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メカな彼女とノーマルな僕  作者: 日陰 四隅
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彼女と僕と(3)

 高校での騒動の後、僕等はハーヴェイさんの秘密基地にいた。敷地の一部が丸々エレベーターになっており、ランドクルーザーごと地下室に入っていった。


 既に知っていた僕から驚かなかったけれど、初めて見た二人は唖然としていた。


「まともな人ではねーと思ったど、ここまでぶっとんでるとは」


「すげー、マジで漫画みてぇ!」


 正悟は茫然として、三九二君は秘密基地を見つけた子どもみたいに興奮していた。


 地下に入り車から降りた僕等が案内された部屋は、あの研究室とはまた違った部屋だった。


 そこは全面畳張りの和室だった。


「何で和室なんです?」


「ただの趣味」


 そういって靴を脱ぎ畳に上がるハーヴェイさん。おそらく、これ以外にも色んな部屋があるんだろうなぁ、と容易に予想が出来た。本当にこの街の地下はどうなっているのだろう。


 和室に案内されて一同揃った状態で、ハーヴェイさんは僕に説明した事を二人にも話し始めた。


「ああ、話をする前に君たちにも謝っておきたいことがあるんだ。実は私はヤマダタロウでも日本人でも……」


「「ああ、それなら知ってる」」


 聞いたハーヴェイさんが口をへの字にした。


 まぁいいか、と彼はいい話を続けた。


 自分の名前はハーヴェイ・ロウということ。元々アメリカでロボットを作っていたこと。縁がありアメリカの国防省で働いていたこと。そこから嫌になって出てきたこと。それが原因で今追われている事。彩月さんがロボットだということ。


 二人は驚き半分呆れ半分で話を聞いていたが、最終的にはなんとなく腑に落ちたような表情をしていた。


「そりゃそうだよなぁ。人間の力で扉なんぞ石投げたくらいで凹ますことなんて出来ねーだろうし」


「完璧超人も納得だな。そりゃロボットだもの」


 そういって頷く二人。そんな様子を不機嫌そうに彩月さんは睨む。


「まぁ、彩月ちゃんの事が分かったところで、あらためて俺と付き合ってみない?」


 ぶれない三九二君。その言葉に一瞬彩月さんは驚いたような表情を見せたが。


「却下」


 即笑顔で言い放った。


「懲りないね、お前も」


 正悟が三九二君の肩に手を乗せてにやけていった。


「いや、だってワンチャンあるかもよ。前と今とは違うし、正体まで知ってより親しくなった感じじゃん」


「一ミリもねーな。可能性があるとしたらほら、あそこのやさい、とっぽいの。アレをまずどうにかしねーと無理だぜ」


 そういってニヤつき僕を指差す正悟。それを見て三九二君もニヤつく。


「おいおい、そんなこと出来る訳ねーよ。それこそ彩月ちゃんに酷い目にあわされる」


 などと人を小馬鹿にするような感じに笑う。なんか嫌な感じだ。そして、いつもの二人だ。


 ただ、いつもと違うのがスッと音もなく彩月さんが彼等の背後に佇む。


 気配を察知した二人の表所が固まる。瞬間、三九二君は綺麗な卍固めを食らう。相方が捕まったのをいいことに逃げようとした正悟は襟首をつかまれ引きずられ、そのまま首をホールドされた。


「あだだだだだだ! ギ、ギブッ、ギブッ! ああ、でも、これはこれで……あ、やっぱ、やっぱなし! お、折れる、腕、折れる!」


 三九二君は顔を赤くしたり青くしたり、どことなく幸せそうな表情をしていた。


「い、いくらなんでも、キャラ違い、す、ぎ……!」


 正悟はひたすらに彼女の腕を叩く。


「君ら本当に図太いなぁ。何だ、私の正体とかそれがロボットとか気にしないのかい?」


 そういって不思議そうにハーヴェイさんは僕等に言った。


「あんまりそういうのは関係ないかと」


「まぁ、いまさらって感じだし。元々ロウさんも彩も変わり者だったし」


「知ったところでどうなのって感じだよな」


 とそれぞれ感想をいうとハーヴェイさんは心底驚いた表情を見せた。


「……なるほど、子どもだからそう考えるのか」


「……? なにか言いましたか?」


 いや別に。とハーヴェイさんは笑った。


「それはそうとちょっと現実的な話をしよう」


 そういって彼は手を叩く。それに応じて彩月さんは二人の拘束を解いた。


「で、現実的な話って」


「鬱陶しい連中の話」


 そういってハーヴェイさんは和室にあったテレビの電源を入れた。ニュースでは先の高校が映っていた。


「おーおー、うちの町が観光以外で電波に出ているよ」


「何々、酒に酔っ払った一般人が車でグラウンドに侵入して花火をして、その結果車を燃やしただ。現場には花火の燃えカスや酒瓶が残されていたってよ」


 明らかな情報操作だった。


「それよりも私としてはあの花火の件を大犯罪人のように取り上げられるのは不本意だねぇ」


 そういって渋い顔をしているハーヴェイさん。


「ああ、やっぱりアレ、ハーヴェイさんの仕業だったんですか」


 僕が言うとハーヴェイさんは不服そうな表情をした。


「仕業って少年ね。一応アレ両方に配慮しているんだよ。君たちと連中」


 そういってテレビを指す。連中とはおそらくアメリカのことだった。


「あれだけ派手に花火を上げてれば否応なくそっちに視線を奪われるだろう。この町のお祭りじゃ花火は上げないし。そして、花火に紛れていれば火器の音も聞こえない。いや、聞こえないわけじゃないけれど、少なからず勘違いしてくれる。この国じゃそうそう鉄砲の火薬が爆発する音なんて聞かないからね」


「ロウさんがアメリカ庇う必要あるの?」


 正悟が言った。


「面倒ごとは極力避けたいから」


 そういって彼は肩を竦めた。


「と、いう訳で実質的に彼らアメリカが関わっている事実はない。このまま彼らが黙って見過ごしてくれるとも思えないからね、しばらくは家にいてもらおう。といってもこの状況じゃあいても明日ぐらいまでだね。長くて明後日まで。それ以降は、まぁ、普段どおりに生活してもらうことになるけれど、その時には面倒臭いことは終わっていると思うよ」


 なんていいきるハーヴェイさん。


「なんか確証があるんですか?」


 僕が聞くと、まぁね、と彼は言った。具体的には話してくれなかったけれど。


「別にそれは構わないんだけど、親とかになんて説明すればいい? 流石にロボット連れたおっさんに巻き込まれてアメリカに追われているから匿って貰っている、なんていったら正気を疑われるどころの話じゃねーよ」


 正悟がいった。正直に話したところで通じるとも思えない。


「そりゃそうだろうし、下手に話して親御さんが巻き込まれてもあれだろう。普通に祭りなんだから友達の家に泊まるでいいんじゃないかな?」


 言われて三人顔を見合わせて、特に他の案も浮かばずそれに同意した。


 こうして、僕等はハーヴェイさんと彩月さんの秘密基地に泊まることとなった。

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