マンドラゴラー扉の先
短いです(白目
ー戦闘が終了した。
あれだけ瓦礫が崩れ、ヒビが入るほどの戦闘があった部屋で一切『紅い絨毯の切れ端』が見当たらないことが不思議なくらいだった。
煌々と燃えるシャンデリアの紫の炎はその崩れた壁の瓦礫の中に埋もれるように咲く紫色の薔薇を照らしていた。その近くの左右に、先程スルトがその杖で斬ったであろうエレスチャルのイヤリングが一つずつに戻ってその場に落ちている。
393は戦闘が終わっても広間の扉前、その場に立ち尽くしていた。彼女の中に『仕組まれたその未完成のプログラム』には今の状況は理解出来ていなかったのだ。一つはあの少年が『黒く溶けて消えてしまった』という非科学的な現象の事、もう一つはスルトの異常な判断力と行動の速さである。
あの時、393が一歩踏み出した瞬間には既に彼は何かのカードらしきものを投げ出して少年の前に間合いを詰めて立っていた。あれ程の速さを、彼女が経験した事は『恐らくそのプログラムの中では無いだろう』。彼が異常なだけか、あるいは自身がまだ『未完成』だからか…あるいはその両方なのか。思い出したくもない『白い人々の言葉』が頭をよぎり、彼女は欠落した感情の中で無意識に歯を食いしばっていた…と。
スパァンッと目の前から何かを散らす音が聞こえた。はっと顔を上げれば、紫色の花びらがスルトの周りを舞っていた。彼はそのレーヴァテインを振り切ったまま下を向いている。
ー…ぃいったぁ!!
ひらひらと花びらが散るだけの静かな部屋に一つ、誰かの声が響いた。恐らく広間に入った最初の扉の反対側の奥からだ。
バッと2人はその場でその方向を確認する、そして一瞬だけ目を合わせた後に同時に走り出した。距離の差があったが、両開きの扉の片方をスルトは体当たりでこじ開け、393はその鋭い鉤爪(?)で扉を短冊切りに裂いた。容易にこじ開けられたその扉は、重たそうな音を立てて倒れた。
その部屋は暗く、なにも見えない。しかし何かがいる気配はおのずと2人にもわかった。
「何処だァ…?」
一歩。一歩。ゆっくりと奥へ進む。気配はどんどん大きくなる。最初は人一人位の大きさだったものが、近づく度に…遂にはスルトの身長すら越す大きさに感じられる。
ふと2人はピタリと足を進めるのを止めた。目の前、手を伸ばせば触れられるほどの距離に、そのモノが『居る』。しかしそれは、予想以上に大きい。唸る音…否、声か…そんな音が上から聞こえる。
恐る恐る上を見上げれば…青い瞳と白い歯が薄っすらと…。
「なァ…!」
「ッ!!」
その大きさは恐らく龍だろう、この国には『一匹も居ないはずの龍』だ。
目を合わせた時に、その龍は大きく口を開けて2人に向かって吠えた。
グアァァオォォォッ!!と威嚇する声は風圧で目を閉じて踏ん張って居ないと、後ろの部屋に飛ばされてしまいそうだ。
…暫くして風が収まり、目を開ければ…赤い炎に照らされた廊下に立っていた。先程の龍らしきものは何処にも居ない。綺麗さっぱり、消えてしまった。…そこには一枚の『青い花びら』が落ちていただけだ。
淡い紅に染まる十字架に交わったその廊下を見渡せば、このまま真っ直ぐ進んだ先に『終点』があるのが見えた。厳かな彫刻が施された大きな扉だ。今居る廊下は今まで通ってきた廊下より更に広く、絨毯が惹かれ今までよりも一番豪華だ。恐らく、この奥が王間だろう。
2人は無言でその扉に手をかける。静かに開いたその扉の奥は大きな窓の前に構えた玉座の間だった。ー
【…ゲホッ、ケホッ…本当に彼奴覚えてろ…!】
おはこんばんにちは、CODE393です。
今回もいかがだったでしょうか。まぁ今回もありとあらゆる伏線を張り巡らせてそろそろこんがらがってきそうな気がしますが…。良ければ感想くださいね()
そろそろ表紙もできそうですし、色々イラストも描いていきますよ。
では、またこの世界でお会いいたしましょう。