彼女と僕と(2)
暗い空に咲く大輪の花。炎の光を七色に煌かせて様々な花を彩る。
赤、白、黄色、青、緑、紫。
リチウム、バリウム、ナトリウム、ルビジウム、銅、カリウム。
金属の炎色反応によって色を変えた炎が空に散った。
それも、数秒の間に10、20はくだらない。
暗闇を埋めんと大輪の花が咲き誇る。
その場にいたほとんど全員が目を奪われた。二人を除いて。
そして、それが二人にとっての合図だった。
何が起きたのか気付いたのは男の悲鳴を聞いてからだった。
悲鳴の聞こえた方に視線を向けると、いつの間にか彩月さんがJに肩から突っ込んでいた。瞬間、彼は勢い良く吹っ飛ぶ。その後方、人の良さそうな黒人クインがそれに巻き込まれて一緒に吹っ飛んだ。
続けざま、彼女は着地と同時に拘束具を引きちぎり、握った右手を正悟と三九二君に銃口を突き付けた男達に向け、親指を弾いた。
連続する甲高い金属音。次いで絶叫。彼らは足や腕を押さえて地面に倒れ込んだ。
倒れ際、彼らは反射的に引き鉄を引いた。
銃口から放たれる弾丸。
それは正悟と三九二君に当たることなく明後日の方向に光の筋を作っていく。
ただ、銃弾は当たらずともその火薬の炸裂音だけで脅威だ。
「う、おぉぉぉっ!?」
「しゃ、洒落になってない!!」
咄嗟に彼らは地面に伏せた。
その銃声で周りの軍人もようやく何が起きたか気付いた。そして、銃口をこちらに向ける。
「危ないだろう。お母さんに習わなかったか、人に銃を向けちゃいけないって。ああ、そうか。人に銃を向けてわが身を守れ、がお国の考え方だったね」
いつの間に高速具を千切ったのか、ハーヴェイさんはスマホを片手に悪い笑みを浮かべていた。直後、エンジンが唸りを上げてランドクルーザーがグラウンドに飛び込んできた。
入り口付近に立っていた軍人二人が咄嗟に左右に飛びのく。
さらに校門の左側、野球場辺りに立っていた3人くらいの軍人が乱入してきたランドクルーザーに向かって発砲した。
「なんて酷い事をするんだ。傷がついたらどうするんだ、弁償してもらうぞ」
そういってハーヴェイさんはスマホに乗せた親指をスライドさせる。それに合わせてランドクルーザーは方向を変え、車を狙う軍人達に向かって走りだした。
車目掛けて軍人達は銃弾を撃ち続けるが、ランドクルーザーは微動だにしない。銃弾使用なのかあの車。
怯まない車に怯んだ彼らは同様に左右に跳ぶ。その真ん中を通り抜けたランドクルーザーはサイドターンを180度決めて再び入り口へと戻った。
不意に聞こえた空気を切る音で振り返る。
彩月さんが身体を真横にして立ち、僕等の方向に腕を伸ばして、親指を弾く。
連続する金属音。高速で何かが飛んでいく。
そして、金属の何かが飛んでいく方向。グラウンドと崖の境に立った高さ20メートル程のネット。その前に立つコンクリートブロックで出来た掘っ立て小屋。そこに目掛けて彩月さんは何かを射出していた。
小屋の前に置かれた机、ビール瓶を入れる籠。それらが彼女の放つ金属によって拉げ、砕け、破片となって散乱する。
小屋自体も角は欠け、扉は凹み、見るも無残な姿に変わっていく。
原因は小屋の端から覗く陰。アサルトライフルを構えてこちらを狙おうとしている軍人達がいるからだ。彩月さんはそれをけん制する為、謎の金属を飛ばす。
呻き声とも怒声とも取れる様な声がした。
見れば、はじめに彩月さんに謎の金属を食らった軍人二人が拳銃を引き抜いていた。
「彩月さん!」
僕は叫んだ。
「分かってる!」
小屋を狙う手とは反対の手で彩月さんは二人を狙う。
発砲音よりも速い金属音。再び彼らは悲鳴を上げる。なんていうか、容赦ない。
そして、見れば男達の手には何か丸いものが突き刺さっていた。それは銀色だったり、茶色っぽかったり。
もしかして、あれは硬貨?
彩月さんは親指でお金を弾いて弾代りにしているようだった。だからコンビニであんな面倒臭い買い方していたのか。
拳銃を撃とうとしていた二人が無力になると、そちらには目もくれずに小屋目掛けてコインを連射する。しかし、その顔は苦い。
「ハーヴェイ、車! 急いで!」
こちらを見ずに彩月さんは叫んだ。
「なんだい、君らしくもなく弱いかい?」
大分楽しそうにしていたハーヴェイさんは眉をひそめて言った。
「あのね、こんなだだっ広い障害物もないところで三人も四人も守ってられないわよ」
それもそうか、彼は納得した様子だった。
「それじゃあ、ちょっと待ってなさい」
彼はそういうと今まで指を滑らすように操作していたスマホの画面を押した。
途端にランドクルーザーのトランクが開く。その中から次々に丸い物体が落下していく。直後、それらが物凄い勢いで煙を上げた。
あっという間に入り口の辺りは煙で包まれた。煙に巻かれた軍人達はたまらず咳き込んでいる。
「催涙ガスの発炎筒だ。まともに食らったらしばらくは動けないよ」
悪い笑顔を浮かべてハーヴェイさんは行った。
三回ぐらい往復してこれでもかっていうくらい過剰に催涙ガスをばら撒いたランドクルーザーは方向を変えてこちらに向かって来る。
ハーヴェイさんは片手でスマホを操作しながら、僕に歩みよる。
「少年、動くなよ」
彼は僕の後ろに立つとそういった。そして、僕の高速具が外された。
「ありがとうございます」
「お礼はいいから、はいこれ」
そういってハーヴェイさんは持っていたナイフを手渡した。
「あの二人を連れてきて。可及的速やかに」
よろしく、といわれて僕は走った。
けん制を食らう軍人達が隙を見て狙って撃ってくる。それに合わせて金属音が連続する。
硬貨と銃弾が飛び交うグラウンド。僕はスライディングするように二人の間に入った。
「なんだかすげぇ楽しいことになってなぁ、おい」
引き攣った笑みを浮かべた正悟が言った。
「いいから! 早く! 助けて!」
叫ぶ三九二君。
「ちょっと待ってて」
僕は大きな声で言って、まず正悟の後ろにまわった。
「頼むから腕切るなよ」
振り向いて正悟は言った。僕は黙ってナイフの刃を高速具と腕の隙間に滑らせ引き上げた。切れる結束バンド。
「いやぁ、久しぶりに自由だ」
そういって正悟は自分の腕を擦る。ついで、同様に三九二君の結束バンドを切った。
「よし、逃げよう。今すぐ逃げよう」
外れると同時に走り出そうとする三九二君。その意見に僕等も反対はなく、同様に逃げ出そうとしたが。
「クソッタレ! もういい! HMGを使え!」
不意に聞こえた叫び声に振り返る三人。見れば吹っ飛ばされたJと呼ばれた白人が、相方のクインを押しのけ、自分の頭を押さえて眉間に青筋を立てて忌々しそうな表情を浮かべていた。
直後、止まっていた乗用車の扉が開く。そこにあったのは人が持って撃つような銃ではなかった。
「嘘だろ、ブローニングM2重機関銃!?」
正悟がそれをみて叫んだ。
「あ、ウォーターワールドで見たことある」
確か船に3~4丁ぐらいついていたような。
「どのくらいヤベェのよ」
三九二君が正悟に聞いた。
「まともに食らったら牛がミンチになるレベル」
ぐしゃっとばらばら、と正悟。
「ふざけんな!」
三九二君が叫んで、三人とも跳んで伏せた。直後、ブローニングM2が火を噴く。
今までの比にならないくらいの連射音と光の筋が僕等の頭上を通り過ぎる。
「伏せてろ、伏せてろ、絶対頭上げんな!!」
「だぁぁぁ死ぬ、死ぬぅッ!!」
「やりたい放題だぁ」
三人三者それぞれの感想。
流石のハーヴェイさんも地面に伏せていた。
火線は僕等の頭上から彩月さんを追う。彼女はそれを一瞥して憎たらしそうに見て、あろう事か火線に突っ込んで行った。
彩月さんに迫る無数の銃弾の光の線。それに怯むことなく突っ込む彼女。
彩月さんと弾丸のラインが交わるというところで彼女がコインをはじき出している腕とは反対の腕を上げた。
直後、火線の弾が彩月さんに当たる前に全て左右に弾かれた。
「うっそなんだそれ卑怯くせぇ!」
叫ぶ正悟。その卑怯で僕等は助かっているんだけど。
しかり、あれは少し前に下の体育館裏で見た光景と同じだった。まるで見えない壁に阻まれるように弾は彩月さんの目の前で弾かれる。
「なんだ、使うんだったらさっさと使えばよかったのに。大体、そんな局所だけじゃなくていっそ僕等を囲ったほうが早いだろう」
「出力上げるとどうしても稼動までに時間掛かるのは知ってるでしょ。大体、そうしたら逃げる手段がなくなるでしょ」
そういえばそうだね、と伏せるハーヴェイさんは言った。
「つーか、何それ。一体どういうことなの、手品」
三九二君が叫んで彩月さんに聞く。
「説明は後!」
「あー、12.7ミリの弾を弾く手品があったら私も見てみたいねぇ」
伏せたハーヴェイさんが匍匐前進でこちらに近付いていた。」
「しかし、子ども相手に銃器を突き付けるだけじゃなく実際に撃ってくるなんて、彼等の倫理感はどうなっているんだい?」
匍匐前進しながらもスマホを操作する。ランドクルーザーはこちらを目掛けて一直線だ。
「そういう危ないものはもっと別のものを撃つのに使うんだ。例えば、宇宙人とか、恐竜とか、ゴジラとか」
そんな事を言いながらハーヴェイさんが僕等の近くにやってきた。そして、ポケットから携帯を取り出して耳に当てる
「と、いう訳でチャペック。あの目障りな固定砲をどうにかしなさい」
ハーヴェイさんが言った瞬間、銀色の物体がブローニングM2が装備されている車のルーフに落っこちた。
拉げるルーフ。車体は傾き、銃口は地面を狙う。ブローニングM2は毎分450~550発の鉛の弾を吐き出す掘削機へと変貌した。
ルーフに落ちた銀色の物体、お手伝いロボ、チャペックは三点着地を決めていた。
「正悟、東。アレ。どっかで見たことない?」
「社長だ、社長」
「いや、色んな人やっているよ、あの着地法は」
「君ら、総じて図太いね」
見ればチャペックは立ち上がり運転席の扉とその後ろの扉を壊して二人の軍人を引っ張り出していた。それをどこかに放り投げた。
凶悪な機関銃が無力化すると彩月さんは上げていた手を下ろした。直後、僕達と小屋の間に車が止まる。
立ち上がる彩月さんと近付くチャペック。どっちも凄い出鱈目だ。
「すっげー、何これ?」
「ゲームみてぇ」
伏せたままの二人はあんまりに現実離れした光景に茫然としている。
「さぁ、呆けている暇はないよ。さっさと車に乗った」
既に立ち上がって車の扉を開けていたハーヴェイさんは僕等にそう声を掛けた。
僕等は顔を見合わせ、ビーチフラッグよろしく立ち上がりダッシュで車に向かった。
「ハーヴェイッ!!」
叫ぶ声に走りながら振り返る僕等。
そこには、アサルトライフルを構えた近付くJの姿があった。
「穏やかじゃないねぇ」
ハーヴェイさんは口元を歪めて言った。直後、Jは引き鉄を引いた。
連続で射出される弾丸。ハーヴェイさんを狙った弾は、しかし、近くにいる僕等にも流れる気配はあった。
Jとハーヴェイさん。その間に彩月さんが割って入った。先ほどと同様に片手を上げて同じ事をする様子だった。だが、さらにその前にチャペックが立ちはだかる。
鉄と鉄を打ち合わせたような音、飛ぶ火花。アサルトライフルの弾は全てチャペックの身体に当たった。
「私を守ってくれたのかい?」
ハーヴェイさんは笑って彩月さんに言った。
「誰が。ただ、越智君たちが流れ弾に当たらないようにしただけよ」
振り返った彩月さんが酷く不機嫌な様子で返した。ハーヴェイさんはそれを聞いて肩を竦めた。
直後、彩月さんも車に向かって走り出した。
一足先にランドクルーザーまで辿りついた僕等は文字通り次々に飛び乗っていく。
「ハーヴェイィッ!!」
AK-47を撃ち切ったJは手に持っていたアサルトライフルを捨て、胸のホルスターからハンドガンを引き抜くと、歩きながら撃ちはじめた。
だが、その弾は尽くチャペックの身体に弾かれた。
「彩月さん!」
先にランドクルーザーに乗り込んでんだ僕は扉から半身を乗り出して彩月さんに叫び、手を伸ばした。
「別に、いらないでしょ」
そういいつつ伸ばした手を掴む彼女。
僕はそれを引っ張り車の中に引き寄せた。ただ、走ってきた彼女の勢いをそのまま受け止めたので、半ば突進される形となり彩月さんを抱きしめるように車の中で倒れた。
天井を仰ぐように仰向けの状態。シートから二人の顔が覗いた。しかも半笑い。
「……何笑っているの?」
「いや」
「別に」
ねぇ、と顔を見合わせる正悟と三九二君。
彩月さんが笑顔で拳を上げると、引き攣った笑い顔になった。
「それじゃあ乗ったね、少年達」
ハーヴェイさんが運転席に乗り込もうとしている状態で声を掛けた。
「ハーヴェイ!」
外からの再三の叫び声。その声にハーヴェイさんも振り返る。
僕等も声の方向を見た。
Jが銃弾が完全に出きったハンドガンを片手に持ち佇んでいた。目には射抜くような怒りをこめて。
「これで終わりだと思うなよ」
彼は吐き捨てるように言った。
「これで終わりにして欲しいけどね」
ハーヴェイさんは肩を竦めた。直後、扉を閉めて車に乗り込む。
「それじゃあ、いくよ少年達。しっかり捕まっていなさい。チャペックは殿。崖っぷちの二人をどうにかしてから逃走」
ハーヴェイさんが銀色のロボットに向かって言うと、彼は頷き車を飛び越える。頭だけでチャペックが飛んだ方向を見ると、彩月さんのけん制がなくなり二人の軍人がこちらに近付いていた。
だが、目の前にチャペックが降り立ち明らかに同様を見せていた。反射的に銃を構えて発砲したが、彼が銃身を掴み空に向けるようにへし曲げたために唖然と目の前の機械をみていた。そして、投げられた。
そこで、車が急発進した。
未だに床やら座席に寝転がっていた僕等は座席に押し付けられた。
「ちょ、まだ、準備できてないですけど」
三九二君がハーヴェイさんに訴えた。
「そうかい? まぁ、シートベルトくらいはしてるよね」
それもしていないんですけど。
「止まっては待ってられないよ。おっかない人たちが直ぐにでも来そうな勢いだし」
実に楽しそうに言っているハーヴェイさん。聞けば車内からでも銃声と、弾丸が飛ぶ音と、それが当たる音が聞こえた。
「確かに止まってられねーけど、安全運転でお願いします」
正悟が言った。
「出来るだけ気をつけはするけれどね」
そんな事をいうハーヴェイさんは鼻歌交じりだ。
ただ、ちょっと冷静に考えるとこのランドクルーザー。進行方向は僕等が来た道とは真逆である。車に乗ったとき、フロントの向きは門から出る道とは逆だったし、そして、現在進んでいる道、逃げている方向は曲がらず真っ直ぐである。
そうしてこの先、そっちにあるのは……。
「ちょっと、ハーヴェイさん。もしかしてこの先って」
恐る恐る聞いた。
「この先って。そりゃあ階段でしょう」
しれっと言ってのけるハーヴェイさん。うん、やっぱり。
未だに僕の上にいる彩月さんが物凄く諦めた表情をしているあたり、おそらく予想通りのことが起きるんだろうな。
「ちょっとまった。ヤマダさん、ハーヴェイさん、一体なにする気!?」
「元々だろうけど正気じゃねーッ!!」
叫ぶ二人。けどね。
「もうどーにでもなーれ」
人間、諦めが肝心だ。
「それじゃあ、行こうか! 空の彼方へレッツラゴー!」
わははは、とハーヴェイさんの心底楽しそうな笑い声。完全にイカれている。
唸るエンジン音、加速する車。僕等はシートに押し付けられ、そして、跳んだ。
僅かながらの浮遊感。座席から浮く感覚。1秒後、戻ってくる重力。
落下する車と一緒に僕等も落ちる。車の右部分が階段の真ん中の手摺りに落下した。
衝撃でピンボール見たいに飛び跳ねる後部座席の四人。車はそれを軸に左に傾く。
45度ほど傾いたところで、左端の手摺りに引っかかり止った。僕等は人間ラザニアみたいに重なって隅にヤマになっていた。因みに、一番下は三九二君。
ランドクルーザーは傾いたままうんともすんともいわなかった。
「で、どうするの、これ」
彩月さんがハーヴェイさんに言った。
「大丈夫、大丈夫、オールオッケー」
そういうと思いっきりアクセルを踏み込むハーヴェイさん。
タイヤが回り、金属とゴムが擦れる嫌な音が鳴る。
車がしばらく左右に揺れたかと思うと、ガタガタと震えならが動き出した。
「ほらほら、言ったとおりだろう」
自信満々にそんな事を言うハーヴェイさん。
「……もう、もう嫌だ」
一番下からそんな呻き声が聞こえた。
振動しながら降る車に、軍人達が一斉に銃弾を浴びせる。窓や車体を叩く弾丸の音。混じって今窓ガラスが割れたような音が聞こえたけど!
「大丈夫、大丈夫。もう直ぐ下だから」
そういうと、僅かに浮いた感じがして直後に衝撃を受けた後、車が平行になった。
「た、助かった」
真っ直ぐな地面になったと同時に人間ラザニアが崩れる。
四人ともシートや床に転がった。
「あ、気をつけないと舌嚙むよ」
言ってる途中で二度目の浮遊感。
「……ちょっと俺吐きそう」
珍しく正悟の泣き言。
浮いたような感じを覚えたというか、一度天井に叩き付けられてから大きな衝撃とともに地面に叩きつけられた。
「脱出完了! 少年達生きてる!」
ただ一人何事もなかったように立ち上がる彩月さん。他三人、僕等といえばそれぞれ面白い格好で伸びていた。
「ああ、俺達アメリカ人に殺されるよりも、今目の前にいる人に殺されるほうが早いかも」
そんな正悟の言葉に、同感、と三九二君が溢した。
何はともあれ当初の目的どおり二人を連れて逃げ出せはしたらしい。
相変らず空には大輪の火の花が咲き誇っている。
遠く、祭りのお囃子と花火の音に紛れてサイレンの音が複数聞こえた。アレだけ街中に近いところであんな騒ぎを起こせば警察が来るのは当然だろう。
ハーヴェイさんが運転するランドクルーザーもそんなサイレンから逃げるように走っていった。