夾竹桃ー狼と迷い人
遅くなりました―!
「…此処は一体…。」
その「モノ」は辺りを見回した、一面木と雪景色である。足元には足跡が薄っすらと残っている。
「これに沿って歩いてみるか…。」
しんしんと粉雪が柔らかく降り積もる森の中、「フィヨルド」と呼ばれる貴族のような格好のこの「モノ」が歩いていた。見たこともない物を物珍しく見るかのように辺りを見回しながら進んでいく。
しばらく歩いていると足跡は見えなくなってしまったが目の前に木に囲まれた道と、淡い光を放つ球体が見のようについた枝が、森の更に奥の方へ続いている。
「…ふあ!!」
いきなり上から紫色の何かが顔にかぶさった、それと同時に上から声が聴こえる。
「…誰か居るのか?」
どうやら尻尾のようだ、ひゅっと引っ込んだかと思うと上から紫色の髪と八重歯を持った顔を覗かせた。
「どうしたお前、寒くないのか?」
「…誰だ?」
「俺か?」
そう言うと枝の上からすたっと獣人が着地した、見たところ男性のようだ。その可愛らしい顔は、口元を黒い布で隠している。
「しがない狼さ、お前迷子か?」
「…まぁ…行く宛もない。」
「そうか、じゃあ俺がこの森の主の所まで連れてってやるよ、木に登れるか?」
「…ああ。」
するするとその狼の獣人は木の上に消えていった、その後をフィヨルドは大きく立派な翼を縮こませ後をついていく。その獣人の隣には青黒髪の人が同じように木の上を移動していた。
しばらくその「モノ」達についていくと、下に光る球体らしきものがちらほら見えるようになってた。相変わらず、青黒髪の人は無言のままである。
「あ、着いたぞ!…降りれるか?」
「…此処に主とやらが居るのか?」
「ああ、そこだ。」
フィヨルドの目の前には巨大な樹木しか見当たらなかった、一面雪景色の銀世界の風景が広がるばかりである。
「…何処だ。」
「あ、そうか…こっちについてきてくれよ。」
紫の狼はそう言うとその樹木の幹に近づき、
『次の瞬間には木の幹に溶けるように入っていった』
「!?」
フィヨルドは驚くと共に自分も恐る恐る近づいていった。硬そうな幹の感触があるかと思いきや、まるで静かに水の壁に触れたかのような感触があった。
静かに目を開けると、そこには木製の落ち着きのある空間が広がっていた、まるで本で見た人の家の玄関のようである。
「Sー!迷い人が居たから連れてきたぞー?Sー?」
そう狼の「モノ」が誰かを呼んでいると、隣の無口な人が口を開いた。
「…母さん、御見舞にきたんでしょ…。」
「ああ!そうだった!Sー!」
…はっと気がつくと走り出していたもんだから、フィヨルドもついて行った。「サクミ」と先程から叫んでは居るが、一体何者なのか気になったのだ。
暗い廊下の所々に先程下に見えていた光る球体が枝のようなものに絡みつかれて固定されていた。少し先から部屋の光が漏れている。
「…変な匂いだ…。」
嗅いだことのない匂いが鼻につーんと来た、此処は苦手だ。
「ルナさん?わざわざ来てくれたんですか…。」
「あったりまえだろー!心配したんだぞ馬鹿!!」
「母さん、あまり騒がないでよ…。」
「ま、また人が増えたなぁ…。ん?」
部屋の入口で突っ立って会話を聞いていると、近くのベットに腰掛けている、紅い角に銀髪の男性がその眼鏡の内側から金色の瞳を覗かせてこちらに気がついた。背中に包帯が巻かれた枝のような宝石が付いた翼を携えている。
「…どうも。」
「…はじめまして…だな?」
そう話していると、狼の獣人がフィヨルドを引っ張った。
「こいつ森で迷ってたから連れてきたぞ!」
目の前に居たのは、長い青髪紅眼の少女だった。
「…有難うルナ…はじめまして。」
「…はじめまして。」
その少女はそう言うと顔をこちらに向けた、頬には裂かれたような傷に黒い金属が橋をわたしている。
「私はSakumi Amesthst、この森の主だ。」
【何故この「モノ」が此処に迷い込んだか、連れてきた狼の獣人とは…また次にお話いたそう。】
TO Be CONTINUE...
おはこんばんにちはー、CODE393です。
今回でやっとフィヨさん登場!ゲストは残すところ後1人になりました…。次回登場します。
では次回またこの世界でお会いしましょう…ふふふ。