彼女と僕と(6)
なにやらスランプ気味
筆が進まない
朝のホームルームの衝撃的な発表の直後、一体先生が何を話しているのか理解しようとしている最中、僕の机を横切った彩月さんがメモを置いていった。
“この後屋上に来て欲しい”
紙面にはそう短く書かれていた。
ホームルーム終了の鐘がなり振り返って見ればそこには既に彩月さんの姿がなかった。
僕はすぐさま席から立ち上がり教室を出た。出て行く際に、正悟や三九二君が何か言っていたような気がするが、気にしなかった。
そして屋上。
既に彩月さんがいて、市内を見渡していた。
「ここも見納めね」
街を見下ろしながら彼女は言った。
「さっきのどういことなの」
「どういうことって、そのままの意味よ。転校するの私。親の都合で」
そういって彩月さんは振り返った。
「希代の天才と呼ばれる博士とそいつに作られたロボット。二人は元雇い主に追われている。とある極東の町で子ども三人と仲良くなったけれど、結局元雇い主がやってきた」
彼女は振り返って歩き出した。
「まぁ、でも結局連中が来てもこなくてもどうせ長くはいられなかったと思うし、いい機会なんだと思う」
「何故、そう思うの?」
すると彩月さんは手を広げ、真っ直ぐと伸ばした。
「私は結局機械仕掛け。どこまで行っても人間じゃない。今はこうして笑い合っていられるけれど、どうせその内そうじゃなくなるのは目に見えてる」
そういって自嘲するように彼女は笑った。
「物語だって現実だってどうせ終わりは同じ。人間は人間、機械は機械。きっと理解しあえないと思う」
そして彼女は僕に背をむけた。
「それにどうせ最後はお別れしないといけなくなるんだから。遅いか早いかの問題だし。それならせめて笑顔で別れられる今って決めたから」
そうして振り返る彼女は笑っていた。
それはあんまりにも一方的な独白だった。僕の気持ちも考えずに。いや、おそらく僕の気持ちを考えた上での彼女なりの答えなんだと思う。
けれど。
「……でも」
そう僕が言いかけた時、金切り声のようなブレーキ音が響く。
咄嗟に僕等は音の方向に顔を向けた。
市役所と中学校に挟まれて通る道路。通りを塞ぐように大型バスが横滑りしていた。
校門の前で止まるとそのまま中学校の敷地に侵入した。
そして、そのバスは迷わず校舎に突っ込んだ。
まぁ、気分やだからなぁ




