベアがそこに。
いや、ギザギザの鋭い歯をカチカチいわせながら包丁を持ってそこに一人で立っていた。
ただのホラーでしかない。
「……なんてことだ…。」
フィヨルドが声を漏らした。いやこれくらいなんともない彼だが、まさか他の場所でこのようなモノに会うとは思っていなかったからである。
らんらんとベアの作り物の目玉が炎に照らされて反射している。その黒はしっかりとフィヨルドの顔を捕えていた。逃げ場はない。というより、そもそも、敵なのだろうか?
「あなただぁれ?」
ふと女の子の声が聞こえる。その後ろにモノクロゴスロリのワンピースにモノクロの大きなリボンを頭の上に付けた紫髪のツインテールの女の子がうっすらと暗闇に見えるのが見えた。
「わるいこはいる?わるいこはおしおきしなくちゃいけないの。」
首を傾げて、彼女はこっちに来た。顔がよく見えるようになる。ぼぅっとした目、右目には眼帯を付けている。一歩来るたびに微かに、キュッと軋む音がする。
「(あの子、自動人形か。しかしリアルだな。)」
「わるいこいる?」
「居ないぞ。良い子はいるけどな。」
「そう…いこうてでぃ。」
そう言ってオートマタ―の彼女はテディベアと一緒に暗闇に溶けてしまった。
「…いったぁ?」
そっとクリアが後ろから顔を出した。まだ少し震えている。
「きっとぼくがまだおきてる、わるいこだからおしおきしにきたんだ…。」
「じゃぁもう寝よう。付き合わせてしまって済まなかったな。」
「ううん、ふぃよにぃおやすみ。」
部屋まで送るとフィヨルドも自分の寝る部屋に戻った。
ベッドに潜り込み、手帳をそばに置いて寝転がる。
「しかしまだ住民が居たんだな。…いやあれは住民なのか…?」
そう考えながら、朝になるのを待って目を瞑った。
【朝も夜も変わらぬ明るさ。起こしてくれるのは自身の腹時計だ。】
おはこんばんにちは、朔で御座います。
70話超えましたね前回あとがき描いてるとき気が付かなかった…。あの子は昇進正銘のオートマタです以外何も今は何も言えない。
次回からまたバトルに乗り込む流れになるかなーという予定。
ではまたこの世界でお会いいいたしましょう。