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メカな彼女とノーマルな僕  作者: 日陰 四隅
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彼女と僕と(17)

 いたるところで起こる爆炎を僕を手に彼女は真っ直ぐと突き進む。


 空を蹴り、少し走ったところで僕は青い弓なり上の拾い場所に落とされ尻餅をつく。体育館の屋根の上だった。


 しかし、屋根もそこら中火の手が回り、いたるところが崩落しておりいつ崩れてもおかしくない状況だった。


「無事だった?」


 僕の真横に立った彩月さんが聞いた。


「この状態を無事と呼べるなら、おそらく僕は無事だと思うよ」


 そういって苦笑した。


 あれほど騒がしかった爆発も今はなりを潜めていたが、しかし、その余波でいたるところで炎が上がっていた。


「でも、正悟たちが」


 振り返る。


 視線の先には燃え盛る炎に包まれて瓦礫の山と化した学校があった。


 彩月さんに助けられる間際、僕とは別に落ちていった正悟と三九二君。


 それだけじゃない。ハーヴェイさん達も兵士達も共に落ちていった。


 どう見たって、アレじゃあ助かりようがなく……。


『ところがどっこい生きている』


 なんて返事がどこから返って来た。


「正悟!?」


 それは間違いなく正悟の声だった。見れば彩月さんの手には携帯があり、そこから声がしていた。


 彼女はおもむろにそれを僕に放った。


「生きてたの!?」


 掴んだ僕は電話越しに正悟に言った。


『ビビったか? 俺もビビッている。三九二の奴なんかちびっているぜ。ところで、何で俺の股は冷たいわけ?』


 でもどうやって、といいかけたところで止まる。おそらく、ハーヴェイさんだ。


『兵隊って言うのも実際たいした度胸ある訳じゃねーんだな。みんなでくの坊みたいに放心しているぜ。もっとも、ハーさんとJとかいうムカつく野郎は平気そうなだけどな。それよりも、そもそもそんな便利なものあるなら俺にもくれない』


 そういう正悟の声も少し引き攣っている。


『少年、君も存外図太いね。というかこれはあげられないよ。代わりが無いからね』


 うって変わっていつも通りのハーヴェイさんの声が聞こえた。


「あ、やっぱり生きてたんですね」


『なんだか少年の時と反応が違うぞ、少年』


 まぁいいか、ハーヴェイさん。


『ところで何で平気かといわれれば私も実はアレにつけた反重力ユニットを持っているのだよ。もっともこっちはバッテリー式で使って3回が限度の代物だけどね』


 しれっととんでもない事言っている。


『ともあれ、地面に落下する瞬間に使ってね、ぎりぎりで止まって事なきを得たわけ。破片やら炎やらはその時に弾いてね。もっとも、下を優先したから私達は2階ぐらいの高さから落ちる羽目になって危うく足を折りかけたけど。もう一人の君を掴み損ねたほうは平気で着地してたなぁ。やっぱり鍛え方が違うね』


 感心したように言うハーヴェイさん。


「……そんなものあるんだったら最初から使えばよかったんじゃないですか?」


『少年、切り札は最後に使うものだよ』


 そうはいうけど、いくつ切り札があるか分かったものではない。


『という訳で私達は平気だ。安心したまえ。まぁ、でもいつまでもこんな場所にいてもいられないから私達はさっさと逃げる。君もさっさと逃げたまえ』


 それじゃあ、といって一方的に電話を切るハーヴェイさん。いつもの調子に自然を笑みがこぼれるものの、悪い状況は一向に改善されていない。


「それで、この後どうするの?」


 どうもこうも逃げるべきなのだが、自分ひとりでは何にも出来ない。というか、ただでさえどうやって降りればいい訳?


「そうね。出来れば越智君をこのまま安全な場所に下ろしたいんだけど」


 そういって空を睨む彩月さん。


「どうにも連中、かなり鬱陶しいのよ」


 そういう彼女と同じ場所を僕は向いた。


 燃え盛る炎とあがる黒煙の隙間。除く青い空に浮かぶ黒い影が旋回し、こちらに向かってくるのが見て取れた。


 ……なんというか、この高温と煙が立ち込める中どうやって見つけているのか。


 空を飛ぶ無人機は間違いなくこちら目掛けて、正確には彩月さんを狙って飛んでいた。


「また逃げ回ってもどうせ追いかけてくるだろうし、この街くらいなら本気で壊しそうな勢いだし。逃げるには万全、安全といわない状況な訳なのよ」


 そういってため息を漏らす彩月さん。確かに、ここまで無茶をする人たちが素直に諦めるはずはない。


 そして、彩月さんが何を言わんとしているかがなんとなく分かった。


「で、どうする気なの?」


 分かっていて僕は聞いた。振り向いた彼女は悪戯っぽく笑った。


「どうもこうも、正直なところ越智君次第なんだけれど」


 そういって彼女は手を伸ばす。


「悪いけど、付き合ってくれる?」


 僕も笑って手を伸ばした。


「君とならどこまでも」


 そして僕等は互いに手を取り合い、一気に空へと駆け上がった。

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