カモミールー忠誠心
長いです、前回を読んでからの方がわかりやすいかもしれません
(各キャラの発動能力は前回参照の上是非お楽しみください)
「あの金髪の者もそうだったが…この世界では魔法を使わないのか、どうなんだ」
「あまり見ないと思うぞ、勝手にいやぁ、Sが使うところも見たことねぇしな」
火の粉が少々舞う中、フィヨは不思議そうにそうパウロスに問いかけた。指をさしたまま、本を開き持ったまま。
「…金髪…!?」
炎に巻かれ身動きが取れなかった彼の姿が見えかかっていた時に、そう漏れた声が聞こえた。表情には汗と瞳を全て見せた目があった。
「対峙したのか…その子を…琥珀をどうした…!」
まだ漂う火の粉を振り払い、床に突き刺したままだった剣を引き抜いた。此方に瞬間移動し、フィヨの首元に先を突き当てる。剣が鋭く光ると同時に、目つきも尖った。それと同時に言い放つ。
「なんだ知り合いか。」
「答えろっ!」
「あの金髪メイドの事だろ?消えちまったぜ?」
少し後ろに居たパウロスが他人事の様に軽々と言った。
「…なっ…そんな…」
剣を床に向けた。静寂の中、緊張だけがピリッと走る。青年は、そのまま目の前で目を瞑り、口元を固く結んでいた。そして。
「……我々は従者。お嬢様の為ならば生命も惜しまない覚悟。琥珀は…その覚悟を全うしたのです、ならば私の選ぶ道は一つっ!」
ザザッと下がり、腰を低くして半身の姿勢で、此方に青き剣を構えた。
「この『再び灯った堅き忠誠心』が燃え尽きるまでっ!!此処は通しませぬっ!!」
[戦闘再開]
[Kのターン]
「…ん?あ、話聞いてなかった。」
ずーっと視界を傍観していたKは水樹が叫んだのを聞くと驚いて、銃を構え直した。今回も先程の琥珀というメイドと同じなのだろう、あの胸の飾りを破壊すればいい、と。
「少し大きめだが…これは花びら一枚貫くんじゃ…」
そう。薔薇の花弁一枚一枚が、カバンサイトという宝石で出来ているように見える。大きさは先程と比べ大きいのでそれ自体を狙うのには難しいことじゃない。
「…問題は確実に中心に当たるかどうか。」
相手は速い。外側の花弁の一枚に当たってもなんとも無いだろうが中心に当てるとなれば相手も動くため一発は外れるだろう。
弾はこれほどの戦闘になることを予想していなかったため、もう残りも少ない。
「…ええいままよ。」
Kー狙撃(部位狙い、対象特殊能力)…自動失敗(-12%
薔薇の胸飾りめがけてKは撃ち抜こうとしたが…水樹はすぐさま瞬間移動でかわしてしまった。
しかし、その場所には黒いものが飛び散った跡がその奥に続いていた。
[水樹のターン]
「目の前からとはなめられたものですね、やはり厄介な貴方から『削除』しましょう…!」
水樹ー十字咲乱…成功
「…!しまっ」
Kー回避(対象特殊能力、姿勢状態)…失敗
Kが狙撃の姿勢のまま反動を逃していた隙に、水樹は目の前に踏み込んできた。そのまま左に振りかぶり、横一文字に切り裂いた。銃に剣がぶつかる音が響いたが、彼はお構い無さそうだった。
黒い血ではないものが飛び散る彼とは違い、切られた方向に鮮血が白い大理石に染み付いた。
「あ、兄貴ぃ…!」
「問題ない、あれよりかはマシだ」
みぞおちの部分をKは抑えているが、少し後ろに避けそびれたからだろうか。ダラダラと大量に血が手の隙間から流れている訳でもなく、少し焼けた手が赤く染まる程度だった。
「戻ッタ方ガ、良インジャナイノカ?」
「まだ行ける、問題ありません。」
ルナは片言に言葉を話すと、Kはそう答えてまた構え直した。剣が当たった部分が欠けている。
[ルナのターン]
「ヨクモ…!」
そう言うと先程同様に気が付かない内に後ろに回り、牙をむき出しに飛びかかった。
ルナー狼牙刎(部位狙い)…失敗
首元に噛み付くかと思われたが、ひょいと避けられてしまった。しかし、何度も飛びかかる。
「しつこいですね…!」
水樹はこのままルナにしか意識が向かなくなった。この間、味方の攻撃の察知確立が格段に低くなる。
[パウロスのターン]
「…あ、そうだ。」
パウロスはずっと何かを考え込んでいた。すると、ぽんっと手を叩いて、何かを思いついたような表情を表した。
「フィヨルド…なぁ」
「どうしたのだ、こんな時に。今日はよく話しかけてくるな」
「そうじゃねえんだって、お前さ…」
ごみょごみょとフィヨルドの耳元でパウロスは囁いた。
「…ふむ…面白い、やってみるとしよう。K!」
フィヨルドは後ろを振り向き、そう叫んだ。
「なんだッ!」
「まだ撃てるか!」
「行けると言っているだろう!」
「お前ら…作戦会議ってそういうふうに大声でやるもんじゃねえぞ…」
[Aのターン]
「待って兄貴ぃ、その前にぃ…」
Aー迅速治療…成功→K HP回復
Aが無理やり前線からKを引っ張り出し、切られた腹を治療した。応急処置なので完全に塞ぐことは出来ないが痛みや出血は止めることは出来た。
「…まだ撃てると何度も…」
Kがそう言うと、Aは下を向いて
「…嘘つきぃ」
「え?」
「この前もそうやって倒れたよねぇ!?俺の前で無理は厳禁だからねぇ!」
「あー…わかったよ…」
頬をむーっと膨らませて怒った。Kはため息をつきながらなだめるようにAの髪を撫でた。
[フィヨのターン]
「水樹という名の者よ!その忠誠心気に入った、とっておきの魔法を見せてやろうではないか」
フィヨは本をバスンッ!と閉じると飛び上がった。長い魔界の翼を広げて赤いマントを翻し、シャンデリアの近くまで上り詰めた。
本を開き、指を鳴らすとフィヨの真後ろに大きな魔法陣が現れ、その周りに6つの小さな魔法陣が現れる。
「これは本当は宴会用なのだがな…少しぐらいは足しになるだろう」
フィヨー大花火型魔法(得意傾向)ーMP消費、自動成功
青い光を放つシャンデリアの光と、赤い魔法陣の光が混ざって紫色の光になる。赤い玉が空中に魔法陣から投げ出され、爆発していく。火の粉が床に到達するまでに消えること無く落ちてくる。無論、水樹も例外ではなく、すぐに消えるが皮膚に火傷を負う羽目になった。
「こんなもの……」
ふと水樹は上を見上げた、見上げてしまった。赤い火花が綺羅びやかに散り、美しく天井を彩っていた。
異世界の主の色に見とれてしまった彼は、まんまと魔界の帝王の掌に乗ってしまったのである。
[Kの緊急行動]
「(K、今のうちだ)」
目でお互い合図をし、Kは銃を構えた。慎重に、気が付かれないように。チリチリと髪が焦げる音がするが、燃えては居ないので問題なし。
もう少しで標準が合う、その時
???ー三日月Halloween…成功
降り注ぐ火の粉をすり抜けるように黒い影が交差するように水樹とKの間の空間を通った。『それら』は飛行し、同時にパキッと何かが割れる音もした。水樹がふらつき、尻もちをついた。
「…ん…!」
上に居たフィヨはよく見れば見えるだろう、花火魔法を止めてそっと降りた。尻もちをついている彼の胸にあの飾りが割れて散乱しているのがすぐに解る。依然として水樹は存在しているが。
その影は中央に降りてきた。黒い正体であろう、マントを双方外側になびかせ開き、水樹の剣とは違う青い剣と赤い剣を携え、白髪の男2人がお互い背を向けて仁王立ちに立っている。
そして
「「TRICK or SOUL?」」
【まるで鏡合わせの2人だが、双方には見覚えのある目の傷があった】
おはこんばんにちは、CODE393です。
連日投稿!テスト期間!何してんじゃ!(お前だよ
まだ終わりませんこのバトル、運なさすぎです(おい
もうおわかりだと思いますが、その影の正体とは一体?
ではまたこの世界でお会い致しましょう。