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REMEMBERーWorld Memorialー  作者: CODE393⇒紫晶 朔実
第Xx+2章ー龍の習わし
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ナスタチウムー雨降って地固まる

 城下町も例外なく風が吹く。その真ん中でその城を見ているモノがいた。

 地面までの長い青い袴に手の見えぬ巫女の袖。組んだその袖に乗るかのような胸と、赤い模様をはめ込んだ狐の、口元は見える面。風にたなびく長い艶やかな黒髪に、面の奥に見えている光のない黄色い瞳。

 暫くそのモノは眺めてから向いていた方向とは逆方向に歩き出した。

 まるで見るものは見たというかのように…。


 …彼らは目を開けた。そこに彼の姿はない。

「…S君。陵我はどこだ?」

「…。」

 Sはフィヨの言葉を聞くと、目で上をさした。上を見上げれば龍が2匹ぐるぐると追っかけ追いかけられ。そして向き合ったかと思えば衝突していた。

 その覇気はまさに頂点の争いだった。


 お互いに額をぶつけ合った衝撃で後ろに下がる、また上下に滑空を繰り返して同時に大きな太い角を勢いよく交える。暫く押され押し合い解けたところでお互いに正面以外の死角に入り込もうとする。片方が先ほどまで見えていた赤く黒い龍、もう片方は陵我のように青く白い龍だった。違うのは目がはっきり見えているように見えること。

 炎も吐かず、光線が出ることもない。純粋にその大きな体をぶつけ合う力比べだった。使うのは角とその牙。

 ぶつかるたびにドォンドォンと祭りの太鼓のように轟いた。もしもあれに巻き込まれたら…見ているだけしかできない彼らはぞっとしていた。

 ふとディフとフィヨが飛ぼうとしたのか少しかがんだが、

「やめておけ。何しようとしてるのか知らんが風に乱されて落ちるだけだぞ。」

 とSが止めた。

 目を離した隙に…龍は絡み合って落ちてきた。人とは比にならない大きさだった。先程の黒い龍の大きさよりはあるかに大きい。あれは本当の大きさではなかったのだ。

 落ちてきた理由はすぐに分かった。目の前で白い龍の首あたりに黒い龍がその大きい牙を食いこませていたからだと。噛む力は著しく、どんどん血が流れてくる。白い龍はもがき、尾を振り回し相手を攻撃していたが、離す気配はない。と思えたが、その牙が肉を引き裂くことも厭わなかったのか、白龍はそのまま顔を振り回し黒龍の首に同じく噛みついた、同時に白龍の首に突き刺さった牙は、ナイフのように彼の首の鱗を引き裂いて散らばした。かなりの痛みが伴うはずだった。黒龍は予想外だったのか不意だったのか、雄叫びをあげ放してしまった。その大きく開けた口に並ぶ牙には黒いドロドロしたものと赤い鮮血がこびりついていた。自分たちは一気に全員一飲みされてしまうであろうほどの大きさの口はこちらに向かって吠えた。苦しみもがき先ほどの白龍より暴れまわる。それでも天龍は、どれほどかぎ爪が顔を斬ろうが尾が自身の身の鱗を剥がそうとも叩こうとも離しはしなかった。一生懸命に蛇の体でのしかかり上から押さえつけている。お互いに息が上がり、穢れた地龍はごぅぅ…ごぅぅ…と吠えすぎて荒げた息を吐き出していた。彼もまた体力を激しく消耗したらしい。天龍も所々の白い鱗が地龍の吐き出した黒いものに汚れ、白い鱗の放つ輝きを失いそうになっていた。

 天龍の牙が息をするために口元の力を緩めた、その瞬間に。地龍は天龍と同じように今度は振りほどいた。天龍ははじかれた反動で大口を開けたまま体ごと上を見上げる…その隙に勢いよく飛び上がった地龍を追って彼も空へ舞った。また彼らは何事もなかったかのようにぶつかり始める。先程とは違い、雨のように血が降る。大粒の赤い雨が城の庭内の草原と荒野に染み込み染めていった。


 今までの中で一番低く鈍い衝突音が響いた、それは地上に居ても体が音の波紋で震える程大きかった。ふっと音もなく上から降りてきていた蛇の影が消えた。空を見上げてもあるのは分厚い灰色に浮かぶ二つの点だけ。二人とも人の姿に戻っていた。

「…落ちてきてないかあれ…。」

 ルナの言う通りその言葉のまま、目の前に2つ落ちてきた。煙が晴れれば二人とも立っている。肩で息をし、それは本当に色以外は瓜二つ。少し離れて落ち立った彼らは限界を訴える虚ろな目つきでお互いに首から血を流している。少し動けばお互いに落とした鱗ばパキパキと音を立てて草むらの中で、土の上で割れていく。

 龍から戻った直後だからか、吠えた声はそのままだった。一方は高く、片方は低く響いた。この勢いではほかの地域にも聞こえているかもしれないと思うほど。

 お互いに今度は拳を交える。拳を振り回してよろける脚を振って、首から流れる大出血の血を周りに鱗のように散らして激しく目線の火花を散らした。

「「うおぉらあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 二人が同時に振りかぶり、お互いに防ぎあう。自分の鼻の先の掌には相手の拳が叩き込まれ、押し返す力に震えている。そして痛む首の力を振り絞り頭を大きく振りかぶり、ゴォォン!と目線を合わせて額を割れるかもしれない程にぶつけ合った。…そのまま動かない。

 

 暫くして、黒髪の兄のほうが先にズルズルと弟の体をなぞるように膝から崩れ落ちた。


【勝者は傷だらけの両腕を高く上げて戦い抜いた争いに幕を下ろさせた。】


600文字からいきなり2000とは…(ごめんなさい。

と言う事で連続投稿。今回はバトルシーンてんこ盛りでしたね、すごく描写疲れた。でもなんだかやっと私が描きたかったシーンまでたどり着けた感じがします…。

お言う事で和国編、終了で御座います、はい。一応。まだありますがとりあえず終わりです。前回言い忘れましたが、またこの世界でお会いいたしましょう…。


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