アカシアー隣に映るもの
出来ました―。
「お、おい…!」
「え、なんだなんだ、袖を引っ張るな…!」
ディフとフィヨは訓練が終わった途端にSに腕か袖を引っ張られ更に下の階に連れてこられた。Sにの表情には焦りが出ている。
【最下階ー鏡の間】
その部屋に扉はない…否、そこは暗くて広さがわからない。通った道筋の両脇には透き通った鏡が並び、自分たちが鮮明に映っている。
ディフは不思議な空間を見回しながら自分の手が崩れていくのを気にせずには居られなかった。痛みは無いがそろそろ危機感がこみ上げてきそうだ。と…。
「…!?」
横目にではあるが、確かに異変を感じた。彼が映る鏡、いや、彼に似た翼と尾が無い懐かしい人物の姿が映っていた。
しかし瞬きをすると、いつもの自分の姿であった。
「あれ…。」
フィヨは鏡なぞ気にしていなかった、それよりも掴まれている腕に人の体温が感じられないのが気になっていた。
「…。|(この世界の人は体温と言うものがないのか…?)」
Sの手の平、肌はまるで『氷水にずっと浸していたかのように』冷たい。そして少しかたい感触がある。
そうこう2人が考えているとSはいきなりスピードを落とし、
「うりゃ!」
と、2人を鏡に向かって投げた。
「「…はあ!?」」
…当たった感触と割れた硬い感触はしなかった、そのかわりドサッと倒れてしまった。
「いてー…。」「っ…。」
鏡は消えていた、そして。
「!?いでででででっ刺さる!刺さってる!」
「…なんかいつもの感覚に戻ったぞ?」
ディフの上に大きな氷のような杖?が現れ落ちた。フィヨは起き上がりすぐそう言った。
「おーい、大丈夫か…。」
Sは後ろから呼びかけた。ディフはその上のものを見た途端にこう叫んだ。
「あ!僕の武器!!良かったぁ…。手も元に戻ってる…?」
「ああ、良かった、間に合ったか…。」
ディフはその言葉を聞くと起き上がろうとした、ズンッと身体に重力がかかる。
「な、なんだ…?身体がさっきより…。」
「…どういうことだ?」
「…帰りながら話す、あいつらも心配してるだろう。」
ーーー
「…それで、さっきのはなんだったんだ?」
「さっきディフの手が消えかかっていただろ、あれはフィヨにも時間が経てば出てくる症状だったんだ。」
「…あれは何を意味しているんだ。」
「『部外者抹殺』さ。この世界は他の世界人の影響が出ないように普通は入れないんだ。」
『部外者抹殺』はその名の通り、他世界の干渉を消す為のこの世界の理の一つである。一定時間の能力制限が続いた後、そのものの存在を消す、そしてその者が元の世界に帰ることも無くなるのである。
「武器が出せなかったのはそのせいか…。」
「そうだ、さっきのはそれを確認したかったのだ、手間をかかせたな、済まない。」
Sは安堵した表情で歩いて行く。鏡の道はまだ続いている、先程は走っていたから少し長く感じるのだ。
「…。」
ディフは先程の姿が気になって歩きながら鏡をずっと見つめていた。あの姿は確かに自分ではなかった、少し暗めの『自分に似た誰か』であったのは確かである。
フィヨの姿は本人と同じように映っていた、そしてSは…。
その時ディフは目を疑ってしまった。
その鏡にSの姿は『映っていなかった』のである。その代わりに。
『左には背の少し低い制服の少女』と『右には白髪のワンピースのような服装の少女』が『歩いていた』。
フィヨも同時に気が付いた。ぎょっとして声が出かかった。
Sは気がついていないかのように歩いて行く、その時、左右の少女だけがこちらを向いた。その顔は笑っているか、睨みつけているか。白髪の少女の眼は白目が無く黒く呪われたような黒い涙を流している。
「?…どうした、何かあったか。」
「え、あ…なんでもない。」
また見れば、Sの姿がそのまま映るだけであった…。
ーーー
【1階ーリビング】
「S-!用事は済んだのかー?」
「ああ、済んだぞ、結局訓練はしたのか?」
「した、いつもどおり。」
「そうか…。」
上に戻ると瑠那とパウロスがソファーに座って待っていたようだ、その近くのイスではAがお茶を入れている。
「あ、良かったあ、治ったみたいだねぇ。」
Aはお茶の入ったカップを持って前に来た。ソファーに座って休むように促し、奥へと引っ込んでしまった。
【先程の鏡の視界に居たのは誰だったのかと思うのであれば…あまり考えないほうがいいだろう。】
おはこんばんにちはー、コード393です。
今回は少しこの2人に焦点を当てて書きたかった場面を公開、伏線張ったつもり()
次回は…どうしましょ。(おい
まあ、次回もこの世界でお会いいたしましょう。